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秘密罪 #24


〇〇:んぁ.....今...何時だ...。

時刻はまだ短針が4をさしたばかり。泣きながら眠りについた為、変な時間に目が覚めてしまった。


さくら:.....すーっ...すーっ....

〇〇:まぁ...当然寝てるか。 よいしょ。


一回起きてしまったら中々〇〇は寝付けない人だった。そういう時はいつと素振りをすることにしていた。

〜〜

〇〇:ふぅ....疲れた。


だが、この日はなかなか吹っ切れなかった。鬱屈とした何かが、心に渦巻いている。

昨日の夜、さくらに救われた。さくらになら話してみようと思った。自分の過去の事、この街に来た本当の理由。


〇〇:....さくらに...話してみようかな....。

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さくら:....ん....ふぁあ...あれ?〇〇君いない。


トントントンッ ジューー 扉の向こうの音で目を覚ました。


ガチャ


さくら:あ、〇〇君おはよう。

〇〇:おはよう、さくら。もう朝ご飯できるから座ってて。

さくら:うん。

〜〜

〇〇、さくら:いただきます。

さくら:パクッ....モグモグ...うまっ!

〇〇:良かった笑 昨日はちゃんと寝れた?

さくら:うん!〇〇君と一緒だったから//

〇〇:恥ずかしいな// 今日は何する?

さくら:....和ちゃんは夕方に帰ってくるんだよね。

〇〇:うん。そうだよ。

さくら:...じゃあ、今日は一緒に家にいたいなぁ。

〇〇:うん。いいよ。家にいようか。


2人は身支度をすませ、ソファに座りテレビで映画を見ていた。


〇〇:へー、ジブリ......僕見た事ないなぁ。

さくら:嘘っ!?ほんとに?

〇〇:うん。見た事ない。

さくら:じゃあさ、「耳をすませば」見ようよ!

〇〇:あ、なんか聞いたことある。確か和が録画してるはず......あ、あった。

さくら:見よー!私これ好きなの。

〜〜

〇〇:..........。

さくら:(〇〇君めっちゃ凝視してる....面白いと思ってるかな)

〇〇:この天沢君って不器用だね笑

さくら:〇〇君がそれ言う?笑

〇〇:えー、僕不器用かな。

〜〜

映画も終盤。最初にした会話から、それ以降会話はなかった。

「雫、大好きだ!」 天沢聖司が主人公の雫に告白していた。


さくら:(ここ、何回見ても良いなぁ)チラッ


さくらは〇〇の横顔を見た。これほどまでに整っている顔は見たことがない。高い鼻にシュッとした横顔。だが、顔を赤くし、涙を流していた。


ひとりぼっち おそれずに
生きようと 夢みてた
さみしさ 押し込めて
強い自分を 守っていこ


エンディングで「カントリー・ロード」が通学路をバックに流されている。


どんな挫けそうな時だって
決して涙は見せないで
心なしか 歩調が速くなっていく
思い出 消すため

カントリー・ロード
この道 故郷へつづいても
僕は 行かないさ 行けない
カントリー・ロード


まるで〇〇に向けたような歌詞だった。


〇〇:ふぅ....泣いちゃったよ笑 昨日からさくらには泣いてるとこ見られてばっかだな笑

さくら:ふふっ笑 この映画気に入った?

〇〇:うん。良い映画だったよ。.......うん。ほんとに良かった。

さくら:良かった! この後何する?お昼にはまだ早いよね。

〇〇:.....ちょっと聞いてほしい話があるんだ。

さくら:.....〇〇君の話?

〇〇:...うん。さくらには言おうと思って、僕の過去の話。


〇〇は語り始めた。自分の過去の全てを。さくらは日記帳を読んではいたが、本人の口から発せられる言葉の重みは、感情を揺さぶるには十分だった。


〜〜

〜〜

〇〇:・・・・って言うのが僕の過去の全てかな。

さくら:...うぅ.....グスッ..ウゥゥゥ...グスッ......

〇〇:あぁ!ごめんごめん!泣かせるつもりはなかったんだ。


〇〇はさくらの涙を指で拭った。


さくら:へへっ笑 ありがとう、優しいね。

〇〇:.........どう思った?

