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恐怖と愛情は表裏一体


〇〇:さっみぃ.....


とある冬の日。僕は一人寂しく登校していた。


〇〇:彼女と手繋いで登校とかしたら、寒くないんだろうな....


この世に生を受けて、17年。今まで彼女ができたことがない。珍しいことではないと思うが、欲しいと思うのは当然である。

そんな気持ちが強くなるほど、より彼女ができなくなるのは、もはや自然の摂理だ。

仕方なく冷え切った手をポケットに入れながら歩く。


〇〇:ん?


ポケットの中に違和感を感じた。


〇〇:これは....手袋?


ポケットの中に入っていたのは、〇〇の手のサイズぴったりの手袋だった。

〜〜

学校


△△:おはよー、〇〇

〇〇:ん、おはよ。

△△:あれ、お前手袋とか付けてたっけ。

〇〇:あぁ...今日からつけ始めた。

△△:そか。最近寒いもんなぁ。 そういやあの日は近いぞ〇〇。

〇〇:あの日?

△△:しらばっくれるな。クリスマスだよ!クリスマス!

〇〇:あ、クリスマスね。彼女がいないお前とは無縁のイベントだな。

△△:チッチッチ、これが違うんだなぁ。

〇〇:え?

△△:えー、ワタクシ、昨日彼女できました。

〇〇:............まじ?

△△:大マジ。見てこれ。


△△はスマホの画面を見せつけてきた。そこには女性と頬を寄せて嬉しそうな顔でピースしている△△が映し出されていた。


〇〇:....まじだ。

△△:はっはぁ! すまないなぁ!俺は一歩リードしてしまった様だな!

△△:まぁ、〇〇は一人寂しくクリスマスを過ごしたまえよ。

〇〇:....い、いるし!

△△:ん?

〇〇:俺だって彼女いるし!

△△:えぇ!?まじ!?いつ!?

〇〇:ちょ、ちょっと前に....


ガタンッ


△△:うわっ! びっくりした...


教室の後ろの方で机が跳ねた。座っているのは、クラスのマドンナ、いや学校のマドンナである川崎桜さんだ。


〇〇:どうしたんだろ....

△△:ま、いいや。それより写真見してよ!

〇〇え?.....と、撮ってないからまた今度見せるよ。

△△:えー....じゃクリスマスの時の撮って送れよ?

〇〇:あ、あたぼうよ。


見栄を張ってしまった。彼女なんていないのに、つい嘘をついた。

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昼休み


〇〇:はぁ...

△△:どした?ため息なんかついて。

〇〇:...なんでもないよ。

△△:そか。じゃ俺は彼女と一緒に弁当食べてきまーす!

〇〇:......いってら。


△△はウキウキで去って行った。


〇〇:はぁ.....あ、箸持ってくんの忘れた。


〇〇の親は共働きで朝早く仕事に行き、夜遅くに帰ってくる。その為、身の回りの事や料理は自分で行っていた。

今朝、箸を用意するのを忘れていた事を思い出した。

もしかしたら箸が入っているという一縷の望みをかけて弁当の袋を開ける。


〇〇:あれ?箸....入ってる...


一縷の望みが叶った。だが一つ不可解な点がある。それは見たことが無い箸が入っているということだった。

戸惑っていると後ろの方から声が聞こえた。


□□:あれ?桜、お箸忘れたの?

桜:え? う、うん! 今日忘れちゃった。

□□:もー、ちゃんと持ってこないとダメだよ?

桜:き、気をつけるね?


川崎さんも忘れたんだな。なんか遠い人だと思っていたが、親近感が湧く。

箸が入っている事に少し訝しむ気持ちを覚えたが、あまり気にせず弁当を頬張った。

〜〜

〜〜

放課後


サッカー部に所属している〇〇は、放課後、部活に勤しむ。冬の外部活は寒さと、運動によっての発汗で不思議な感覚になる。当然部室の中も妙な匂いで包まれる。

冬の匂いは、好きだった。

〜〜

監督:はい。今日の部活終了!

〇〇:え?今日終わんの早くないすか?

監督:今日はちょっと用事あってな。お前らも、もう上がっていいぞ。

△△:よっしゃあ!

監督:喜びすぎだバカ。

〜〜

部室


〇〇:なぁ、△△、この後飯食いに行かね?


部活が早く終わった日や、料理をするのが面倒くさい日は、△△と飯を食ってから帰るのがルーティンだった。

しかも、今日は両親どちらとも出張で家に一人。できるだけ、誰かと過ごしていたかった。


△△:.....すまないな、〇〇よ。俺は今日彼女と放課後デートなんだ!

〇〇:あぁ!?

△△:さらばだ! お前も彼女とデートでもしろよぉ〜


再びウキウキで去って行った。


〇〇:まじかぁ...仕方ない。家でなんか適当に作るか..


