秘密罪 #8
「七華達を殺す」
強い言葉を呟いた。ふざけて言ったのではない。確かに自分の心の底から発した言葉。
〇〇:あ?僕今なんて言った?
信じられなかった。自分が1番遠ざかりたい存在。それは殺人だった。だが〇〇にとっては少し危惧していたことでもあった。自分の奥底に眠っていたもの。
〇〇:殺すって...言ったのか?あり得ない、あり得ない。僕に限ってそんな事.....,
1人でなんとかする。周りに迷惑はかけない。またそんな事を考えていた。以前の〇〇に戻っていた。自分でも自分がわからなくなっていた。そんな中〇〇はある人物に電話をかけた。
〇〇:もしもし、あぁ久しぶりだね。"一ノ瀬"。
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数日前
七華:修也、将人、これが前言ってた優太君だよー。
〇〇(優太):よろしくね。
修也:よろしく。確かにカッコいいな笑。
将人:なになに、七華か麻美と付き合ってんのー?
〇〇(優太):あはは笑 付き合ってないよ笑
七華:私は付き合ってあげてもいいけどねー。
〇〇(優太):そんなことよりさ、皆んなのお父さんはなんの仕事をしてるの?
麻美:そんなことよりって笑 私と七華のお父さんはどっちも△△グループで働いてて。
修也:俺と将人の親父は□□グループだな。なんでそんなこと聞いたんだ?
〇〇(優太):いやちょっと気になってね。(確かそのグループって)
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遥香:ねぇ、禅。
禅:なんだ。
遥香:何言いたいかわかる?
禅:まぁなんとなくは。〇〇のことだろ?
遥香:うん。〇〇君また前みたいになってると思う。あんな奴らと仲良くしてるのも変。
禅:あんな奴らって、遥香友達だっけ。
遥香:いや、〇〇が今仲良くしてるあいつらって、さくらさんをいじめてた人なの。
禅:え?.....あ.....そうか。
遥香:ん?どうしたの?
禅:いや、〇〇が何しようとしてるか大体わかった。
遥香:ほんと!?
禅:うん。〇〇に七華達を紹介してって言われたんだよ。
遥香:え、あ、そうなの? あ...じゃあ、まさか。
禅:うん。どこまでするつもりかわからないけど、〇〇はさくらさんの為に報復しようとしてる事は間違いないね。
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〇〇:よし。計画は完璧。あとは.........
屋上
〇〇:よー。さくら。
さくら:あ、〇〇君。
〇〇:最近いじめは?無くなった?
さくら:もう....助けなくていいって言ったよね。
〇〇:ほんとに?
さくら:えっ?
〇〇:さくらが本当にそうして欲しいなら、やめる。
さくら:........。
〇〇:さくらはさ、僕に里紗さんの話をしてくれたよね。それはなんで?
さくら:そ、それは私がいじめを受け入れてる理由を教えようと・・
〇〇:ほんとは迷ってるんじゃないの?
さくら:え....。
〇〇:里紗さんへの償いは本当にさくらがいじめを受け入れる事なのか、わからなくなってるんじゃないの?
〇〇:里紗さんがさくらに残した最後の言葉。その意味を誰かに教えて欲しかったんじゃないの?
さくら:.......〇〇君に..〇〇君になにがわかるの!?