さくら:ん?

〇〇:....僕の話聞いて....僕のこと...嫌いになった?

さくら:.....なんで嫌いになるの。

〇〇:.....父が...人を殺したのは...ぼ、僕のせいなんだよ? こんなやつ嫌でしょ....。

さくら:....こっちおいで。

〇〇:え?ちょ...うわ!?


さくらは思い切り〇〇のことを抱きしめた。


さくら:....私の好きな人を貶すのは、〇〇君自身でも嫌だなぁ。

〇〇:..........。

さくら:....〇〇君が嫌でも...もうやめてくれ!って言っても...私は〇〇君から離れないよ。

〇〇:.....さくら...。

さくら:...大丈夫。大丈夫だよ。


"大丈夫"と昨日から何度言われただろうか。〇〇自身過去の話をするのは、初めてだった。それ故に、大丈夫の言葉一つでかなり救われるのだと知った。

〜〜

さくら:落ち着いた?

〇〇:....うん。ありがとう。

さくら:ふふっ笑 あ、もうお昼だ。


気がついたら時計の短針は1を指していた。


〇〇:炒飯でも作るよ。ちょっと待ってて。

さくら:私も一緒に作る!

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〇〇:ん!さくらが作ったの美味いよ!

さくら:〇〇君が作ったのも美味しい!


2人はお互いのを作りあった。


〇〇:結婚したらこんな感じなのかなー。

さくら:ちょ、ちょっと!いきなりびっくりさせないでよ!

〇〇:え?変なこと言った?

さくら:も、もう//

〇〇:あぁ、そうだ。さくらに聞きたいことがあってさ。

さくら:うん。なに?

〇〇:"菅原咲月"って子知ってるかな。

さくら:んー....わからないなぁ。どうして?

〇〇:いや、わからないならいいんだ。

さくら:....そう。

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食事を済ませ、時刻はもうすぐ3時になろうとしている。さくらが〇〇といられる時間はあと2時間ほど。


〇〇:修学旅行ってさー、どこ行くんだっけ。

さくら:えーっとね、京都、奈良、大阪だよ。

〇〇:おぉ!楽しそう。

さくら:班さ、一緒になろうね。4人で一個の班だから、かっきーと禅君と〇〇君と私でさ!

〇〇:あはは笑 絶対楽しいじゃん。

さくら:楽しみだなぁ。ねぇ、どこ行こっか!


2人は修学旅行で何するか、どこ行くかなど妄想を膨らませていた。たらればの話は案外楽しいものであり、時間はあっという間に過ぎていった。

〜〜

〜〜

さくら:あはは笑 なんかより楽しみなっちゃった笑

〇〇:そうだね笑 3泊4日かぁ。和1人にして大丈夫かな。

さくら:美空ちゃん呼べば大丈夫じゃない?

〇〇:それもそっか。お土産買ってこいって言いそう笑

さくら:絶対言うね笑 あ!もうこんな時間!

〇〇:もう5時だね。帰る?

さくら:うん。もう帰らないと。

〇〇:.......ほんとにありがとね。楽しかったし、救われた。

さくら:ふふっ笑 私もありがとう。〇〇君といれて楽しかった!......また来ていい?

〇〇:うん。いつでもおいで。

さくら:えへへ// ありがとう。じゃあ、私帰るね。

〇〇:うん。また学校で。


〇〇は玄関先までさくらを送っていった。


〇〇:じゃ、またね。

さくら:.....帰りたくないなぁ。

〇〇:また学校で会えるよ。

さくら:むぅ......〇〇君もうちょっと近づいてさ、目瞑って。

〇〇:え?まぁ、いいけど。

さくら:へへ// じゃ、またね!チュ

〇〇:ふぇえ!今、さくら!


バタンッ


さくらは逃げるように帰っていった。


さくら:頬にキスしちゃった///  うわぁ、自分でしたけど、恥ずかしいよぉ//

〇〇:今...さくらにキスされたのか///

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和:〇〇ー。ただいまー。

〇〇:おかえりー。夕飯いる?

和:いや、食べてきた。それより!さくらさんとのデートどうだった!?

