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TEDxUTokyoSalon “ゆらぐ” 振り返り

こんにちは。TEDxUTokyo 実行委員会 です。この記事においては、先日の12月11日(日)に東京大学本郷キャンパスで開催されたTEDxUTokyoSalon 2022 "ゆらぐ" について振り返っていきたいと思います。

TEDxUTokyoSalon 2022 “ゆらぐ”とは

TEDxUTokyoSalon 2022 “ゆらぐ”とは、昨年5年ぶりに復活した団体TEDxUTokyoの、3度目となるイベントです!TEDxUTokyoの代表についての思いは、現TEDxUTokyo 実行委員会代表の書いたnote記事でもぜひご参照ください!

今回のイベントの種類として行われたSalonとは、300人規模の観客と10人程度のスピーカーを呼ぶTEDxUTokyoのメインイベントとは異なり、観客60人程度で3人前後のスピーカーを呼ぶ小規模なものとなっており、よりコミュニティ形成の要素が強いものとなっています。
今回は、「ゆらぐ」をテーマに、3人のスピーカーによるトークと、2つのワークショップを行いました。

テーマ「ゆらぐ」とは

今回のイベントテーマは「ゆらぐ」。このテーマは団体のメンバー全員がTEDxUTokyoのMissionやVisionから改めて考え直して、それらに基づいてイベントのあってほしい姿として決めました。
TEDxUTokyoのMissionとして”Add Ideas, Rearrange the Reality”と掲げており、TEDxUTokyoという場所・コミュニティを通じてアイデアを提供することにより、現存の現実や東大などのある種閉鎖的な枠組みを1人1人が組み替え、可能性を拡張することを目指していました。また、それを実現するためのVisionとして”Ideas as Tickets for All”を掲げ、TEDxUTokyoという場所で非日常を体験しアイデアを自分の中に落とし込むという過程を通して、全ての人が1歩ふみだすような社会を目指せるようにしたいという思いがありました。これをもとに、今回のイベントのテーマを「ゆらぐ」として、人々の思いが変わっていくようなイベントを作ることを目指しました。テーマの説明文は以下のようになりました。

「傾く、波打つ、交わる、変化する。人々が、TEDxが、東大が、アイデアを介して揺らぎ合う。そのゆらぎは確かに小さなものかもしれない。しかし、それは確実に増幅し、姿を変え、世界に伝播していく。ゆらぎから生まれる新たな秩序が、今日を少しでも変えることを祈って。」

キービジュアル

イベントのキービジュアルとは

イベントのキービジュアルとは、パンフレット、SNS投稿、トーク冒頭のアニメーションなどさまざまなデザインの根幹となるデザインを定めたものです。今回はTEDxUTokyoのBrandingチームが数回に渡りテーマの解釈やアイディアだし、制作会を行い作ることに成功しました。
では次から、各当日のコンテンツについて振り返っていきます。

  1. 新美 陸人 様「声なき声を音にして」 

演奏をする新美様。

Cybotanic開発者である新美様のトークは、開会式よりも先に植物との共演とともに突如始まり会場は驚きと興奮に包まれました。
トークの中で、新美様はパスカルの「人間は考える葦である」といった言葉にも、植物は考えや感情がないと考える人間の無意識の仮定が現れていることを指摘しました。そのような考えに反発し、植物との対話を試みる中で発見した植物と「共演」すること、その共演をする中での技術的なプロセスや工夫を語られていました。
最後に、これからの植物との関わり方として、植物の方から主体的に人間に働きかける、例えば植物に邪魔されるようなものを目指したい、と抱負を語った上で、当たり前に植物のことを規定していた観客にこれから植物のことを捉え直すきっかけとしてほしい、と語っていただきました。


2.開会式

TEDxUTokyoの2023年代表の鷲川紗弥による挨拶

新美様の圧倒的な没入感のある講演ののちに、東京大学工学部システム創成C学科の2年生でイベントの司会を務めてくださるプラートアルヴィンさんのもと、質疑応答が行われ、開会式となりました。
TEDxUTokyoの2023年代表の鷲川紗弥による挨拶が行われ、いよいよイベントの幕開けを迎えました。


3.ワークショップ1 「昔々あるところに? 〜「めでたし、めでたし」の再構築〜」by  TEDxUTokyo 

ワークショップで活発に議論する参加者の皆様

 イベントの最初は、TEDxUTokyo実行委員会による、価値観の「ゆらぎ」をテーマに誰もが知っている昔話を再考する、というコンセプトの下で行ったワークショップです。多くの物語は「めでたし、めでたし」で幕が下されますが、そのメッセージ性や道徳的価値観を疑ったことはありますか?潜在的に植え付けられてきた「幸せ」や「善」などの既成概念のあり方を参加者の皆さんに考え直していただきました。
 このワークショップは第一幕から第四幕までの四部構成でした。まずはじめに、第一幕では5、6人のグループに分かれていただき、担当の物語の絵本を朗読していただいた上で、あらすじを再確認していただきました。第二幕では「善」、「悪」、「幸」、「不幸」などの切り口から違和感を感じる部分について話し合っていただき、その上で一つに絞っていただいた違和感ポイントを基にオリジナルの物語とはちょっと違う「ゆらぎ」バージョンの冒頭文を考えていただきました。スタッフも声をかけたり、議論に参加したりする場面がみられ、参加者とスタッフ間での交流も生まれました。第三幕では3つのグループに違和感ポイントと冒頭文を発表していただきました。どのグループも様々な視点や切り口から考えてくださったので、あっと驚くような「ゆらぎ」版の冒頭文ができあがりました。例えば、『シンデレラ』を扱ったグループの中では、主人公としてシンデレラは「正義」であり、継母やその娘たちは「悪」として描かれている中で、彼女らに比べてシンデレラは主体性に欠けるのではないか、「幸せ」を得るために実は何も努力してないのではないか、と指摘したグループがありました。最後の第四幕ではより大きなグループに分かれていただき、各グループが考えた違和感ポイントがどのように我々の日常生活や現代社会につながっているのかを議論していただきました。私たちの生活からは一見程遠いおとぎ話の世界ですが、意外と日常生活にも似たような違和感ポイントが潜んでいるよね、と議論は盛り上がっていた様子でした。
 参加者交流時間ではワークショップで書き出していただいた冒頭文をホワイエに展示しました。他のグループの冒頭文を読みながら、参加者同士やスタッフとの会話が弾み、「今まで一度も疑問視してこなかった昔話について考えさせられて、とても興味深い経験になった」といった声も寄せられました。

