統合失調症と山月記とがまくん

とあるエントリーにいただいたコメント。そのやりとりの中で、ふと、自分って山月記の李徴に似ているな、と思ったところからこのnoteを書いている。

ウィキペディアに山月記のあらすじがあるので、引用。

唐の時代、隴西の李徴は若くして科挙試験に合格する秀才であったが、非常な自信家で、一介の官吏の身分に満足できず詩人として名声を得ようとした。しかし官職を退いたために経済的に困窮して挫折する。下級官吏として屈辱的な生活を強いられたすえ、河南地方へ出張した際に発狂し、そのまま山へ消えて行方知れずとなる。
翌年、李徴の旧友で監察御史となっていた袁傪(えんさん)は、旅の途上で人食い虎に襲われかける。虎は袁傪を見ると茂みに隠れ、すすり泣く。人食い虎となった李徴は、姿を隠したまま身の上を語る。今では虎としての意識が次第に長くなっているという。李徴は袁傪に自分の詩を記録してくれるよう依頼し、袁傪は求めに応じる。自分が虎になったのは自身の自尊心と羞恥心、また怠惰のせいであると李徴は慟哭し、袁傪の一行は涙を流す。
夜が白み始めると、李徴は袁傪に別れを告げる。袁傪一行が離れた丘から振り返ると、草むらから一匹の虎が現れ、月に咆哮して姿を消す。

自分は秀才ではないけれど、フリーランスのWebデザイナー時代には映画のホームページも作っていたし(別名義でエンドロールにも載っている)、結構著名な人やお店のページも作っていた。
でも、作家になりたい気持ちがずっとあったし、実際に書いては投稿していた。実らないまま、今度は外資系企業で、グラフィックのデザイナーとして働き出す。その時にも書き続けていたし、エコーを投稿したのもその頃だ。

エコーは、賞を獲得するとずっと夢想していて、満員電車に詰め込まれる毎日の、支えにしていたように思う。かすりもしなかったことは、結構大きなダメージだったかもしれないな、と今なら思う。仕事上のミスや理不尽な出来事が続き、ついに入院することになる。

入院時の検査で統合失調症と診断された。これは李徴の発狂の部分に当たるだろう。

退院後もソーホースタイルでデザイナーをしていたけれど、やがてそれもままならなくなってしまう。それでも、創作をしたい熱意は衰えず、3ヶ月に一度は投稿を続けていた。一次や二次を通過した作品もあったけれど、1ダース以上の作品を作ったところで、投稿をやめた。

そう、虎になり、それでも諦めきれず投稿するものの、

成程、作者の素質が第一流に属するものであることは疑いない。しかし、このままでは、第一流の作品となるには、何処か(非常に微妙な点に於て)欠けるところがあるのではないか、と。

これは李徴の詩を聞いた時の、友人袁傪の心の声。

これを読んだ時、私の作品は、李徴のものとまるきし同じではないかと、そう思った。発狂しても忘れられず、(素質が第一流かは別として)作品は、微妙に欠けるところがある。

それでも。

私は統合失調症ではあるけれど、薬のおかげで虎にならずに済んでいる。そして、創作も日々、続けている。

今、体調がすこぶる悪く、病気は進んでいるように見える。でも、多分、そうではないと思っている。薬の組み合わせがどうもよくないみたいなのだ。

以前の主治医は統合失調症の専門医で、本当に信頼していた。その医師の最後の診察の時、「書くことを続けてください」と言ってくれたのを、今また思い出している。
そう、書くことを諦めないための、薬の処方だったのだと、ようやく気付いた。

今の主治医も悪い医師ではないと思っているけれど、どこか物足りなく、頼りない。薬の種類もどんどん増えている。それは、きっと今のトレンドではない。
それで、申し訳ないけれど、以前の処方で、ものを書けるようにしてくれないか、と訴えるつもりだ。

私の作品は、微妙に欠けるところがあるかもしれないけれど、私は、李徴のように自尊心は高くないから、学ぶことができる。近く、新しく詩の講座にも通う。刺繍だって通信講座で勉強した。できることは、なんだってやりたい。

ただ、一番の気がかりはお金だ。これをどうしようか、本当に悩む。
まずは、明日、というか、今日、アルバイトに行くこと。無理はせず、欠勤するよりは、元から日数を減らした方がよいこと。稼ぐ金額が変わらないのなら、丈夫で創作活動している方が格段にいい。

一番いいのは、ものを書くことで収入を得られることなんだけれど。
(だから、そのために)

ところで、タイトルにある「がまくん」なのだけれど、これはアーノルド・ローベルの絵本「ふたりはともだち」の中に出てくるカエル、かえるくんとがまくん。その、がまくん。

「ふたりはともだち」の中に「おはなし」という章がある。病気で寝込んでしまったかえるくんが、がまくんにおはなしをねだるというお話。がまくんのこんなセリフがある。

「あたまを かべに ガンガン ぶっつけたら、もしかして おはなしが おもいつけるんじゃないかって おもったもんだから。」

この「おはなし」の中で、創作に苦しむがまくんの姿は、私の姿とそっくり同じ。それで、きっとがまくんは統合失調症じゃないかとにらんでいる。
今の私は、そこまで激しくないから、やっぱり薬は効いているんだと思う。

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とりとめなく書いてきた。昨日、ずっと眠っていたのもあるけれど、気がかりなことがあると眠れなくなるのも病気の症状のひとつだ。それは入院中から指摘されていた。
眠れないなら、いっそ、と思い書きつける。
夜に書いた手紙みたいに、明るくなったら恥ずかしくなる類のものかもしれないな。でも、いいや。分かったことがあったから。

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いつか、きっと、もの書きになった姿を見せよう。
その姿は異形のものかもしれないけれど。

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