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spin a yarn

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私の世界はどこまでも平ら、レイヤーの目を入れたり消したりして、時々君の前に現れよう。 石川葉による小さなお話の連作。
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2020年9月の記事一覧

【spin a yarn】
心の波打ち際に残されるのは洗われたガラクタで、べとべとしていないので、好きだ。ポケットに突っ込む。時々、オバケも流れ着く。助けないと取り憑くぞ、と脅すので放っておいた。すると私の周りをうろつくようになった。毛むくじゃらでかわいいので、モヘコと名付ける。

【spin a yarn】
口の中でころがしているのはなあに?
素敵な飴玉。
なにあじ? あたしにもちょうだい。
味はポエジー。さあ、真似をして。ラルラルラルラマツクラナ
らるらる? へんなの!
素敵でしょ。ユウレイノウタっていう詩よ。
ゆうれい。こわい。
怖楽しくて素敵でしょ。

【spin a yarn】
体の中のあちこちが消灯しはじめました。
煌々と点いている目の奥の光も暈がかかってきました。
今日はもう終わりだあ。
嘆きのような、隠せない喜びのような声がこだまします。
おやすみ、よい夢を。
(素敵な写真はInstagramに載っています。ふふふ)

【spin a yarn】
わたしはアニスのキャンディ。
君が口さびしい時に現れて、束の間、目の奥に潜むよ。
糖衣をまとい、君の口をあまくあまくさせる。
明日、忘れてもいいよ。
それでも、わたしが指をぱちんと鳴らせば、たちまち君の鼻先に甘さの余韻。
きっと世界のウインクを見るよ。

【spin a yarn】
見えないティアラを戴いて、背すじを伸ばして歩く。
自ら選び、自ら載せる。
胸を張って歩むことを誰かに承認される必要などない。
褒められたら、喜ぶ。媚びなくていい。
それぞれが戴いているものを、貶す必要もない。
いつか霜を戴いても、まっすぐでいるために。

【spin a yarn】
影と踊る。
ステップはあなたの方が上手ね、足も長くて。
そうよ、とピルエットしながら影の言う。
恥ずかしくないの、ちっとも。
わたしは、恥ずかしくてうまく踊れないのか。
それならわたし、こうして歌うこと、恥ずかしくない。
そうよ、と影の歌うように回る。

【spin a yarn】
涙が出る、嬉しくて。
体のこわばりがとけ、頭の靄が晴れる。
天気よ、と嘯く私たちは、みな、ほっとしている。
インクの子どもたちにおめかしをしないと。みんな、淋しそうに、気ままにしている。ごめん、と言いかければ、私たちが首をふる。
感謝よ、祈りに。主に。

【spin a yarn】
今も手はこわばったままだけれど。
今日の不思議を見つけたいと、ベッドを抜け出し、窓から星を見る。
震える指先に星は降りてくる。
知らない言葉を語り、消える。
なんて喋っていたかなあ。
わたしが違う星に行ったら、なんて喋ろうかなあ。
ギモーブおいしい!