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「信頼」に「打算」はつきもの

シャーリー・グレイさんが、

こんな記事を書いていらっしゃいました。シャーリー・グレイさんが「信頼」と「打算」を同軸で考えていらっしゃることはとても興味深いと感じ、ここでは私なりの意見を申し上げます。

「信頼」のおさらい

まず、以前私は「信頼」のことを

・過去の実績を「信用」した上で、その人の未来の行動に期待する行為や感情のこと

と説明しました。信頼とは、「『信用』を根拠にした未来への期待」です。

もちろんこれとは違う解釈をしている方もいらっしゃいます。アドラー心理学では、「信用は条件つき、信頼は無条件」だと言ってますね。こちらの記事がとてもわかりやすいです。

さて、どちらがより正しいか、ということを議論しても意味がありません。大切なのは、相手との関係です。相手が家族の場合、友達の場合、恋人・夫婦の場合、ビジネス上のおつきあいの場合、など、相手との関係がどうかということで、この「信頼」という言葉の意味が変わるような気がします。

ここでは「ビジネス上の人間関係」にのみ焦点をあてて考えます。ですから、家族とか夫婦・恋人とか友達とかの関係にはあてはまらない可能性がありますので、ご容赦ください。

ビジネス上の「信頼」は仕事と切り離せない

ビジネス上の付き合い、上司-部下 とか、先輩-後輩 とか 顧客-取引先 とか、色々あると思いますけれど、ビジネスにおいて「信頼」という言葉を使うとそこには必ず

仕事を任せる - 任される

という事柄がついて回ります。ここではわかりやすいように「顧客」と「取引先」を例に挙げますが、他の関係でもだいたい同じです。

仕事を任せる側(上司や顧客)は、任される側(部下や取引先)に期待して、信頼して、仕事を任せます。「この人だったらちゃんと仕事をしてくれるだろう」とか「納期を守ってくれるだろう」とかの期待です。仕事を任される側も「的確に指示をしてくれるだろう」とか「ちゃんと支払ってくれるだろう」とか、仕事を任せる側に様々な期待をします。

「信頼」は「打算」ありき

この「期待」。
ビジネスである以上、「打算(=損得勘定)」を抜きにして語ることはできない、と思うんですよ。もちろん付き合いが長くなり、仕事以外のことも色々話し合うようになって、打算抜きの友達、親友と言える間柄になることもありますけどね。それはきっと、公私ともに仲良くなってからのことです。

ビジネス上の「信頼」は、「打算」から始まる

と言っても言い過ぎではないような気がします。「ちゃんと仕事をしてくれるだろう」とか「ちゃんと指示をしてくれるだろう」とかの期待は、費用対効果とか、生産性とか、利益とか、社会貢献の度合いとか、そういう成果に対する損得勘定とイコールであって切り離せないんです。ビジネスの場合はね。

特に、関係が始まって間もない頃、つまり相手のことがまだよくわかっていない頃はその傾向が強い。信頼したくても、まだ体感できる実績がない頃ですね。仕方がないから相手の「他人との実績」を根拠にして信頼しようとします。他社とこういう実績があるから、今回もきっと大丈夫だろう、みたいな。でも根拠が欲しいから「契約」という形で相手と約束するんです。

そこで「無条件に信頼する」

本来、信頼関係って、相手と長い付き合いの元に双方向に培われていくものなんですよ。「信用」という実績を根拠にしてね。それには時間がかかります。徐々に徐々に、少しずつです。しかも信頼を失うのは一瞬です。あー怖い。

しかし、ビジネスの世界ではそんな「時間をかけて徐々に徐々に少しずつ」なんて悠長なこと、言っていられません。そこで、相手からの信頼を得るために、こちらは相手を無条件に信頼するんです。それは、自分を信頼してもらうためと、仕事を成功させるためです。

人は、相手から信頼されていないのに、相手を信頼しようとは思いません。「あなたが私のことを信頼していないのに、なんで私があなたのことを信頼しないといけないんですか」となります。

だから、こっちから全幅の信頼を相手に向けるんです。自分を信頼してもらうために。インスタントな信頼関係を結ぶための打算、と言われても仕方がないでしょう。それが単なる打算でないことは、仕事ぶりで証明すればよろしい。

最後に

私が尊敬する人が、こんなことを言っていました。

「この人は信頼できない」
というゆるぎない証拠が見つからない限り、
全面的に信頼する

すると、相手が自分のことを信頼してくれるようになります。最初はインスタントな、打算的な信頼関係から始まるのは仕方ないです。しかし、信頼に応えることで、実績を積むことで、それはやがて本物の信頼関係に変わっていくことでしょう。


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