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映画「グラン・ブルー」そして僕のイルカとの出会い

子どものころ、水族館でイルカを見てからずっとイルカが好きでした。

どれくらい好きかというと、金魚サイズのイルカがいたら家の三分の一以上イルカの水槽で埋め尽くしたいくらい大好きです。

愛くるしいお顔、知能の高さ、癒しの存在としてイルカが好きな方も多いと思います。不思議な生命ですね。

水族館で見ることで我慢していた僕を、野生のイルカに会いに行く後押しをしてくれた映画があります。

リュック・ベッソン監督の映画『グラン・ブルー』です。

フリーダイビングで競い合う、ジャック・マイヨールとエンゾ・モリナリの友情、そしてジャック・マイヨールとイルカの交流を描いた名作です。

詳しい内容についてはぜひ観ていただくとして、なによりもジャック・マイヨールとイルカの絡みがなんとも微笑ましく、ヨダレが出るほど羨ましかったのを覚えています。

ジャック・マイヨール演じるジャン=マルク・バールさんのイルカを見る目がとても優しく、思わず胸キュン♡なりました。

ちなみにジャックの親友でありライバルであるエンゾ・モリナリ演じるのはジャン・レノです(ジャン・レノ、セクスィーですよね♪)。

ジャック・マイヨールは実在する人物で、素潜りで人類史上初めて100メートル超えの記録を作るという偉業を成し遂げたレジェンドダイバーです。

素潜りで100メートルというのは驚異的です。その後彼の記録は塗り替えられていますが、彼に続くダイバーがさらに記録を伸ばせたのも彼の存在が大きく影響していると思います。

『グラン・ブルー』を観ることから数年、ようやくチャンスが来ました。

ダイビング雑誌で「ドルフィン・ダイビング」なるものがあることを知り、すぐさま連絡、なけなしのお金をかき集め、上司を拝み倒して長期休暇を取りました。いざ出発。

向かう先は、「小笠原」です!

今どうかは分かりませんが、当時小笠原への移動手段はフェリー(24時間)、もしくはセスナだけでした。

セスナの方が明らかに速いのですが、空飛ぶセスナを見て、「へえ~、セスナって本当に飛べるんだー」なんて感想を持っていた僕は、ためらいなくフェリーを選びました。

24時間も船に乗れるんだろうかと思ってましたが、案外いけるもんですね。

太平洋の只中で見上げた満天の星空は今でも目に焼き付いています。

小笠原到着の翌日、真っ黒に日焼けしたショップのオーナーさんが宿まで迎えに来てくれました。

ツアーでは僕らお客の他、ショップでアルバイトをしている学生さんたちも一緒でした。(全員女性でした〜)

彼女たちは学生さんで、夏休みを利用しショップのお手伝いをする代わりに宿と食事を提供してもらい、ドルフィン・ダイビングにもサポートとして同行していました。

優しくて素敵なオーナーさんです♪
(料理も掃除もしませんが、僕もアルバイトさせてもらえますか?)

オーナーさんの「海に入る準備して〜」の声とともにスピードを緩めた船の先には待ちに待ったイルカの群れが。

フィンを左右逆に履いたり、ゴーグルからスノーケルを落としたりとクールかつ冷静に準備する僕を差し置いて、彼女たちはスルリスルリと滑り込むように海に入っていきます。

続けて僕もはいります。(もちろん僕は男らしく、堂々と、大きな音を立てて入りました)

ああ、絶景かな。

海中では先に入った彼女たちが華麗なる泳ぎとともにイルカたちと戯れているではあーりませんか!

美しい海の中を縦横無尽に泳ぎイルカたちと文字通り「遊ぶ」彼女たち。イルカも明らかに楽しんでるのが分かります。

イルカが外側に、人間が内側になり、きれいな円を描いて並び泳ぐツワモノまでいました。。人魚かな?

僕はプールで20メートルを噴水のごとく水しぶきを上げながら泳ぎ切る水泳の達人でありましたが、彼女たちの泳ぎもなかなかのものです。やはり一日の長はあります。

興奮で右往左往する僕の元へ海の底から一頭のイルカが…

僕の目の前まで近づくと、クィッと首を傾げ、

「遊ぶ?」

言ったんです!本当に言ったんです!

