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よりぬきついなちゃん

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pixivにて公開中の【鬼っ子ハンターついなちゃん】の二次創作小説より選り抜きの作品を掲載します
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#ついなちゃん

【掌編】カラオケ【ついなちゃん二次創作】

【掌編】カラオケ【ついなちゃん二次創作】

「待ってー、広葉くーん♪」
「待たないし!今日は帰って修行しなきゃだし!」
「キャー、照れてるー♪」
「かわいいー♪」
「か、かわいいとか言うなし!」

黒髪と、湧水のように澄んだ瞳を持つ小柄な少年を、上級生と思しきセーラー服の少女数人が追いかけ回すのを見て、厚柿中学一年生の少年二人組…新聞部の部長・小林小太郎とバスケ部所属・日折司輝は怪訝な顔をした。
上級生の女子達に追い回されているのは、小太郎

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【小説】蜂蜜【ついなちゃん二次創作】

【小説】蜂蜜【ついなちゃん二次創作】

とある神域。
社務所に掛かる看板に、墨痕鮮やかに【楠木神社】と記された古い神社の傍らに、見上げる程大きな一本の広葉樹が立っている。
密に茂る若葉を縫うように咲く、鈴のように可憐な白い花が美しい。時折、そよ風が花を揺する度にかすかな鈴のような澄んだ音が響く。

その大樹の傍で、腰掛けに座って何かを美味しそうに頬張る、14歳位の少女の姿があった。
長い翠色の髪をシニヨンにし、余った髪を後ろに靡かせ、瞳

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【小説】祝言【ついなちゃん二次創作】

【小説】祝言【ついなちゃん二次創作】

此処は、絶海の孤島・小蓬莱島。
元人間の精霊、龍熊子貊が身を置く常春の楽園で、様々な神格や精霊の通り道に当たる場所である。

浜辺に設えた四阿のハンモックに揺られ、だらしなく口を半開きにしたまま高鼾で惰眠を貪る貊の傍に、ひとりの少女が近づいた。
赤と黒と橙色の和洋折衷の戦装束に身を固め、頭には四ツ目の鬼神面。高下駄を履き手には矛を握っている。磨かれた玉のように白い肌に真珠色の見事な長髪、琥珀色の瞳

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【小説】烏骨鶏【ついなちゃん二次創作】

【小説】烏骨鶏【ついなちゃん二次創作】

神奈川県・厚柿市のスーパーマーケットで、渡部ついなはとある商品を見て声も無く驚愕した。

【烏骨鶏の卵 6個入り3,500円(税別)】

「普通の卵とどう違うのやろ…」

所謂レグホーン種等の卵の6個入りならば、恐らく200円もあればお釣りが来るだろう。ついなは、驚愕を隠せないまま、買い物を終えて帰宅した。

「ただいま」
「おかえり。…どうしたんだい、顔色が悪いよ」
ついなを出迎えたのは、ついな

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【小説】牛鍋【ついなちゃん二次創作】

【小説】牛鍋【ついなちゃん二次創作】

神奈川県・厚柿市。
一見何の変哲も無い雑居ビル様の建物の玄関を潜る、凡庸な服装の乙女の姿がある。

その乙女はビルの中に入ると、左手の手首に巻いていたデバイスのスイッチを押した。
途端に、凡庸な服装から一転、その装束が独特なそれに変わる。

頭にはピンク色のヘルメット。耳を思わせる飾りと大きなゴーグルがついている為、ぱっと見だと豚の顔のようにも見える。
膕迄に届く長髪は黒とピンクのツートンカラー。

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【小説】晩酌【ついなちゃん二次創作】

【小説】晩酌【ついなちゃん二次創作】

遥か空の彼方、雲の上。

瓦葺き、朱塗りの柱、まるで神社のような造りの大きな屋敷の一角。呉座を敷いた上に座布団を乗せ、きちんと正座して食事をしている四人の影がある。

ひとりは白髪交じりのざんばら髮に灰色の着物と言う姿の壮年男性。平安時代の異能者にして剣豪、今は神格のひとりとして破邪遍歴に勤しむ漢…【鞍馬天狗】こと鬼一法眼。

いまひとりは、真珠色の長髪と琥珀色の瞳、赤と黒と橙色の和洋折衷な戦装束

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【小説】逆幽霊部員【ついなちゃん二次創作】

【小説】逆幽霊部員【ついなちゃん二次創作】

「くぁあ」

小林小太郎は、欠伸をしながら新聞部の部室に向かって歩いていた。

近頃はスクープに繋がるような大きな事件も起きておらず、校内新聞に掲載する記事も当たり障りの無い内容のものばかりだ。平和な事は決して悪い兆候では無いが、小太郎は少しばかり退屈さを覚えていた。

