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久し振りの和装(後半)

客人を駅まで迎えに出る1時間半前には鏡の前で着付けをスタート。「落ち着いて、丁寧に」と自分に言い聞かせながら、まずは胸から胴にかけて晒をくるくる巻いていく。

着付けを習いたての頃は和装用ブラを装着してお腹周りはタオルを巻いていたが、いつからか晒を巻くようになった。断然気持ちが引き締まる。

イメージは昔の任侠映画で江波杏子や藤純子が演じた女博徒。丁半博打で「よござんすか。よござんすね。」のあのシーンだ。

サラシの後は裾よけ、長襦袢と順調に身につけていく。着物の胸元と襟元は長襦袢で決まるのでとても重要。任侠映画に出てくる女性に憧れるくらいなので私は出来るだけ襟を抜きたいのだがいつもそこは苦戦する部分。長襦袢の段階ではかなり襟を抜いたつもりでも着付けを終えた頃には結構詰まってしまっている事が多い。ここは今後の訓練が必要。

いよいよ着物の袖に腕を通し、裾丈を決める。ここでかなり手こずった。何度合わせても左右均等にならなかったり短くなりすぎたり。下前の端をキュッと上げて上前にしっかりしまう事でスリムなシルエットを作ろうとするあまり裾全体を上げ過ぎてしまう。これではバカボンだ。4、5回やり直してようやく納得。

そこからは思いのほかスムーズに進み、帯も前日練習した甲斐ありなんとか一発で仕上がった。裸の状態から着付け完了までに要した時間は約1時間。部屋のエアコンをハイパワーで入れていたにも関わらず汗だくになった。

いざ客人を迎えに夫が運転する車で駅へ。和服姿の女性2人が改札を抜けてくるのが見えた。なんと優雅な図。嬉しくなって思いっきり手を振った。

着付け師のチエさんは私の姿を確認し、
「ちゃんと着れましたね?」
どうやらもう1人の友人ユキコさんの着付けはチエさんによる修正を要したらしい。

何はともあれ3人着物姿で集う事ができたことに乾杯。

夫は我々3人のために甲斐甲斐しく美味しいランチを作ってサーブしてくれた。チエさんもユキコさんも気持ち良いほど料理を平らげてくれてシェフも満足気。

チエさんは2週間後にはイタリア訪問予定。彼女は年2回のペースでイタリアに行くほどのイタリア好き。毎回必ずスーツケースには着物を忍ばせ現地で和服姿を披露し和服文化を世界に広める活動もしている。週に3、4回は男子も根をあげそうなハードなフィジカルトレーニングもこなし、毎朝仕事前にオンラインで英語のレッスンもこなし、本業(着付け師ではなく外資系企業の管理職)の傍ら着付け師の依頼も受ける超パワフルな女性だ。

片やユキコさんは仕事をテキパキとこなすという面ではチエさん同様だが、全体的にほんわかゆったりとした構えで生きている女性。今回彼女の人となりが顕著に現れるハプニングがあった。夫が私を指して"She is my best friend."と口にした瞬間、彼女は泣き出した。我々夫婦の出会いから現在に至るまでには色々な事があった。その詳細を知っている彼女は思わず今の私の幸せに涙してくれたのだ。人の幸せを泣いて喜べる。彼女はそんな女性。

夫が1日がかりで運転手/料理人/給仕をこなしてくれたお陰で我々の和服女子会は、大いに飲んで食べて笑って少し泣けて、大盛況に終わった。

着付けの師匠チエさんからいただいた一言:
「旦那のお陰でこんな優雅な生活ができているんですからもっと着物を着てください!」

はい、頑張ります。



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