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僕と高校サッカー

国立競技場への道。
大勢の人で溢れている。淡々とスタジアムへと足を運んでいく。

『東京って遠いわ。』
『なんでこんなとこまで同じ高校生のサッカー見にいくんだ。』
『帰りたいなあ。』

そんな声も聞こえる。
チケットをちぎり満員のスタジアムに入る。
人数に比例して騒がしさはあるがそれぞれで盛り上がってるようだ。きっと、SNSの更新に忙しいんだろう。
これからこのピッチで同じ高校生がサッカーをする。


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僕は全国大会に出たことはないし、そこに近づいたこともない。
もちろん、全国大会を観に行ってあの舞台に憧れて、2年後国立に戻ってくるみたいな話にはならなかった。
(そもそも自分が3年のときは国立が改修工事で決勝は埼スタだったのだ。割とショックだったのを覚えてる。)

高校時代は(高校に限らないが)、後悔することばっかりだった。あのときこうしていれば、そんなことを何度も思う。(最後の試合で、なんでPKを真ん中に蹴ったんだろうとか。)

それでも希望ヶ丘のサッカー部に入ったことは本当に幸運だった。監督、チームメイト、マネージャーには頭が上がらない。恵まれた。ずっと思ってる。

本当にたくさん失敗した。
人として未熟だった。今もだけど。

自分のことしか考えられない。そんな高校生だった。目立ちたい、活躍したい、そんなのばっかり。大事なものは見えてなかった。今になって気づく。

それでも日々必死だった。冷静に振り返ることなんてなかったと思う。向かっている方向は間違えることもたくさんあったけど。気付いたら最後の選手権だった。

選手権予選。希望ヶ丘のホームで行われた試合。陸上トラック側にはチームメイトと野球部、ラグビー部がメガホンを持って叫んでる。校舎側にも沢山の同級生が見にきてる。親も見に来てる。お婆ちゃんも来てくれた。そこには、中学の頃から憧れていた景色があった。

高校サッカーの熱量。
ワクワクする感じ。
ここには、どれだけ自分にとっての幸せがあるんだろうと思った。
多分ワガママだ。自分は何もわかってない。

でも、この環境にもっといたい。
だから大学に入っても高校サッカーに残った。
指導者として。
恩返しとか、そういうのもあるけど。

大学の4年間、指導者を続けてきた。またたくさん学んだ。そして思った。

これからもそんな場所にいたい。
そして、そんな場所を作れる人になりたい。
心揺さぶられるような瞬間を創りたい。
サッカーに限らず。

ある時、監督が言ってくれた。
『高校サッカーには何かいる。それは何か分からない。だから面白い。』


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紫色のユニを纏った高校が後半に劇的ゴールで追いつく。
確かPKだった。スーパーなSBがいたのを鮮明に覚えている。
そして延長で逆転。
間も無くして試合終了の笛がなった。
その瞬間全員がスタンディングオベーション。
誰もがピッチに釘づけだった。
スタジアムの一体感。心臓の音が大きくなった。

試合が終わり、人でごった返す狭い通路をゆっくり進む。

『やばい!この試合やばすぎた!!』
『この試合見れたのマジで運がいいわ!』
『めっちゃおもろかったー!』

興奮が止まらない。誰もがピッチの出来事を口にする。


この瞬間、僕は高校サッカーの虜だった。




※このような状況で今の高校生、特に3年生にとっては苦しい時期が続くと思います。少しでも好転することを心から祈ります。そして応援しています。

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