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spin a yarn

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私の世界はどこまでも平ら、レイヤーの目を入れたり消したりして、時々君の前に現れよう。 石川葉による小さなお話の連作。
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2023年6月の記事一覧

【spin a yarn】

【spin a yarn】

夜に羽ばたくものを真似て大きく飛んでみる
光に惑わされてはだめ
わたしを呼ぶのはかそけきもの
その光を掬い集める
そして明滅するものを真似てみる

【spin a yarn】

【spin a yarn】

湖から糸を引いて繭を作るような仕草。しかしそれは大きな洞にはならず、くるくると小さく丸められる。まるで綿菓子のよう、と声を掛けると、妖精ははにかんでそのひとつをくれる。それは私の手に渡るとたちまち溶けてしまう。水滴が手のひらに散らばっている。

【spin a yarn】

【spin a yarn】

星の光を蓄えて人の元へ向かう
癒される人もいるし、何も起こらない人もいる
時間の尺度が違うかもしれない
肉体の時だけのことではないかもしれない
また妖精が星のかけらを携えてゆく
明滅した後、その姿を消す

【spin a yarn】

【spin a yarn】

それは星の光
昼間でもひとりの妖精に笑いかける
妖精が招けば、いつか地上の星になり
砕かれて薬になる
星は誰を思い働くのだろう

【spin a yarn】

【spin a yarn】

歩いているだけなのに舞うような。翅の動き方が何かサインを送っているように見える。或いは、いつだって妖精は何か気づかせるための印を出しているのかもしれない。見過ごしても構わない。それでも気付いた人は、日常にひと匙の香味が振りかけられたことを知る。

【spin a yarn】

【spin a yarn】

夏の雨の降る
束の間、煙り、あとはひたすら水を注ぐ
妖精の翅が遠のいて見える
雨の日の妖精は
少し人に近づく

【spin a yarn】

【spin a yarn】

妖精がステップを踏む
蝶が近寄ってきて羽ばたけば
それに合わせて羽ばたいて踊る
雨が降り出すと蝶は去り
妖精は虹の影を落として消える

【spin a yarn】

【spin a yarn】

それは瞬きに似ている
喜びがいつまでも続いて
本当にそれだけをしていればよいこと
憧れ
自分の瞬く術を見つけること

【spin a yarn】

【spin a yarn】

青焼き。
体を纏う瞬間だったと思う。
瞬きのうちに違う姿になったことを覚えている。

【spin a yarn】

【spin a yarn】

いつでもガラスの向こうにいるような
それでいて向こうは素通りしてくるような
もどかしさと不思議
憧れと指の先の慄き

【spin a yarn】

【spin a yarn】

目に嬉しい、と笑う
ありふれていても嬉しい、と笑う

【spin a yarn】

【spin a yarn】

記憶と夢
同じもの
それで私の日常は不思議になる
翅がキャンディの甘さだったこと
記憶と夢
同じもの

【spin a yarn】

【spin a yarn】

醒めない夢が寄り添っている
それを伝えよ、と声がするので働く
繭の中
私の翅はどんな色だろう

【spin a yarn】

【spin a yarn】

見失う日は横になり、涙する。
その涙を掬う者があると。
私の寝床は賑やかで、また涙する。