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London Games Festival 2018に行ってみた

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4月中旬。東京ではインディーゲームイベント『TOKYO SANDBOX 2018』に多くのインディーゲーム開発者が集まり、自身の開発しているゲームを展示し、来場者と交流を深めていたのだろう。

丁度その頃、自分はそこから9552キロ離れたイギリスロンドンの地にいた。
London Games Festivalというイベントに参加していたのだ。

London Games Festival とは

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http://games.london/lgf2018/

London Games Festivalは4月5日~4月15日の期間に開かれたゲームイベントの集合体である。それ自体は何も展示しない。しかしこの期間、多くのゲームに関するイベントが開かれた。

どういうことかと言うと

「ゲームイベントの主催者のみんな! 4月にロンドンで君たちのイベントを開いてくれ! London Games Festivalの名のもとに、ロンドンをゲームで盛り上げようじゃないか!」

と呼びかけられて多くのゲームイベントが同時期に開催したのである。

イベント主催者は、London Games FestivalのWEBサイトに自身のイベントを登録できる仕組みになっていた。任天堂やソニーが協賛するイベントから、小さなバーで開かれるゲーム大会まで登録されている。なかなか面白い形だ。

今回、まとまった休みを取れたので観光がてらこのイベントに行ってみた。どういうイベントが開かれていたのか紹介していこう。

Now Play This

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http://nowplaythis.net/

4月6日~4月8日の三日間、この歴史ある建物Somerset Houseで行われていたのが「実験的ゲームデザインのお祭り」をコンセプトにしているイベント「NowPlayThis」である。実際に言った印象としてはメディアアート寄りなゲームイベントという印象だ。「会場内の音をマイクで拾って加工された音を聞く作品」や「ある人物のある一日をマウスをクリックしながら追体験する作品」などゲーム性はないが、ゲームという観点で考えると何か科学反応が起きそうな要素の含む作品が多く展示されていた。

余談だが、今回旅行先でイギリスを候補に入れたキッカケとしてこのイベントの存在が大きかった。自分が制作した10人協力ゲーム「PICO PARK (宣伝すみません1)」は2016年と2017年このイベントに出展させてもらっていたからだ。

本題に戻ろう。自分は4月7日に参加してきた。その中でゲーム寄りな作品を紹介しようと思う。

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まず初めに紹介したいゲームは「Untitled Goose Game」。まだ正式タイトルが決まっていないアヒルのゲームだ。開発しているのは House House 。日本ではセンスオブワンダーナイト2014で「Push me,pull you」という作品をプレゼンしていたスタジオ、と言えば知っている人もいるかもしれない。

おじさんが営んでいる農場にいるアヒルが主人公。プレイヤーはアヒルになって、「おじさんの目を盗んで鍵を奪う」「道具を特定の場所に集める」などの様々なミッションに挑戦することになる。ただ、このゲームの魅力は何と言ってもアヒルとおじさんの愛嬌のある動きやリアクションだろう。とても癒される。ほのぼのした雰囲気を楽しみたい人におすすめしたい。

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まさかロンドンでドカベンの絵を見ることになるとは思わなかった。次に紹介するのは、この明らかに版権的にやばそうなゲーム「Multibowls」という作品だ。次々出てくるレトロゲームをテンポよく勝負して最終的な勝利を決める非合法な対戦ゲームだ。非合法なゲームなのでリリースはされない。しかし面白いゲームを集めてテンポよく対戦できるゲームが面白くないわけがない!

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この「Multibowls」の作者は「QWOP」など奇ゲーで有名なBennett氏である。商業的には許されないが、発想としては面白い試みの作品であった。

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最後に紹介するのはこの「Flat Game」という作品だ。ゲーム作品としてではなく、イベント向けの試みとして興味深かった。来場者はテーマに沿って、タイプライターを使って文章を書き、紙やシールで絵を作りデザイナーに提出する。するとデザイナーがその場でそれらの絵を使ってUnityでゲームを作るというものだ。子供や女性がとても楽しそうに参加していたのが印象的だ。

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今回このイベントで紹介するのはこの三点だが、イベント全体として印象的だったのが独自の入力デバイスを見ることが多かったことである。既存の入力デバイスの制約に囚われない作品は、作りたいものを作ろうしているように見えて、とても魅力的に感じる。