〇〇:....わからないよ。わからないけど、一緒に悩んで考える事はできる。 僕はさくらの友達だから。
さくら:....本当は...もう...嫌だよ..。普通に....友達と一緒に遊んだり、恋バナしたり、色んな事したい。
さくら:もう...いじめられたくないよぉ...。うわぁああぁぁぁんグスッ
さくらの目からは止め処なく涙が溢れ出していた。〇〇はさくらを抱きしめていた。咄嗟の行動だった。
〇〇:1人でよく頑張ったねさくら。...里紗さんが最後に言ったこと、さくらを助けなきゃ良かったって言った事は本心だと思う。
さくら:うん....そうだと思う。
〇〇:でもね。次に言ったことも本当だと思うんだ。逃げてもいい。投げ出してもいい。でもそれはいじめを受け入れるってことじゃないと思う。
さくら:.......。
〇〇:誰かに絶対に頼る事。そう言ったのは里紗さんが誰にも頼る事が出来なかったからだと思うんだ。
〇〇:里紗さんはたぶん自分が死んだ後も、さくらがいじめられる事がわかっていたんだと思う。だから自分みたいに.....心と体が壊れてしまう前に、誰かに頼って欲しいと思ったんじゃないかな。
さくら:.....グスッ...本当に....頼っても...里紗への償いになるのかな。
〇〇:里紗さんはさくらがいじめを受け入れている事が1番して欲しくなかった事だと思うな。さくらが幸せに生活しているのを見たいと思ってるよ。
さくら:.......〇〇君.........."助けて"。
〇〇:...ありがとう。頼ってくれて。
さくらからのSOS。これによって〇〇がさくらを助ける条件が揃った。目の色が変わった。〇〇の事を知らない者だったら、近付くことなどしない。そんな雰囲気を漂わせていた。
そして〇〇は屋上を後にした。
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遥香:ハァハァ。もう..〇〇君どこにいるのよ!
禅:どこにもいないな。残るは...屋上か。行こう遥香
屋上
そこにいたのは、泣き崩れた動けないさくらがいた。
遥香:さくらさん!?大丈夫?どうしたの?
さくら:...グスッ...大丈夫...じゃないかも。
遥香:.....私達で良かったらさ、何があったか話してくれないかな。
さくら:えっ?
遥香:私、さくらさんを助けたいの。ずっと助けてなんて頼んでないって言葉が引っかかってた。とても悲しい声をしていたから。
さくらは〇〇に言われた言葉と里紗に言われた言葉を思い出していた。誰かを頼る。もう一人で背負うのはやめようと思った。
さくら:....わかった。話すよ。私の過去も。今あったことも。
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遥香:.....許せない。絶対に許せない。
禅:.....あぁ、胸糞悪い。あーー!こんなに腹立ったのは久々だ。七華達ってそんな奴らだったのか。
さくら:それで〇〇君は行っちゃった。たぶん七華達になにかするんだと思う。.....とても恐い雰囲気だった。
遥香:....ねぇ禅。
禅:うん。俺も一緒の事思ってる。
遥香:〇〇君はまだわかってないみたいだね。友達っていうものがなんなのか。
禅:まだ俺らに迷惑をかけないように、とか思ってるんだろ。
遥香:さくらさん。今〇〇君は取り返しのつかないような事をしようとしてるかもしれない。
さくら:えっ!?
遥香:だからさ、私達と一緒に来てくれないかな。〇〇君を止める為に。
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七華:ねぇ....昨日お父さんから、「お前学校でなにしてる」って問いただされたんだけど。
麻美:え!?七華も!?私もなんだけど。
修也:俺もだ....。
将人:俺も....。
七華:.....何にもやってないよね私達。
将人:おう。証拠がねぇからな。
麻美:だ、だよね!証拠ないもんね...。
修也:なんにも知りませーんって言ってれば大丈夫だ。それより優太に体育館倉庫来てって言われて来たけど、なにすんのかな。
将人:わかんねぇー。あいつ、なんか最近調子乗ってるからなぁ。
修也:一回締めるか笑
何が起こるかわからないというのは恐いものだ。七華達にとっての恐怖が一歩一歩近づいているとは知らずに。
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〇〇:ふーっ。着いたな。やるぞ。
ガラガラガラ
修也:おー、優太遅ぇぞ。
〇〇(優太):すまんね。ちょっと君らを殺す準備をしてて。
将人:あ?なんて?
〇〇(優太):え?だから君らを殺す準備をしてたって言ってんだけど。
七華:は?な、何言ってんの?
〇〇(優太):だぁかぁらぁ!てめぇらを殺す準備をしてたって言ってんだよ!
怒号。ただ恐怖を与えるだけの怒号。七華達のような温室育ちの人間には浴びせられた事がないものだった。
〇〇(優太):とりあえず一回気絶させるね。
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修也:ん....んぁ...。
将人:修也...目覚めたか。
七華:ねぇ!この縄ほどきなさいよ!
〇〇(優太):なんで?
