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ショートシャンクの空に 最終作

 小説を書き始めて10年以上経つ。まさか自分の作品が書店に並び、物語が映画やドラマになり、さらにこんな栄誉ある賞を頂けるなんて夢にも思っていなかった。
 小さな頃から、私には小説家になるという夢があった。しかしいつしか自分には才能が無いことを悟って、その夢を諦めつつあった。
 しかし、ある人に出会って、私はもう一度自分の夢に挑戦することを決めた。彼がいなければ、今の私はここにはいないだろう。
「最後に、この感動をどなたにお伝えになりたいですか?」
 報道陣からこの質問が出たら、絶対に答えたい相手がいた。私は渡されていたマイクをむんずと掴んで、少し食い気味に答える。
「この小説が原作のドラマで主演を務めている菅田将暉さんです」
 報道陣が一斉にして黙る。母や夫や師匠を差し置いて何故、とでも言いたいのだろう。質問した記者もどういうことかと考えあぐねた様子だ。宜しい。ならば説明してやるまでだ。
「昔、菅田さんがやっていたオールナイトニッポンに『ショートシャンクの空に』っていうコーナーがありまして……」
 つづく。

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