4.松井 哲也 様「『嫌な』ロボットには何ができるか」 

松井様のトークの様子


続いて小休憩の後に、松井哲也様によるトーク、「『嫌な』ロボットには何ができるか」が行われました。

松井様は、大阪工業大学でヒューマンエージェントインタラクションの研究をされており、トークでは、動画や具体例を巧みに用いながら、私たちの想定の外にある世界に生きている「外部」のロボット、すなわち「嫌な」ロボットについて解説して下さりました。「嫌な」ロボットとは、私たちが日常で接しているようなある命令に対してダイレクトな答えを与えてくれるロボットではなく、予想した答えとはすこしずれた回答をする、自分以外の「他者」としての性質を有していて、私たちに「他者は外部である」ということを認識させてくれるロボットのことであり、このロボットは私たちに他者との関わり方についてのヒントを与えてくれます。
トークの最後には、松井様は他者と向き合うためにはモデル化から離れることが肝要である、と他者との関わり方についての新しいヒントを与えてくださいました。このトークを通して、他者を自分の「内部」に無理に落とし込んで解釈する必要はなく、臨機応変に対応することの大切さを学ぶことができました。

5.ワークショップ2 「とおまわり」by 松井 哲也 様  

ワークショップでクレヨンを用いて絵を描く様子

松井様のトークも終わり、長めの休憩をとったところで、松井様のトークに関連したワークショップ“とおまわり”が行われました。前のワークショップのグループからシャッフルしたので、まずは自己紹介とアイスブレイクを行い、その後作業に入りました。
今回のワークショップは、松井様のトークで登場した「嫌なロボット」を実際に作ることで、自分以外の人間と同じ「他者」としてロボットを捉えなおし、既存の一元的な関係であったロボットと人の関わり方を再考するという内容です。
アイスブレイクの後は、「嫌なロボット」へのとっかかりとして「予想外」のものについて考えていただきました。抽象度の高いテーマですが、用意されていたヒントも時折見ながら議論を進めていらっしゃいました。そして実際にロボットを描く際には、クレヨンを使っていただきました。参加者の方にも懐かしのクレヨンということで楽しんでいただけたようです。観音をモチーフにしたロボットなど、どのグループもとてもユニークなロボットを製作してくださり、スタッフも時おり会話に混ぜていただきながら、楽しく拝見させていただきました。
そして、ワークショップで制作した作品は、その後ホワイエに展示しました。他のグループのロボットを鑑賞しながら、参加者同士やスタッフとの会話が弾みました。

6.水野 英莉 様 「I Just Want to Surfー個人的なことは社会的なこと」 

水野様のトークの様子。

最後のスピーカーは水野 英莉様です。

社会学者であり、流通科学大学人間社会学部教授でいらっしゃる水野様は学生時代に出会ったサーフィンに心奪われ、現在はサーフィンをしながらそれを通じて社会活動をなさっています。

そんな水野様は学生時代に男性の多いサーフィンの世界で目の当たりにした女性の立場の現実に純粋に疑問を持ち、その解決のためにパワフルに活動されていらっしゃり、その姿がとても魅力的でした。

個人的なことは社会的なこと ーThe Personal is Political ーというスローガンを掲げ、個人が感じた不満点や違和感をぐっと堪え続けたり隠したりするのでは無くそれを解決しようと社会や政治に問いかけ実行することの大切さを水野さんの実体験から学ぶことができました。また、水野様のスピーチを聞くまでジェンダーの問題は世界的にも本当に大きく、ジェンダー平等への道のりは簡単なことではないと諦めていた部分があったのですが、水野様が自分の身近なサーフィンという視点からジェンダー差別に疑問を持ち問題の解決に向かって動いたように我々も大学の団体や友人同士など身近なところからジェンダーについて考えることができるかもしれないと勇気をいただきました。

最後に

スピーカーとステージホストのみなさま。

トークやワークショップの時間以外にも、参加者同士の皆さまは積極的に交流を行い、休み時間には福武ホールラーニングシアター外のホワイエにおいて、「問いボード」の回答をもとにした哲学的で奥深い会話をしていたり、トークを踏まえた意見交換なども行っていました。

また、閉会式の後の任意の参加者交流時間においても、多くの参加者の方が残って熱心に話し合いに興じていて、アイデアの持つ素晴らしさを改めて感じる一幕となりました。
TEDxUTokyoSalon 2022 “ゆらぐ”は、大変なご好評のもと、無事終了することができました。このイベントを通して参加者の皆さまのなかで少しでも新たな発見や喜びにつなぐ経験があったならば運営冥利に尽きます。
現在TEDxUTokyo実行委員会は来年の4月に行われるメインイベントに向けて準備を行っています!ぜひ今後の発信もお楽しみに。

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