(ヘッダー画像及び記事内の画像は全てウィキメディア・コモンズより拝借しました)
此処数日、YouTubeで海外の愛好家が撮影した鶉鶏類(じゅんけいるい。ニワトリやキジの仲間の事。脊椎動物門鳥綱キジ目に含まれる鳥の総称)の動画を見る機会が多い。
日本では近頃どうなのか判らないが、キジの仲間はオスが美しい羽毛を持つ事から、観賞用に飼育する愛好家が結構な数存在しているようである。特に海外の熱心な愛好家ともなると動物園顔負けの本格的な施設を準備し、野生下では絶滅の危機にあるキジの仲間を飼育下で増やして動物園へ譲渡したり、或いは元の棲息地へ放鳥する方も居るようだ。
一方で、知的好奇心に勝てなかったのかどうか、異なる属のキジを交配させ、新しい【種】を作る試みに懸命になっている愛好家も少なからず存在するようである。
此処で言う【属】とは生物の分類区分のひとつである。詳しく解説すると長くなるので簡潔に説明すると…。
どんな生き物にも、ニ名式の学名(学会などで科学者が万国共通の呼称として用いる名)が付与されている。ウマなら【エクウス・カバルス(Equus cabarus)】ヒグマなら【ウルスス・アルクトゥス(Urusus arctus)】と言った風に。勿論(?)ヒトにも【ホモ・サピエンス(Homo sapiens)】と言う学名がついている。
この学名の内、それぞれ【Equus】【Urusus】【Homo】が属を表す語…と解説すれば、だいたいご理解頂けるのでは無いかと思う。
基本的に、属が異なる動物同士では交配しても子孫は出来ない。それだけ肉体的に隔たりがある為である。
ところが、キジの仲間はこの属による隔たりがかなりファジーらしく、異なる属同士で交配するとふたつの属の特徴を持ち合わせたハイブリッドが誕生してしまうのである。
何だそんな事か、それならばラバ(ロバとウマの一代雑種)とかレオポン(ヒョウとライオンの一代雑種)とか前例は幾らでもあろうよ…と仰る声があるや知れないが、あれは"属が同じ"だからこそ可能な交配例(ロバはウマと同じエクウス属、ヒョウとライオンは共にパンテラ属)なのである。しかもラバやレオポンは一代雑種の哀しいサガと言うべきか、繁殖能力を持たない。ラバやレオポン同士で交配させても子孫は出来ないのである。
ところが、キジの仲間の場合は違う。キジの仲間は属が異なる同士でも交配出来、しかも一部の交配例(例えばニワトリとコウライキジの交配種)では生まれた子孫にしっかり繁殖能力があるのだ。
動画で確認出来たキジ類の交配例を以下に記す。これらはいずれも属レベルで隔たりがある鳥ばかりだ。(コウライキジの外見についてはヘッダー画像を参照の事)
ニワトリ×コウライキジ
コウライキジ×ハッカン
コウライキジ×オナガキジ
コウライキジ×キンケイ
ニジキジ×キンケイ
ニワトリ×インドクジャク(※)
ホロホロチョウ×インドクジャク
他にも探せばまだまだあるかも知れない。例えば、世界中で飼育下に置かれているギンケイは、殆どの個体がキンケイとの雑種である可能性が指摘されている。
※このニワトリとインドクジャクの雑種については、飼い主の手による孵化から成長・最後に至るまでの克明な記録が動画に残されていた。それによると、残念ながらこの雑種は生まれてから一年ほどで死んでしまったようである。野生下で鶉鶏類の雑種が殆ど見つからないのは、恐らく誕生した雑種が短命な事も関係しているのかも知れない
こうした雑種のキジには、不思議とある共通点が存在する。
それは、原種となった双親の良いところ…特に美しい羽毛を受け継がず、全く冴えない外見の鳥になってしまうと言う事である。
ニワトリが持つ立派なトサカも、多くのキジが持つ顔の肉垂(にくすい。顔面を覆う皮膚の目立つ裸出部の事。多くは赤や青など非常に派手な色彩をしている)も一切持たない、尾羽根だけが長く体羽が褐色や黒と言った目立たない色に置換された、親鳥よりずっと地味な外見の鳥になってしまうのだ。
どうしてなのかワタクシには判断が難しいが、或いはこれも人為的な雑種の宿命なのかも知れない。
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