Apple Silicon M1が世の中を変える時(7) 〜 垂直統合モデルはイノベーションを加速する 〜

“The Machine that the Change the World”によると、1900年初頭にマスプロダクションを始めたフォードは1923年には同一シャーシのモデルTを210万台生産をしたそうです。

もうすでに勝者は決まったかのような印象を受けます。一つのモデルで200万台以上の自動車を戦前に作っていたわけですから、日本企業などは全く太刀打ちができない状況です。そしてその後50年間はフォードの時代が続きます。

この間、多少のマイナーなビジネスモデルが出てきます。ビルゲイツが尊敬すると自ら公言して憚らない、アルフレッド・スローン氏がCEOをしていたGMなどがそれにあたります。

ビルゲイツの“Business@Speed of Thought”、考えるスピードでのビジネス(経営)は、私がDXのバイブルとして使っている本ですが、ビルゲイツはここで、スローン氏の功績を書いています。彼はコミュニケーションを重視しており、特にディーラーとのコミュニケーションの中で、様々なインサイトを得ていることです。

例えば、ディーラーの利益が減少すると、その原因を把握しなければなりません。それは、製品の問題なのか?保守メンテナンスの問題なのか?あらゆる感点から分析をして、その後の対策に活かします。

丁度AppleがApple Storeやホームページで、顧客がどのような商品を欲しがっているのか?保守やサポートとして持ち込んでいる顧客の要望はなんなのか?がそれでわかります。ビルゲイツはこのような情報はリアルタイムにデジタル化して把握し、ミドルマネージメントまで素早く共有をして、考えるスピードでビジネスをすべきであると言っています。

つまりものづくりでは、顧客の反応を見ながら、臨機応変に次の製品の計画や製造をしなければならないということです。すなわち、水平分散の問題はそこにあります。

私は、垂直統合モデルの目的はそこにあるのだと思っています。製品開発を全て自ら行うとか、設計は自社でやり製造はアウトソーシングすればいいという極論をする人がいますが、それは結果論です。

今回のM1チップはユーザが何を望んでいるか?の現れで、それを把握できたのは垂直統合モデルで顧客のニーズに対応する基盤があったからだと思います。もしも、インテルがAppleの顧客が望む事を実現できるCPUを作り続けていたならば、開発する必要がなかったのだと思っています。

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