〇〇:ん、楽しかったよ。映画見たり、食べ歩きしたり。

和:いいなぁー!さくらさん可愛かっただろうなぁ。

〇〇:うん。可愛かったよ。

和:むぅ.....なんか悔しい。 あれ?なんで食器2人分あるの?


手洗いをしようと台所に行くと、2人分の食器があるのに気づいた。


〇〇:え!? い、いやそれはね、えーっと....

和:....さくらさん、泊まった?

〇〇:い、いやー?

和:詳しく聞かせてもらうよ💢

〇〇:うわぁ!ごめんって!


その夜は和に洗いざらい聞かれ、逃がしてもらえる事はなかった。

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それから数日が経ち、何気ない日々が続いていた。唯一変わったのは〇〇とさくらの関係性だけ。外野から見たら明らかに違って見えた。


昼休み 屋上


さくら:た、卵焼き作ってみたんだけど、食べて欲しいな//

〇〇:え、美味しそう!食べたい!

さくら:じゃあ、はい、あーん//

〇〇:えぇ!? あ、あーん// ん!美味しい!

さくら:えへへ// 練習したんだぁ//

遥香:..........。

禅:ん?何度も確認するけど、2人は付き合ってないんだよね?

さくら、〇〇:うん。

さくら:私はす、好きだけどね//

〇〇:そんなはっきり言うなよ//

遥香:私...もう行くね。

〇〇:あ、もう行くの?早くない?

遥香:....用事があるから!


バタンッ

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遥香:はぁ......もう...何がしたいんだろ私。

和:お悩みですね、遥香さん。


2人は空き教室で2人で話していた。


和:もう....付き合いそうですよね。

遥香:デートして、一気に距離が縮まっちゃったなぁ。

和:......それは違うんじゃないですか?

遥香:え?

和:私とさくらさんと美空は、〇〇にアピールしてますけど、遥香さんは全然してないじゃないですか。というか好きって事認めてないし。

遥香:.....好きってよくわかんないんだもん!

和:そんな悠長にしてたらさくらさんに取られちゃいますよー。 ま、好きじゃないんだったらいいんですけど。

遥香:.........むぅ...。

和:好きって認めましょうよ。

遥香:...は、恥ずかしいじゃん// 好きな人とかいた事ないし、わかんないし..。

和:....まぁライバルが減っていいですけど...私もう行きますねー。

遥香:ちょ、ちょっと待ってよぉ!

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放課後


〇〇:うへー、部活疲れた。

禅:最近前より疲れなくなってきたんだよな。

〇〇:僕が作ったメニューやってるからな。

禅:確かに....。

〇〇:今度の土日にさ、神宮寺達がこっちにくるらしいんだ。

禅:へー。

〇〇:一緒に練習するんだけど...禅も来るか?

禅:えぇ!?いいのか?

〇〇:おぉ、いいぞー。色々学べ。

禅:しゃあ!

〜〜

井上宅


〇〇:和はさー、修学旅行行ったことある?

和:あるよー。

〇〇:楽しい?

和:楽しいよー!友達といろんなところ行ったり、でもやっぱり行きの新幹線とかバスとか、ホテルとかが楽しいんだよねー!

〇〇:そっかぁ。へへ。

和:あれ、なんでニヤけてるの?

〇〇:え!ニヤけてた?

和:うん。

〇〇:修学旅行初めてだからさ。楽しみで仕方ないんだよねー。

和:そっかぁ、初めてかぁ。写真とかいっぱい送ってね!1人でも寂しくないように!

〇〇:お土産も買ってくるよ。あと、美空を家に呼ぶし、寂しくないでしょ。

和:えー、美空かぁ、あ!彩も呼ぼ。

〇〇:おー、楽しめー。

〜〜

賀喜宅


遥香:はぁぁ......もうどうしよう....この気持ちわかんないよ....。


心が痛い。〇〇がさくらと話しているのを見ると心が軋んだようにギリギリと音を立てる。そんな自分が嫌で、でも素直になれなかった。


遥香:あぁ....こんな時に・・が居てくれたらなぁ。

遥香:会いたいなぁ....今の私になんて言ってくれるのかなぁ。

"さっちゃん"

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              To be continued




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