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TRAFALGAR SQUARE GAMES FESTIVAL

http://games.london/trafalgarsquare/

初めに。何故かこのイベントの存在に気づいていなかった。。。なので実際には参加していない。が紹介したい! 何故NowPlayThisの後、ここに行かなかったんだ。。。

4月7日。トラファルガー広場ではTRAFALGAR SQUARE GAMES FESTIVALというイベントが開かれていた。特徴的な展示物として、有名なゲームをリアルに体験できるというものがある。公式Twitterには当日展示されていた「リアルテトリス」「リアルドンキーコング」「リアルパックマン」が紹介されている。とても体験したかった。。。

EGX Rezzed

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https://www.egx.net/rezzed

さて、London Games Festival で最大規模のイベントがこれが。4月13日から4月15日の期間、巨大な船が特徴なTabaccoDockで開催されたゲームイベント『EGX Rezzed』。

イギリスにはEGXという日本で言う東京ゲームショーに類するイベントが存在する。EGX Rezzedは、そのEGXの団体が主催しているPCゲームとインディーゲームにフォーカスを当てたイベントである。日本からは、グラスホッパー・マニファクチュアがノーモアヒーローズシリーズの最新作「Travis Strikes Again」を出展していた。

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会場はPS4やSwitchにフォーカスした場所、特定コンセプトでまとまった部屋などもあり200作品以上の作品が出展していた。

4月14日、帰国直前に立ち寄ったので、その中で印象に残った作品を紹介したい。

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最初に紹介したいのは、会場の中を歩いていると、この独特なアートワークがひと際目立つゲーム「HOMO MACHINA」。スタジオはフランスパリにあるdarjeelingである。とてもアーティスティックな作品だ。このゲームは、20世紀初頭の科学作家「フリッツ・カーン」の解剖図に強くインスプレーションを受けている。フリッツ・カーンが当時描いた人体解剖図は、人体の中を機械に例えて表現されている。その中には労働者も存在している。このゲームはまさに、そういう世界観なのである。人体は複雑な機械と多くの労働者で構成されており、プレイヤーは人体の中で起きる様々な問題をそこで働く労働者を助けることで解決していくゲームとなっている。2018年にリリース予定としており、非常に楽しみにである。

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雪の世界への没入感をとても感じられるこのゲームは「This Dead Winter」。氷河期となった地球の中で生き残ったキツネを操作してパズルゲーム要素で探索するダークアドベンチャーゲームである。作者はRob Potter氏。若干23歳の彼は、2017年大学を卒業したばかりのインディーゲームクリエイターだビジュアルアート的な美しさが魅力的だがキツネの操作性も気持ちよく、完成が楽しみなゲームである。

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SLOPPY FORGERIESは一目見て分かりやすく、ルールは簡単だ、真ん中に表示されている絵に、どれだけ似せれるかマウスを使って左右のキャンバスに描いて競うゲームである。作者はNYのブルックリン在住のJonah Warren氏だ。絵心がある人もない人も会話をしながら遊ぶととても会話が弾む楽しいゲームだ。

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日本人ならば立ち止まざる負えなかった。この作品の名前は「Haiku Adventure」。ビジュアルとタイトル名の通り、俳句と浮世絵をゲームに取り入れている。開発スタジオはロンドンにある「Small Island Games」。開発チームは日本にやってきて実際に浮世絵に触れて学ぶほど熱心だ。あいにく時間の都合でこのゲームをプレイすることは叶わなかった。説明を読むと俳句の仕組みをゲームメカニクスに取り入れているとのことだが、詳細をわからなかった。だが、とても気になる作品で今後の続報を期待したい。

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このちょっとかわいらしいコントローラを使ってプレイできる作品は「like roots in the soil」。この作品はゲームというよりはインタラクティブな映像作品と言った方が近いかもしれない。ただ、とても独創的な作品だ。この作品は、ある二人の人間のドラマを描く。プレイヤーはコントローラを使って、視点を変えることができるが、画面半分を一人の世界、もう画面半分をもう一人の世界を描くようにして二人の人生を同時に観測することができる。5分程度の短い作品で、HPから無料でダウンロードしてマウスを使ってプレイできるので体験してみてもらいたい。少し新鮮な体験ができるかもしれないのと、何故このコントローラのデザインなのかも分かるエンディングとなっている。

ちなみにこの作品を制作したのは「Space Backyard」というスタジオだ。このスタジオ、良い意味で尖がっているというか、HPを見るとこの作品以外に「スイカをコントローラにして鳥になりたいと思っているスイカを操作するアドベンチャーゲーム」を制作している。何を言っているか分からないと思うがが、自分も何を言っているのか分かっていない。HPに行ってその目で確かめてみてほしい。