麻美:なんでこんな事するの?私達なんかした!?
〇〇(優太):そっくりそのまま返してやろう。お前らにさくらはなんかしたのか?
七華:えっ?
〇〇(優太):いちいち聞き返してんじゃねぇよ。今すぐ殺すぞ。
修也:お前、こんな事してただで済むと思う・・
〇〇(優太):お前らと一緒にすんなよ?俺は証拠を残さない。
将人:ま、まぁ落ち着けって。何が目的だ?
〇〇(優太):こんな状況でも落ち着いてる俺かっこいいとか思ってんのかお前。今からお前らの事を殺すのになぁ!
麻美:はぁ!?殺すって何言ってんの!?
〇〇(優太):俺が今までお前らとなんで仲良くしてたか、わかるか?
〇〇(優太):お前らはなんの疑いもせず俺にペラペラと全て話してくれたよなぁ笑。
修也:な、なんの事だよ。
〇〇(優太):お前らとの会話は全て録音していた。中学の時、里紗さんに何をしたのか。さくらに何をしていたのか。
そう言って〇〇はスマホを取り出し、再生開始ボタンを押した。
「それで里紗泣きながら声我慢してたよね笑 まじ笑っちゃった」
「だからってあんなんで自殺しちゃうなんて、あいつもバカだよね」
「里紗がいなくなったって、さくらがを痛ぶるだけだしねー笑」
〇〇は再生を止めた。
〇〇(優太):はーい。見事な自白ありがとうございました。
修也:そんなん録音して、何する気だよ。
〇〇(優太):まずは理由を聞かせてくれないか?里紗さんとさくらをなぜいじめていたのか。他にも色んな人いじめてきたんだろう?
七華:そ、それは......。
誰も答えられなかった。理由なんてないからだ。ただの暇つぶし。自分が優位だと思いたいが為の自己満。自分が人間的に強いと思いたい。ただそれだけだからだ。
〇〇(優太):理由なんてないよねー。ま、どうであれ君達に未来はないよ。
〇〇(優太):さぁ死ぬ時間だ。
冗談で言っているようには聞こえなかった。〇〇の目は狂っていた。〇〇の中に正義が残っていたかはわからない。
修也:ちょ、ちょっと待ってくれ。話を聞いてくれ。
〇〇(優太):まぁ俺も鬼じゃない。最後に話くらい聞いてやる。
修也:なんでも...なんでもするから!許してくれ。本当に悪かったと思ってる!
将人:頼む!ほんとになんでもするから!
〇〇(優太):じゃあさ、選んでよ。
麻美:なにを、選べばいいの...?
〇〇:社会的に死ぬか。肉体的に死ぬか。今から5分やる選べ。
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遥香:ハァハァ、〇〇君ほんとにどこにいるの!?
禅:もう学校中探したぞ。ハァハァ。
さくら:いや、まだ探してない場所がある。体育館まだ探してない。
遥香:体育館?なんでわざわざそんな遠くに?
さくら:私と里紗が良くいじめられていたのは、体育館だった。同じ事をするつもりなのかも。
禅:行こう!手遅れになる前に!
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〇〇:さぁ、時間だ。選べ。
修也:....ちょっと聞かせてくれないか。社会的に死ぬって一体どうするつもりなんだ。
〇〇:七華さんと麻美さんの夢は、ファッション関係だったね?修也君と将人君の夢は、俳優だっけ。
〇〇:まぁ将来何になろうが関係ないけど、君達が何か成し遂げようとする時、俺はこの録音を世にさらすよ。実名と共にね。
〇〇:あと酒とタバコの使用してる動画も一緒に晒そうかな。
将人:....下衆が。
〇〇:君がそれを言うか笑 あ、あとさ君達昨日お父さんから何か言われなかった?
七華:...あれもあんたの仕業なの?
〇〇:そうだよ。△△グループと□□グループってどっちも、一ノ瀬グループの配下だよね。
〇〇:僕ね、一ノ瀬グループと関わりがあるんだよ。もうすぐ君達のお父さんはクビになるんじゃないかな。
麻美:そ、そんなことあるわけない!