(コーヒーでも飲むかな)

小太郎は、校舎の出入り口付近にあるフリースペースに歩みを進める。昼休みともなると、このフリースペース

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【小説】風にならないか【ついなちゃん二次創作】

【小説】風にならないか【ついなちゃん二次創作】

此処は天下の険、箱根・足柄峠。

金色のススキの穂が峠を荒ぶ風に煽られ、波のようにうねる。

その峠道を突っ走る大型バイクが一台。
ハーレーダビッドソンを大幅にデチューンした変わった外観のバイクで、サイドカーが装備されている。

運転するのはどうやら女性らしい。目深に被ったヘルメットの隙間から美しい黒髪が覗く。
そして、サイドカーの座席に必死に獅噛みついているのもまた女性のようだった。まだ少女と言

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【小説】おめでとう【ついなちゃん二次創作】

【小説】おめでとう【ついなちゃん二次創作】

神奈川県・厚柿市 。

とある大きな邸宅。
玄関のネームプレートには【風花】の文字。

此処は、厚柿市でもそこそこ名が通った良家・風花家の邸宅。
その客間では、風花家の子女・風花ゆきの親友の誕生日を寿ぐパーティーが開催されていた。

パァン

パァン

クラッカーが景気良く鳴らされる。

「ついなちゃん、お誕生日おめでとう!」
「えへへ…おおきにやで」

ゆき始め、参加者の少年少女に祝福されて、本

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【小説】深窓の令嬢【ついなちゃん二次創作】

【小説】深窓の令嬢【ついなちゃん二次創作】

時空を跨ぎ次元を跨ぎ、悪しき魑魅魍魎を払う若き辟邪の神格、方相氏・追儺はその日、妖怪退治の合間を縫ってとある並行世界に来ていた。

「この世界の"ウチ"は何処に居るのかいな」

空の一角から、追儺はあちこちを小手を翳して見回す。

その時、追儺の視界にあるものが写った。それは、イギリスとかオーストリア辺りにありそうな大きな豪邸だった。
(ほう、この世界の日本には随分景気の良い家柄があるもんやな)

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【小説】五平餅【ついなちゃん二次創作】

【小説】五平餅【ついなちゃん二次創作】

神奈川県・厚柿市の一角にある、一見普通の雑居ビル様の建物。

その建物内では、謎の秘密結社【狐面党】が日々の野望の為に密かに活動している…と思われるのだが、とてもそうは見えない長閑な空気がその一角には漂っていた。

「戻ったよ、ただいま」

まるで白い狐を思わせる銀髪金晴の美女…狐面党三幹部筆頭・八蜂鞠ククリが、両手に沢山のエコバッグを抱えて建物内に至る。

「クーちゃん、おかえり」
買い物帰りの

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【小説】街角にて【ついなちゃん二次創作】

【小説】街角にて【ついなちゃん二次創作】

とある秋の日曜日。

「そんな、困ります…」
神奈川県・厚柿市の商店街の一角で、ひとりの少女が狼狽えていた。
肩までの長さの黒髪を控えめなツインテールに結び、サクランボを思わしむる赤い飾りがついたヘアゴムで括っている。服装は流行りの秋服。そして楚々とした顔には、赤いフレームの眼鏡。

少女の名は高遠咲。
厚柿市最大の名門校・私立厚柿学園の3年生。
楚々とした容姿に違わぬ文学少女である。

そんな彼

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【小説】Good Sleep【ついなちゃん二次創作】

【小説】Good Sleep【ついなちゃん二次創作】

「あう〜…」

神奈川県・厚柿市の一角にある邸宅のベッドで、真珠色の長髪と琥珀色の瞳を有するその華奢な少女は虚ろな目つきで天井を見上げていた。

「ウチは…ウチはこれから"バトロール"に行かな…」
「そんな事言ってる場合じゃないでしょ!」

真珠色の髪の華奢な少女…役 ついなの言葉に、枕元に寄り添っていたラベンダー色の髪の少女…厚柿市でも知られた良家・風花家の令嬢…ついなの親友、風花ゆきが反論する

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【小説】並行世界【ついなちゃん二次創作】

【小説】並行世界【ついなちゃん二次創作】

20XX年、晩秋。

神奈川県・厚柿市の住宅街。
白い壁も眩しい一軒家の玄関先を、箒で優しく掃いている女性が居る。
白玉のように透き通るような肌と琥珀色の瞳、腰まで伸ばした真珠色の髪をうなじ辺りでシュシュで結び、身につけているのはデニム地のYシャツにジーンズ、かわいらしい熊のアップリケがついたピンクのエプロン。
その頬は血色良き故にかほんのり赤く、表情は穏やかだ。

彼女の名は渡部ついな。
旧姓・

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