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俳句の雑文

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2017年5月の記事一覧

桜の木の下で 〜一句鑑賞〜

一本の桜が全部知つてゐる  喪字男 (「里」5月号)

 ある場所で、たくさんの時間を一緒に過ごしたふたり。この春、お互いの関係に思いを巡らさなければならないような区切りが彼らに訪れたのだろう。卒業か、環境の変化か、心が離れてしまったのか。自分の気持ちを言葉でぶつけるのではなく、沈黙のままに別れ、その場所を離れることを彼らは選んだ。なぜなら、「一本の桜が全部知つてゐる」から。

 何を言っても無駄

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