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異文化で暮らす苦悩 ー 前向きに開き直るっきゃない?

現在暮らしているメキシコについて、できるだけプラス面に焦点を置くように書き連ねてきたが、ここに来てどうしてもマイナス面について書かざるを得ない状況に追い込まれた。

2か月前に入居した新築マンション、そもそも昨年末完成予定だったのがギリギリ6月頭に入居可能となった。その時点でビル全体が完成していたわけではない。いや、現在もまだ100%完成とは言えない。全部で24戸からなるマンション、実際に入居しているのは我々を含め10世帯にも満たない。正確な数字はわからないがまだ入居できる状態に達していない部屋がいくつかある。自分たちの住居としてではなく投資目的で購入しているオーナーも多いので急いでいないのかもしれないが、それにしてもいい加減完成していいタイミング。

6月に入居した我々の部屋も入居可能ではあったが今もなお完璧とは程遠い状態。①台所シンク下の下水パイプの取り付け方と位置が間違っていて下水がうまく排出されずシンク下の扉を開くと臭いが酷い。②建物外壁のレンガがきちんとシーリングされていないため雨が降るたびに赤茶色の粉塵がベランダの床や白壁部分を染める。③雨が降ると天井裏でピタピタ水滴が天井裏を打つ音が聞こえはじめ、天井裏のシートロック(石膏ボード)がいよいよ雨水を吸収しきれなくなった時点でリビングの床に滴り落ちてくる。他にも細かい事を書き出し始めたらきりがない。

①のシンク下はマンション所属の技師に依頼して取り付け直させたところ接続が甘く水が漏れ、やり直させたらシリコンで隙間を埋めるという付け焼刃の解決。その後シンク下の浄水器設置のために訪れた別の水道技師に確認してもらったところマンション所属技師が取り付けたパイプは接続に必要なパーツが欠けていたため簡単に外れて水漏れに発展したということが判明。無論その場しのぎのシリコンは直ちに取り除いてもらい、正しい接続パーツで取り付け直してもらった。浄水器を設置してくれた技師曰く、メキシコでは水道や電気技師として正式に教育を受けずにその仕事に携わっている人間が多く、このようなケースは日常茶飯事だそうだ。

③の雨漏りも同じような対応だ。雨が激しく降ったある晩、実際に我々のリビングの天井数か所から水滴が落ちてきた。翌朝マンションの管理人に訴えたところ例のマンション所属技師がやって来て雨漏りしている天井の箇所に四角い穴を開けた。梯子に上って天井裏を確認したところ既に雨漏りは中断していたのでどこから水が漏れているのかは判明しなかった。そこで、その技師は梯子を置いていくから次回雨が降った際にどこから水が漏れているのかわかるよう天井裏の様子をビデオ撮影するよう我々に要求した。我々は言われた通りにはせず、次に雨漏りした際に技師を呼びつけ確認させた。結局彼らのとった策は今回雨漏りした箇所をカバーする天井裏部分真上に長方形の鉄板を取り付け、屋上プールの水がそこから天井裏に侵入したと思われる数か所の隙間をコンクリート補修パテで埋めるというこれまた付け焼刃の解決。それでは根本的な解決にはならないだろうと我々が主張しても彼は頭の横で指をくるくる回転させながら「Mexicanos locos!(メキシコ人はクレージー)」と笑顔を見せる始末。その後既に新たな雨漏り候補箇所が出現し、我々は雨が降るたびに天井をじっと見つめ、天井裏から聞こえる水滴の音に耳をすませている。

