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spin a yarn

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私の世界はどこまでも平ら、レイヤーの目を入れたり消したりして、時々君の前に現れよう。 石川葉による小さなお話の連作。
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2023年5月の記事一覧

【spin a yarn】

【spin a yarn】

羽ばたきと明滅
妖精は、灯り消えるを繰り返す
人の目にそう写るだけかもしれない
いつでも数多の場所にいると

【spin a yarn】

【spin a yarn】

妖精が消えて波紋
魚のため息
湖に棲む妖精の歌
星が水中にゆっくりと沈んでゆく

【spin a yarn】

【spin a yarn】

広がる瞳
捉える数多の世界、その世界
羽ばたきはまたがり
縦横無尽に現れて現れる消えて消える
雨を運ぶという
雨ばかりの世界もまた運ばれ続ける

【spin a yarn】

【spin a yarn】

その妖精の足跡は滴る葡萄
駆けてゆく姿に、そんな幻を見る
点々としている足跡を追いかけると器を見出す
それは舞い、光の粒の房となる

【spin a yarn】

【spin a yarn】

ただただ遊んでいるだけの妖精を見ていると蜜蜂の社会を思い出すけれど、それとは違っている。若い個体があまり働かないので人の社会に近いのかもしれない。若い個体の方が姿を現している時間が長い。私の知る妖精は霊であること。そのことが理解を難しくしている。

【spin a yarn】

【spin a yarn】

翅は幻の色
それは遠い記憶の色
思い出せないけれど、確かに手にした何かの色

【spin a yarn】

【spin a yarn】

ときめく
妖精を見るたびに嬉しい
心が息をつき、明るいもので満たされる
目をつぶれば、羽ばたきが体の中を巡っている

【spin a yarn】

【spin a yarn】

湖の明るみ
空中と水中の交感
湖に沈んだ星が
ゆっくりと昇ってくる

【spin a yarn】

【spin a yarn】

ほしのかげのひかり
みずうみにすむもののうた
あさもひるもよるも
みみをすませば
そのあなをみたす

【spin a yarn】

【spin a yarn】

星を運び、立ち止まる
星に口づけをする
星は、やんわりとまたたき
眠りに落ちる
妖精は胸いっぱいに抱えた星を工房に運ぶ
眠ったまま砕かれ、星は
また妖精の手に運ばれ
病んだ人の体を束の間、照らす

【spin a yarn】

【spin a yarn】

駆けてゆく妖精を目の端で追う。自由に踊り、時々消え、気づけば空を舞っている。鳥に気をつけて、と声をかけると、姿を消し、そして現れ、手を振る。私は、姿を消した妖精にぶつかることはあるだろうかと考える。虫がぶつかるほどではないにしろ、あったと思う。

【spin a yarn】

【spin a yarn】

ホバリングする蜂と踊る
音楽が流れるよう
蜂も妖精もそれに身を委ね
しばらくとどまる
花も不思議がり
顔をそちらに向けている

【spin a yarn】

【spin a yarn】

妖精から甘い匂いがするのでそう言うと、しまった、という顔をする。人の甘いお菓子を盗んで食べたの。私はお菓子を食べる時、ほんの少しの間、その場を去る。その隙にお菓子が取られていたらいいなあ、と。クッキーが少し欠けている時に言うフレーズを考えたい。

【spin a yarn】

【spin a yarn】

跳ねる光
追いかける羽ばたきは見え隠れしている
こぼれた星のよう
かすかに尾を曳き
またたいている