もちろん声帯による発音ではありませんが、確かにイルカが僕に伝えてるのが分かりました。

「もーーちろーーんだよーーー♪」

嬉しさいっぱいで潜った僕をそのイルカは「ついてこい」とでもいうようにいざないます。

僕と並んで泳ぐイルカは時に僕の真下に潜り込み、あるいはまた横に来たりして時折アイコンタクトしてきます。

可愛い…可愛すぎる。。

僕の隣にはイルカのサンディが(今さっき名前つけました)、そして周りには無名のイルカたちと一緒に遊ぶマーメイドたち。。

天国って上だけじゃなく、海の中にもあったんですねー♪

ナイショですが、彼女たちは間違いなくマーメイドです。
気づいていましたが、聡明な僕は決して口に出すことはしませんでした。
間違ってもカラオケには一緒に行くまいと心に決めていました。

ひとしきり泳ぎ終え、船に上がって休憩しつつ、次のスポットへ移動。(マンディまた会おうね♡)

しばらく走り、再びオーナーの合図。

今回は数も少なく、子どものイルカのようです。

僕らがある程度泳ぎに問題ないと思ったのか、今回マーメイドたちは海に入らず、船上で見守です。僕だけ海に入りました。

海に入り下を見ると、海底近くに3頭の子イルカが仲良くゆっくりと泳いでいました。

遊ぶ気分ではないようで、こちらに上がってくることもなく、静かに海底を泳ぎ続けます。

僕もあえて近づくことなく、上でスノーケリングしながらゆっくりとついて行きました。

しばらく眺めていると、どこから現れたのか、一頭の大きなイルカが少し距離をとり、僕を見ていました。

目が合うと、そのイルカも何かを伝えるようにじっと見つめてきます。

見つめ合ううちに気づきました。

距離をおきつつも近づいてきたイルカは、海底をゆっくりと移動する子イルカたちの親だったのでしょう。

僕をじっと見つめることで、

「あの子たち、今から行くところがあるの。そっとしておいてあげてね」

もしくは、

「お前、うちの子に近づいたら喰うからな!」

と伝えてきたのです。

とても不思議な感覚なのですが、明らかに伝わってくるのです。

2回のコンタクトを通じてイルカの高度なコミュニケーション能力を確信しました。

「大丈夫だよ、何もしないよ」

そう伝えると、親イルカはスーッと遠ざかっていきました。

他の動物でも何となく何かを伝えあっている、感じ取っていると思える場面はありますが、今回のように子どもへの接近を防ぐ場合、他の動物だと子どもを連れてすぐ逃げるか、あるいは威嚇することが多いと思います。

すぐに逃げることもなく、威嚇することもなく、目で伝え、こちらの意思を感じ取るその様はとても興味深い反応です。

さてさて、初めての野生のイルカとのダイビングを終え、船は無事港に到着。

オーナーやマーメイドたちに今日の出来事がどれだけ楽しく素晴らしいものであったか、そして感謝を伝えました。

オーナーはにこやかに笑うと、僕に言いました。

「今晩もしよかったらカラオケでもしながら一緒に飲む?」

有難いお申し出をいただきました。

「ありがとうございます!もちろん、いきまーーーー」っと、

危なかった…

そうでした。マーメイドとはカラオケに行ってはいけないのです。

後ろ髪引かれながらも、カラオケは丁重にお断りすることにしました。

そういえば、オーナーは平気なんでしょうか。。

歌声聞いてしまうと、海に引きずり込まれてしまうはずなのですが。。。

も、もしかして、オーナーも?

その後もドルフィンダイビングを楽しんだり、浜辺でただぼーっとしたりし、小笠原の旅も終わりを迎えます。

フェリーの船着き場で大きく手を振り、見送ってくれたオーナーやマーメイドの笑顔は今でも忘れません。

小さなお店が数件あるだけで、スマホもなく(当時はスマとという存在自体がありませんでした)、とても楽しく過ごすことができました。

逆に自然しかないからこそ、その豊かな自然を思う存分楽しめたのかもしれません。

まぶしい太陽に照らされ、青く深く広がる海、様々な植物で彩られた山々、一緒に遊んでくれたイルカたち、そして自然の豊かさを知り、旅人をあたたかく受け入れてくれる人々。

他ではなかなか味わえない魅力がここ、小笠原にはあります。

心の底からじんわりと湧き上がる、生命の喜びを感じることができた旅でした。

チューズディ、一緒に遊んでくれてありがとう!また会おうね(^O^)/





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