ドラマチック風な話
このnoteでは、私が大学生1年生のときに経験した、ドラマチック風な話について書いていきたいと思います。
ある日、同じ大学のA君と女性2人の計4人で遊ぶことになりました。
女性2人がいる待ち合わせ場所に、A君と向かうべく地下鉄に乗り込みました。
電車内は空いていたので、私は左側の扉にもたれかかる形で立っていました。
乗っていた電車は基本的に右側の扉が開くのですが、一駅だけ左側の扉が開くタイミングがありました。
とはいえ、誰も乗り降りしなかったので、私は変わらずもたれかかっていました。
しばらくして待ち合わせの駅に着いたので降りようとしたのですが、身体が動きません。
私は一瞬パニックに陥りましたが、すぐに原因は分かりました。
「扉に挟まった。ウゴケナイ。」
おそらく、左側の扉が一度開いたタイミングで挟まりました。
正確にはリュックの肩紐が挟まっていました。
リュックには、背負い加減を調節できる肩紐が着いていると思うのですが、それが左右どちらとも扉に挟まっていました。
当時、キチキチにリュックを背負うタイプの男だった私は、紐がかなり余っていました。
私は知っていました。
左側の扉が終点まで開かないことを。
間違いなく遅刻です。
今は亡きおじいちゃんに、
「女性との待ち合わせに遅れる奴はダメだ」
と言われたことを思い出しました。
おじいちゃんとの思い出は、こちらの記事に書いているので是非。
A君までダメな奴にするわけにはいかないので、私は精一杯のキメ顔でこう言いました。
「I"ll be back.」
A君は、「OK.」とだけ言って電車を降りていきました。
前半の話を聞かなければ、ドラマチックな話ですが、要は扉に挟まり終点まで護送されることが確定した、1人の小男がいるだけの話です。
終点まで行って無事に抜け出すことができたので、折り返して待ち合わせ場所に向かうことにしました。
なんやかんやで1時間近くの遅刻です。
そうはいっても、こんなドラマチック風な話があったのです。
A君がさぞ盛り上げてくれているだろうと思ったのですが、なぜか場は沈んでいました。
「お前何やってたんや!」
と思いましたが、扉に挟まっていた私がそんな偉そうなことは言えません。
「I"ll be backしてましたわ!」
と女性2人に仕掛けていきましたが、全く盛り上がりませんでした。
「I"ll be back.」とはアーノルド・シュワルツェネッガー扮するキャラクターが、映画でよく発するセリフです。
かつて偉大なボディビルダーだったシュワルツェネッガーなら、気の利いたマッスルジョークで盛り上げることが出来たのかも知れません。
彼ほどの肉体があれば、そもそも扉に挟まった肩紐を引っこ抜けたかもしれません。
しかし、彼と違い私はただの小男でした。
そんなことを帰り道に思った、ワイティー19歳の春の思い出でした。
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