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【蝦夷幽世問わず語り】虹

虹をアイヌ語では【ラヨチ】と言う。
世界各地に虹を生き物(特に蛇や龍の類)と見倣す伝承が存在するが、アイヌ伝承では虹はその美しい姿とは裏腹に非常に不吉な存在として語られている。

〈容姿〉
割愛する。

〈性質〉
極めて邪悪な性質で、雨上がりに歩く人間を襲い悩ませる。

〈備考〉
沙流川の伝承に拠ると、虹は元々は下の天を司るパセカムイ(重いカムイ)の娘が嫁入り前に作ったラウンクッ(既婚の女性である事を示す護り紐。伴侶にしか見せてはいけない特別なお守りであり、色糸を用いず黒の糸と布を用いて、人目につかないよう作成する習わしになっていた。色糸を用いたラウンクッを身に着けた娘を娶ると、その災いにより伴侶は不運になるとされる)だったと言われる。
このパセカムイの娘が代々の掟を破り、七色の色糸を集めてラウンクッを作り嫁入りした為、伴侶となったカムイは病気になってしまい死を待つばかりになった。掟を破って色糸でラウンクッを作り、伴侶を病気たらしめた娘は罪を問われ、テイネポクナモシリ(地下の湿地の国土)に永遠に追放される事となった。
そして色糸で作られたラウンクッは天から地上に投げ捨てられたが、これが命を得たのが虹なのだと言う。
虹に追い回された時は慌てずに「お前の素性を私が知らないと思うのか。お前の正体は下の天を司るカムイの娘が作ったラウンクッだろう。それを弁えずに人を襲うのか」と罵ると、虹は直ぐに姿を消すと言われる。

参考資料
ひとつぶのサッチポロ(萱野茂著、平凡社)

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