【エッセイ】シンガポール旅行記3

前回はこちら。

僕は一通りユニバーサルスタジオのアトラクションを楽しみ帰路へ着いた。

本当は電車で帰る予定だった。しかし、電車が混み合っていて金を払って乗車する気になれなかったのと海と夕焼けのコントラストがとても綺麗だったので、ゆっくり遊歩道を歩きながらセントーサ島を出た。

僕はマリーナ・ベイ・サンズのライトアップを見ようと思い、市街地へ戻っていた。特にやることもないし買いたいモノも無かったので、地べたに座りぼうっとマリーナ・ベイ・サンズとその周りの湖を眺めていた。

1時間くらい経った頃に、何やら英語で話しかけられた。見ると自分と同じくらいの年齢の女性が立っていた。その女性は僕の横に座って話し始めた。

「1人なの?」

この人はどっちだろうか。他人に興味があり誰かれ話しかけるタイプの女性だろうか、それとも美人局だろうか。もしくはどちらでもないのだろうか。僕は1人だと答えた。

「どこから来たの?」

こんなところで一人地べたに座っているんだから、明らかに旅行客とわかるんだろう。僕は日本から来たと答えた。

「 私は韓国!」

僕は韓国に露ほど興味がない人間なので、近いねとだけ答えた。話を広げようにも話題が無かった。

そのままその人と何も話さずにぼうっとマリーナ・ベイ・サンズがライトアップするまで多分1時間くらい眺めていた。

時間になり、音楽と共にマリーナ・ベイ・サンズが様々な色に変わり始めた。僕と彼女はスマホで写真を撮りまくっていた。

ライトアップは待ち時間にしては驚くほど呆気なく終わった。

宴が終わると、僕は彼女に何も言わずにその場を去った。去り際にたまたま彼女の顔を見てしまった。さっきまで楽しそうな表情をしていた彼女の顔がしわくしゃになっていた。

お互い全くと言って良いほど話さなかったのに、なぜ彼女がそんな顔になるほど僕に興味が出たのか今でもわからない。

ただ、あの顔が今でも時々フラッシュバックし、その度に自分を呪っている。

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