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この作品は、「Bitsy Boutique」という作品で作者はBitsy Pieces。200以上の小さなドット絵ゲームを、モニターとコントローラが詰め込まれた宝石箱の中で遊べるとてもキュートな作品だ。このかわいらしい宝石箱、小さな画面、小さなドット絵達のゲームは、ドット絵好きな自分の心を掴むのには時間はいらなかった。ゲームの中身だけじゃなく、作品に合わせた入力デバイスやプレイ環境をデザインする出展者が多く見られるのもインディーゲームの魅力の一つだ。

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最後に紹介するのはおまけみたいなものだ。こちらは最近のゲームではないし知っている人は説明はいらないだろう。ただ、実物をこの目で見れるとは思っていなかったので見つけた時は興奮した。このゲームは塊魂のびのびBOYで有名なゲームデザイナー高橋慶太氏が2013年GDCのパーティ向けに作成したゲーム「Tenya Wanya Teens」だ。ジョイスティックと16個のボタンを二つ使って遊ぶ対戦ゲームだ。特殊なコントローラなため商品化などはされていない。ボタンの色に応じて「屁をこく」「歯を磨く」といったアクションが割り当てられている。適切な場所で適切なアクションを求められるのだが、ボタンの色がころころ変わるのでなかなか難しく間違ったアクションをしがちだ。しかし、そこはパーティゲーム。間違えてもコミカルで面白い絵になりやすいので笑える。上手い人も下手な人も楽しめるゲームとなっているのだ。

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EGX Rezzedに関しては細かいことを言えば他にも書きたいことがあるのだが、この辺にしておこう。会場はとても広く多くの魅力的な作品に出会え刺激的なイベントであった。

その他のイベント

他にもLondon Games Festivalのイベントで見たり気になったものを紹介したい。ここで紹介できていないイベントもあるので、興味を持った方は公式HPの方から調べてみて欲しい。

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4月14日、セントポール大聖堂付近では「Game Character Parade」というゲームキャラのコスプレパレードが開かれていた。ソニック帽子が配られたり、子供も楽しめるイベントとなっていた。

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他には4月7日Now Play Thisの後に、行っていたのがFuture Tech Nowだ。VRでエクササイズできる商品「イカロス」や、香りづけで味を変化(厳密には変わっておらず錯覚)させるカクテル「ボクテル」という商品を体験できた。ボクテルに関しては、2010年のお台場のデジタルコンテンツEXPOで東大チームが出展していた香りでクッキーの味を変化させる作品を思い出した。あれから8年、同じコンセプトで商業化していたとは。

全体感想

ロンドンはゲーム産業に力を入れておりLondon Game Festivalに対して2019年~2021年の間、資金を提供してサポートすることが決まっている。また宿泊していたホテルのフリーペーパーへの広告でも目にすることができた。今回肌で感じて、その力の入れようには本当に尊敬するし羨ましい。

さて

今回のレポートは多分に自分の嗜好が反映されている。イベント自体には他にもたくさんのゲームが出展しており、紹介しなかった中に皆さんの好きな作品があったかもしれない。少しでも興味を持ったのであれば調べてみて欲しいし可能なら来年以降現地に行ってみて感じてみて欲しい。自分は実に有意義な旅行となったと思っている。

こういう刺激的な作品に出合うと常々思うことだが、ゲームは自由であってほしいし、自由であるべきだと思っている。大衆的でいいしニッチでもいい、デジタルである必要もないし極端な話道端の石ころ集めて考えたゲームが出展されててもいい、これはゲームと呼べるのかと思うものもあっていいと思うし、定義なんて曖昧でいいし作り手が決めればいい。ただ、特定の方向性のゲームばかりになってほしくないので、作り手として「こういうゲームがあってもいいよね」と思えるものを作っていきたいと思う。

今回いろんな作品に触れることができ、そんなことを考えたくなる旅行であった。

これは来年以降の話だが、今回の旅行先の候補としてドイツもあったのだ。ドイツにもとても紹介したい魅力的なインディーゲームイベントがあったりする。それはまた行った際には共有したいと思っている。

といった感じで長々と読んでいただきありがとうございます。自分なりにインディーゲームを盛り上げられたらなと思っています。

TECO



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