【ネタバレあり】『ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス』の雑多な感想

ノーウェイホームに続いて「マルチバース」に深く切り込んだ作品ということで、期待に胸を膨らませて観に行った。ストレンジかっこいいし。ちなみに筆者は『ホワットイフ…?』2話以降、『ムーンナイト』4話以降はまだ観てない。

以下ネタバレ感想。







映画を観終わってしみじみと思ったのは「マルチバース・オブ・マッドネスだったな……」だった。「マッドネスだった」は「悪夢のようだった」とも言い換えられる。それぐらい強烈で、イヤ〜な映画だった。

良い所もたくさんありつつ、同時にイヤなところもそれなりにあったので、総評としては手放しに「最高!」といえない作品だったというのが正直なところだ。ノーウェイホームが完璧すぎたというところもあるかもしれないが。


良かったところ

全体を通しての「マルチバースが解禁されてしまった故のメチャクチャ感」は、これまでのMCUの積み重ねもあって、本作の最大の魅力かもしれない。別世界線のドクター・ストレンジはもちろん、X-MENやインヒューマンズなどの今までMCUに登場していなかったシリーズのヒーローも出てくる(全く予習していなかったので面食らった)。『シャン・チー』でも出てきていたような、魑魅魍魎的な魔物が惜しみなく出てくるのもそこに拍車をかけている気がした。


久しぶりのドクター・ストレンジの主役作ということで魔法を使ったバトルシーンは非常に多く、それだけでもすごく楽しめた。最初のガルガントスのバトルからストレンジならではの戦闘スタイルは出まくってたし、楽譜を利用したもう一人のストレンジとの戦いや死体を操っての闇堕ち感すらあるラストバトルなど、本作でしか観れないような独自の良さに溢れた戦闘シーンはどれも魅力的だった。

新キャラ「アメリカ・チャベス」もとても良かった。彼女の成長物語としても見られるし、能力もカッコよく、これからの活躍も期待してしまうようなキャラだった。単純にキャラデザも好き。
コミックスでも2010年代に初登場したとても新しいキャラらしい。そこも含めて良いなと思った。

サム・ライミ監督だな〜とイヤでも思わされるホラー描写も、本作ならではの魅力かもしれない。ストレンジの封印魔法を関節外しながら抜け出したり、アース838で血みどろで追いかけたりしてくるワンダの描き方はホラーでしかない。他にも、今までの映画と比べてグロテスクな描写は多かったように感じられる。とにかく人が死ぬところが鮮明に描かれる場面が多い。

マルチバース間を移動する移動シーンの素晴らしさには触れておきたい。本作に主に出てくる世界はメインの世界含めて3つだけだが、世界の移動とともにストレンジとアメリカの姿が次々変わっていくあのシーンがあることで「うわ〜!マルチバースやってんな〜!」という感じがすごく出るし、単純に映像としても綺麗だった。
あまり関係ないが、スパイダーバースの続編でもあの感じのシーンがありそうで非常に楽しみである。

細かいところだが、アース838の近未来的な街の描写はすごかった。信号とか街を歩く人の服装とか、並行世界ゆえに全く文化が違うんだという説得力があった。



イヤなところ

やっぱりワンダに救いがなさすぎるのが最も大きな「イヤなところ」だ。

大雑把にいえば、本作のワンダは禁書ダークホールドの力に影響を受け、マルチバースを利用し失ってしまった息子たちを取り戻そうと試み始め、結果的にストレンジたちと敵対。並行世界の自分に憑依する「ドリームウォーク」を駆使しあらゆる手段をもってして別世界の息子たちを手に入れようとする(そのためには殺人すら躊躇う様子がなかった)が、それは誤った行動であると悟り、自らの罪を償うかのように自害(自らを封印?)した。

そりゃこの映画単体で観れば「そういうヴィランなんだな」で終わりだけど、今までに『アベンジャーズ インフィニティウォー』や『ワンダ・ヴィジョン』で描かれてきたワンダの物語のことを考えると話は全然違ってくる。
特に『ワンダ・ヴィジョン』のことだ。個人的にMCUの中でも特に面白いと思っている作品だから贔屓しているところもあるけど、本作はワンダの心の変化についてかなり繊細に描かれていた。『インフィニティウォー』で恋人であるヴィジョンを失い、『エンドゲーム』でサノスに復讐してもなお癒えない心の傷に、周囲に超絶多大な迷惑をかけつつも向き合い、アガサとの戦いも経て最終的には深く反省し隠居生活をするようになる。ついでに言えばその一連の事件をドラマシリーズという形を利用したメタフィクション的演出や、「現実改変で自分の理想の世界を作ってしまう」というスカーレット・ウィッチにしかできない他にない表現を使って描いていたのがめちゃくちゃ面白かった。

そんな風に一本のドラマシリーズをしっかり使ってなんとか深刻な悩みに折り合いをつけたワンダが、一冊の本で純粋な極悪ヴィランになってしまったのがなんとも悲しかった。ホラー描写も、ワンダの不憫さを知っていると純粋に怖がれず、「ワンダなんでこんなことになっちゃったの……?」と思ってしまった。まあ、スカーレットウィッチの力って強大にも程があるからあの描き方が一番映えるのかもしれないけど……。
二人の息子にだけ執着し、ヴィジョンには全く執着していなかったのも理由が説明されておらず、正直イマイチ納得できない。ヴィジョンも戻ってくるなら戻ってきて欲しいんじゃない……?
他でも言われていると思うが、ワンダって『エイジオブウルトロン』以降幸せだった時期が全然ない。いつか報われてくれ……


加えて、別世界のヒーローチーム「イルミナティ」がワンダに惨殺されるところも、個人的に「ちょっとイヤすぎる〜〜〜〜!!」と思ってしまった。特に初登場でありながらある種思い入れすらあるキャプテンカーターとキャプテンマーベル(マリア版)が死んでいく様は相当応えたし、ブラックボルトとMr.ファンタスティックに関しては単純に死に方がエグかった。「マルチバースだからなんでもあり」というのを駆使した場面であり、視聴者もそうやって割り切るだろうと思って入れたシーンなのかもしれないが、どんな事情があれどヒーローがバッタバッタ死んでいくのはキツかった。こればかりは好み次第だけど。


まとめ

色々書いたが、MCUを追っている人に対しては「是非観てくれ!!」と言いたくなる作品ではあるし、面白い作品だったとは思う。ただちょっとワンダ関係が悲しすぎて、好きかと言われれば違う気がする。『ノーウェイホーム』も悲しい作品だったけど、あっちは過去作を活かしつつピーターの成長を描いた上での暗さだったから全然違うし……。
MCU全体で見れば、やはりマルチバースの可能性を大きく広げたという点で意味のある作品だと言えるだろう。デッドプールもX-MENもヴェノムも観なきゃ……。

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