水道や電気技師などの職人の仕事が信頼できないだけならまだいいのだが、結局そのようないい加減な仕事がまかり通る傾向はメキシコ社会全般に蔓延る文化のようだ。残念ながら。いい加減な技師に仕事をまかせているデベロッパー自身も信頼できない。契約書上我々はマンションの一室と共に屋根付きの駐車スぺースを購入したことになっている。当マンションは1階部分がビルの表玄関と駐車場を兼ねている。駐車場が完成し、我々にあてがわれた12番の駐車スペースには屋根がない。ビルのデザイン上そこだけ吹き抜けとなっている部分に我々の駐車スペースはちょうど位置する。上階から物が落下したり、雨や雹が降った場合我々の車を直撃する位置だ。この事実をデベロッパーに訴えたところ、12番はマンション購入時に我々が自ら選んだ位置だからどうにもならないと言われた。確かに12番は我々が選んだ番号かもしれないが駐車場の屋根がそのようなデザインになるとは知らされていなかった。何度か丁寧に言い方を変えて別の駐車スペースに替えてもらえるよう要求したがデベロッパーはどうにもならないの一点張り。屋根がないのは駐車スペースに留まらない。我々のベランダも屋根がない。ベランダに出て雨に濡れる街の景色を眺めるには傘を差すしかない。我々の部屋はマンションの最上階。屋上にはプールが設置されていて、雨水のみならずプールで誰かが水遊びした際の水も我々のベランダに降り注ぐ。晴れの日も傘を差すしかない。マンションの広告用パンフレット及びフェイスブックやインスタのページ上のマンション完成予想図に描かれている我々の部屋のベランダは屋根がついている。これもデベロッパーに指摘したところ、最初はどうにかいい方法を考えてみようと前向きな姿勢を見せていたが、最終的には契約書には「屋根付き」のベランダと表示していない事を理由にどうすることもできないという結論。全く交渉の余地なしという姿勢のデベロッパーに夫は憤慨し、とうとう弁護士を介しての交渉に踏み切った。

入居早々に大小様々なトラブルに見舞われ、我々はいよいよこのマンションを売って別の場所に引っ越す事を考えはじめた。引っ越し先として適当な物件を2,3日真剣に探し回った。物件探しの途中、あるフランス系カナダ人移住者に出会った。彼は元々不動産デベロッパーを職業としていたため、土地を購入し、自らアパートを建てて最上階を自分の住居としていた。そのアパート建設に際して直面した苦労話を彼はフランス語訛りの英語で滔々と語った。「メキシコ人の職人に現場を任せることはできない。彼らが作業している最中ずっと監視していないととんでもない仕事をする。僕が外国人だから特別にそうなるわけではない。隣の土地は同じ時期にメキシコ人が買ってここと同じようにアパートを建てようとしているが職人がいい加減なため建設は頓挫している。」 そんな感じで彼は小一時間メキシコとメキシコ人に対して抱いている憤りを我々に語り続けた。

この地に数年前から暮らしている友人のアメリカ人夫妻ビリーとリサに我々の新居に関する不満をぶちまけたところ、彼らは共通の知り合いである同じくメキシコ在住の別のアメリカ人夫妻が経験したメキシコ苦労話を語ってくれた。件のカップルは豪邸を購入し、1,000万円相当のお金をかけてキッチンのリフォームを現地業者に依頼した。仕上がりが満足できるものではなかったため、彼らは修正を要求し、代金はその後に支払うと主張した。それに対して業者は顧問弁護士を伴い数人でそのキッチンに乗り込んできて「代金を払ってもらえないなら我々の取り付けた設備をすべて引き取らせてもらう」とキッチンの棚やカウンターその他を壁や床から剥がしにかかった。なんとかその場は収まり彼らのキッチンは破壊されることななかったそうだが、「恐らく彼らはまだこのトラウマから完全に立ち直っていないようであまり多くの人間にこの話はしたがらない。」とビリーはこの話を締めくくった。

結局別の物件を見つけて引っ越したところで状況はそんなに変わらない。我々はそう悟った。しかも、雨漏りや下水の接続など欠点はあるがこのマンションにはそれを上回る美点がいくつもある。天井の高さにより強調されるリビングの空間の広がり、リビングから臨むシエラマドレ山脈の景観、二部屋だったのを一部屋にデザイン変更してもらった広々とした寝室とマスターバスルーム、屋上のプールと360度の見事な眺め。マンションが所在するエリアは大型スーパーが近くに数軒あり買い物に便利、ビーチは車で5分、徒歩でも15分の近さ、お洒落なレストランやバーも徒歩圏内に多数点在しながら程よく静かな環境。マンションの雨漏りについてはいい加減な対応策をチェックし続ける必要があり、更なる欠点が発覚する可能性は否めない。が、踏ん張る価値はある。

購入した物件をめぐって夜も眠れぬほど悩んだのに、我々は投資目的で更にもう一部屋マンションを購入することを考え始めている。毒を食らわば皿まで。いやいや、メキシコ良いとこ一度はおいで。

Es Mexico.  Hasta el proximo!

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