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羨ましいから、大嫌い。人間って単純で複雑だ。 『もういちど、生まれる』 - 朝井リョウ

連作短編。憧れの対象が、大きな劣等感を抱いていたりする。一面で生きていないことがわかるそんな小説。彼らには必ず小さかろうが、頼りなかろうが、最後「光」がある。自分で見つけたから、絶対に強い。若さとみずみずしさゆえの作品。素晴らしかった。

1. 恋人(尾崎)がいるのに親友(風人)から想いを寄せられた女の子(汐梨)
2. 皆からチャラいと思われながらも誠実に(椿に)恋をしている男の子(翔多)
3. 父を亡くしてから母に複雑な想いを持っている男の子(新)
4. 双子の姉(椿)にコンプレックスを持つ女の子(梢)
5. ダンスを続け、自分だけの「すごい」を探す女の子(ハル)

1. ひーちゃんは線香花火

おそらく、ひーちゃんは私、汐梨にキスをした。ひーちゃんは汐梨が好き。隠している。風人はひーちゃんが好き。不毛な恋。

尾崎は私の彼氏。友達の風人とひーちゃん二人だけ。大学内のパン屋でバイトしている。尾崎に求められた時に自分は誰かといると実感できる。尾崎にキスされたと報告したけど、

尾崎「そんなに大したことじゃない。」あたしは何も上手く伝えられない。相手にとっては大したことなんだよ。ヤキモチ妬いてよ。尾崎は私が避けた人たちと仲がいい。

「二人は好きって伝え合える関係なんだよ。そんな幸せなことないよ。」
「好きになっちゃいけない人を好きになったらどうすればいい?」

大学に入って13ヶ月。R大学群馬から来た。みんな無理だと思った。大学生しようとしているから。ひーちゃんは超可愛い。教室で群がっているの邪魔だよと言った。ひーちゃんが車に轢かれる。三人の仲を壊しちゃうかもとひーちゃんは好きになっちゃいけない人とは、私だった。

2. 燃えるスカートのあの子

翔多目線。椿が好き。ハル。かっこいい。ハルはレオを馬鹿にした。ハルもレオと同じ。自分は何か持っていると思う人。

「自分の目で見てないのに、そんなこと言うの、よくないよ。」

考え込んでしまう。ハルみたいに才能がない。彼女もバイトもうまくいかない。19歳こんなもんかよ。オカジュンは結美子が好き。結局付き合った。四人で仲が良い。なんかおもしれーことねーかな。

レオは映画を作っている。俺を見下している。一番大学生ぽいから出演を願われた。そういう人たちが苦手た。自分は何者になれると思っている人。どうせ普通の企業で40年働くんだろ。見下されるのって見下すより楽なんだよきっと。

話すための架け橋がお酒になったのはいつからだ。早く今日が終われ。みんな笑っている。椿は他の男が好き。早く思い出になれ。ピエロだ。

「楽しいことって、真っ最中より、待ち遠しい時が一番楽しいよな。」

椿はレオを好きになった。

3. 僕は魔法が使えない

新くん目線。ナツ先輩はハルの兄貴。美大生。

「自分が向き合いたいと思ったものを描くんだ。」

ナツ先輩が向き合いたいのは妹だった。今まで父さんを描いてきた。けど、母は新しい男を。自分が向き合いたいのは?母さんの笑顔だった。

4. もういちど生まれる

椿の双子の梢。姉にコンプレックスを持つ女の子。風人は幼馴染。二浪している。風人はひーちゃんが好き。私は予備校の先生が好き。お互い、好きになちゃいけない人を好き同士。

「羨ましいから、大嫌い。人間って単純で複雑だ。」

私だって自信をつけたい。今の私から変わりたい。この世界に生まれ落ちたみたいだったよ。もういちど、生まれたみたいだった。

5. 破りたかったものすべて

ハル目線。風人は椿が好きで、「すごい」と唯一思ってくれている。ハルは風人が好き。ダンス。有紗はいつもセンター。私は端っこ。才能に預けている。椿も兄貴も同じようで嫌いだ。私は自己満の世界に浸らない。私は努力で勝ち取る。絶対に。

高校の「すごい」は全く別の形容詞になる。賞味期限。

椿はわかっていたのかも、大学出たら「すごい」にはなれない。モデルを仕事にせず、可愛い大学生を選んだ。私は普通を選ぶ勇気がなかった。

有紗は私より練習していた。翔多に言われた通り、自分の目で見て初めてわかった。私は努力していると自分で思わすことに必死だった。本当は努力していない。全て捨てダンサーになるという特別な存在に。

兄貴が描いた絵。今の私はこんな輝いていない。タイトル「彼女の将来」。悲しくてたまらない。どうして兄貴を嫌ったんだろう。努力をしていないように見えたから。


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