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ハンドルネーム

電磁の海で活動するようになってそろそろ20年以上にはなるだろうか。
インターネットデビューしたのは、多分他人に比べると比較的遅い方だと思う。
…が、一度電磁の海に躍り出てからは、インターネットと言う存在が想像以上に身近なものへと変化した事もあり、自分にとってインターネットは今や【リアルの延長線上】を超えて【現実世界とは別のもうひとつの世界】そのものになりつつある。ワタクシは、その変化に順応出来ているだろうか。

話が脇に逸れたので本題へ戻る。

ワタクシは電磁の海に躍り出て以降、これまで数度ハンドルネームを変えているが、所謂このハンドルネームに関しては一貫して名前の何処かにパンダに因む語句を入れている。
例えば現在のハンドルネーム【TechpanCreate】(テクパン・クリエイト)だが、この【Techpan】(テクパン)と言う語句は元々は【Technopanda】の略である(今でもワタクシをテクパン、またはテクノパンダと呼ぶ方は少なくない)。テクノサウンドとパンダが好きなのでそのふたつをユニゾンさせた名をハンドルネームにした。
近年これを簡略化させて尻尾に【Create】と入れたのは、ワタクシがクラフトやテキストでクリエイティブな活動を行っている事を示す。
(因みに【Technopanda】名義を積極的に用いなくなった理由は他にもあり、実は同名義を用いている方が海外に少なからぬ数いらして、Twitter上でお叱りの言葉を頂いてしまったと言うのもそのひとつである)

現在のハンドルネームに落ち着いて数年経つが、恐らくこのハンドルネームは終生世話になるだろうと確信している。

さて、本日語るのは、このハンドルネームに変えるより前の思い出話である。

当時、ワタクシは30歳になったばかりだっただろうか。
その頃のワタクシの交友関係には、何故か芸能関連の人脈が存在していた。当時は舞台を見に行くのが好きだったので、その関係もあったのかも知れない。
ある時、この人脈の関係者からバーベキューパーティーに参加しないか、とお誘いを受けた。断る理由も無かったから普通に参加した。芸能関係の人脈とだけあって参加者の大半は芸能人だった。一般人はワタクシ含め数名だったような気がする。

その芸能関係の参加者のひとりに、かなり名の知れた(と言う触れ込みだったが、ワタクシはその存在を紹介されるまで全く知らなかった)年配の女性シンガーが居た。嘗ては3人組のグループを作りテレビで見かけぬ日はない程の人気振りだった、と言う。
その女性シンガーが、不意にワタクシに声をかけた。
「あなた、お名前は?」
素直に当時のハンドルネーム…勿論パンダに因む語が組み込まれたものである…を名乗り挨拶したら、その女性シンガーが露骨に顔を顰めた。
「あなた、パンダってガラじゃないでしょ」
何故か知らないが女性シンガーはあからさまに不機嫌にそう言い放った。返事に窮していると女性シンガーは更に追い打ちをかけて来た。
「あなたの顔はどう見ても豚じゃないのよ。そんな顔でパンダとか自意識過剰にも程があるわ。あなた、今日からそのハンドルネームを名乗るのは禁止。そうね、豚に因む名前…例えば【エースコック】これならどうかしら?良い事?必ず改名なさいよ」
※エースコックのカップ麺のロゴマークにコック姿の擬人化した豚があしらわれている事によると思われる

この女性シンガーの一方的且つ横暴な主張は、その後異変に気づいたバーベキューパーティーの幹事が会話に割って入り、女性シンガーをワタクシから遠ざけるまで続いた。当然ワタクシは少しもバーベキューパーティーを楽しむ事が出来ないまま、憮然として会場を後にしたのだった。

その女性シンガーは、バーベキューパーティーの後で何年もしない内に、死ぬような歳でも無いのに急病で呆気なく身罷った。
そのニュースを知ったのは、かの芸能関係の人脈と縁が切れて間もない頃の事だった。

あれから幾星霜。
ワタクシは彼女の命令を一切合切無視し、変わらずハンドルネームの何処かにパンダに因む語を入れている。
天国の彼女の霊は今頃ヒステリーを起こしているだろうが、勿論そんな事はワタクシには与り知らぬ話である。

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