〇〇:一ノ瀬グループはね、ほんの少しでも不穏分子があると容赦なく切り離すんだよ。だから君達の家庭は終わり!
修也:そんな事やって許されると・・
〇〇(優太):お前らが里紗さんのお父さんを貶めたのと同じだろうが!
〇〇(優太):自分を棚に上げてんじゃねぇぞ!やっぱりお前らは死ぬべきだ。覚悟しろ。
七華:....ご、ごめんなさい!なんでもしますから!命だけは!
麻美:命だけは許してください!
やっと七華達はことの重大さを理解し、震えていた。
修也:お、俺もさくらに謝るから!頼む!命だけは!
将人:お、お願いします。命だけは、どうか。
"命だけは助けてください"という言葉は〇〇の頭に強く響いた。遠い記憶。無意識な強く封じていた記憶。〇〇はその場にうずくまった。
〇〇:う...あ....あれ?ぐぁぁあ!うぐぁぁ!
修也:お、おい!どうした?
将人:おいバカ!いいから今のうちに逃げるぞ!早く縄外せ!
七華と麻美は恐怖で足が動かなかった。〇〇への恐怖で心が支配されていた。
七華:ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
麻美:もうしません。許してください。
将人:いいから!とりあえずここ出るぞ!
〇〇:ぐぁぁ、はぁ、はぁ。いいか。今後一切人に危害を加えないと誓え。さもなくば証拠と共に晒す。
バタンッ
〇〇の言葉を聞いた後、逃げるように七華達は体育館倉庫を後にした。
〇〇:はぁ、あ、あれ?....僕..何をしようとしてたんだっけ。
封じていた記憶のフラッシュバックで〇〇の意識は曖昧になっていた。
〇〇:た、確かさくらを救おうとして....色々証拠を集めて.....。
〇〇:.....二度とさくらに手を出すなって証拠と共に脅そうとしたはず.........んぁ?な、なにこれ。
〇〇が違和感を感じ、制服のポケットの中を探った。その中には信じられない物が入っていた。
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遥香:はぁ、もうすぐ体育館だ!
遥香達が体育館へ向かう途中、酷く怯えた様子で走ってくる七華達とすれ違った。
遥香:あ、あんた達、何してるの!
七華:はぁ、はぁ、さ、さくら!ごめんなさい!ごめんなさい!もうしません!許してください!
麻美:ごめんなさい!お願いします、許してください!
さくら:え....?あ...え...?
修也:いいから!早く行くぞ!
七華達は何か恐ろしい物から逃げるように、走り方もぐちゃぐちゃなまま去っていった。
遥香:禅!さくらさん!早く行こう!
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ガラガラガラッ
遥香:着いた!ハァハァ、〇〇くーん!
禅:体育館にいねぇぞ。どこにいるんだ一体。
さくら:.....倉庫だ。体育館倉庫。
ガラガラガラッ
禅:〇〇!いるか!
遥香:〇〇君!良かった!こんなところ....に。
〇〇:え...あぁ...来たんだね。
さくら:どうして...泣いているの?
〇〇は泣いていた。遥香達と友達になった日の涙とはまるっきり違う。今の〇〇からは生気が感じられなかった。
遥香:なにが...あったの?
〇〇:僕が...聞きたいよ。僕は....何をしようとしてたんだ?
さくら:〇〇君は私を助けようとしてくれた。
〇〇:それは...わかってる。じゃあなんで?なんで、こんなものが僕のポケット入ってるんだ?
〇〇のポケットから出てきたものは、小さな懐中時計だった。
禅:なんだそれ、時計か?
〇〇:これは.....父のだ。父の懐中時計。今までずっと机の中にしまっていた。
遥香:なんで....今...持っているの?
〇〇:昔を思い出したり、過去の戒めとして時々見ていたんだ....。
〇〇:あ、あぁ....なんだ....そういうことか。
さくら:...どうしたの?
〇〇:僕は結局..あの人の血を引いているんだ。僕は..僕は今...人を殺そうとしたんだね。
そう言った〇〇は懐中時計が出てきた方とは逆のポケットを探った。
そこから出てきたものは、古く年季の入ったカッターナイフだった。
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To be continued
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