生憎、△△以外友達はいない。その友達に彼女ができたとなると、付き合いは減る。


〇〇:はぁ...急に彼女出来たりしないかなぁ...

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外はもう暗かった。一人、薄く積もった雪に足跡を残しながら帰路に着く。

いつかは隣に足跡をつけながら歩いてくれる人がいたら嬉しいと思ったり。

マンションの階段を登り、自分の部屋の前まで行く。いつも、誰もこんな家にくる人はいないと思い、鍵は閉めていなかった。


ガチャ


〇〇:ただい....ま?


靴が一足ある。恐らく女性物。見たことがない靴だった。

母が帰ってきている筈はない。出張なのはわかっている。ならばこれは誰の靴だ。

〇〇は警戒しながら家の中に入る。


〇〇:.......リビングには....誰もいないか..


少しホッとする。


意を決して自分の部屋の前へ。誰もいない事を願い、戸を開けた。


ガチャ


〇〇:えっ...

桜:すーっ....すーっ...んぅ...えっ!?

扉を開けた先には信じられない光景が広がっていた。

クラスのマドンナである川崎さんが、自分のベッドで寝ていた。


バタンッ


扉を勢いよく閉める。


〇〇:......ん?....どういう事だ?


まだ自分がおかしいと思ってしまう。


〇〇:いやいや笑 おかしいおかしい。


自分に見間違いだと言い聞かせ、いつも通りを装って扉を再び開ける。


ガチャ


桜:あっ!待っ・・


バタンッ


いた。めっちゃいた。

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〇〇:とりあえず...コーヒーでいい?

桜:あ...うん。


キッチンへ行き、コーヒーを入れる。手が震えてあまり上手く注げない。

なんで今俺はコーヒーを淹れているんだろうという疑問を持ちつつ、川崎さんがいるテーブルへ向かう。


〇〇:....はい。どうぞ。

桜:...ありがとう。


川崎さんは両手でカップを持ちながらコーヒーを飲む。正直めちゃくちゃ可愛い。可愛いという感情となんで自分の家にいるんだという感情が同居している。


〇〇:........んで、なんで俺の家にいるの?

桜:ブフッ....ゴホゴホ...

〇〇:あぁ!ごめんごめん!


川崎さんは吹き出してしまった。布巾で拭いてあげると、川崎さんは顔を赤らめていた。

〜〜

〇〇:......んで....そろそろ...理由を...

桜:あ、いや....その....

〇〇:間違えた...とかじゃないよね...

桜:間違えたとかじゃなくて...明確に入ったというか...むしろ毎日入ってるというかモゴモゴ//


なにか恐ろしい文言が聞こえたが、今はスルーしておく。


〇〇:えっと....こういう時どうすればいいのかな...

桜:....なんで今日帰ってくるの早かったの?


予想外の質問だった。


〇〇:え?あー、監督が今日は早めに終わりって。

桜:△△君とご飯行かなかったの?

〇〇:...うん。彼女とデート行くって...

桜:........〇〇君は彼女とデート行かなかったの?

〇〇:彼女?そんなんいないけど...

桜:えっ!? だ、だって朝彼女出来たって...

〇〇:あー笑 聞いてたんだ。あれ嘘だよ笑 見栄張っただけ、恥ずかしいな笑

桜:.....なんだぁ...じゃあまだ私のものだボソッ


雰囲気が変わった。それと何故俺が△△と飯に行っている事を知っているんだろう。それに...なんでいつも俺が帰ってくる時間を把握しているんだろう。

点と点が線として繋がる。少しカマをかけてみた。


〇〇:まぁ、違うクラスに好きな人いるんだけどね。

桜:えっ!? 誰!? 名前は!?


身を乗り出して聞いてきた。


〇〇:いや...嘘だけど...

桜:え?.....むぅ...


可愛い。そんな事を考えてる場合じゃない。ほぼ確定している事を確定させなければならない。


〇〇:....川崎さん...僕のストーカーしてる?

桜:ふぇえ!?//

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〇〇:はい....カレーできたよ。

桜:美味しそう! いただきます!

〇〇:....どうぞ。


なぜ俺が今ストーカーにカレーを振る舞っているかというと.....

〜〜

桜:ごめんなさい! ストーカーしてました!

〇〇:そんなハッキリ....


すぐ白状した。


〇〇:.....今日僕のポケットに入ってた手袋は?

桜:昨日家に入った時に入れました。あったかかった?

〇〇:いや...まぁ..。昼飯の箸は?

桜:私の。間接キスしちゃった//

〇〇:.....どうやって持ってないってわかったの?

桜:朝は〇〇君の家に入って、枕に顔埋めてから行くから。その時忘れてるの気づいた。


あぁ、この子やばい子だ。しかも段々開き直ってきてる。

ちょっとだけ嬉しいと思ったのは、きっと川崎さんが可愛いからだろう。


〇〇:それで....なんでストーカーなんてしてるの?

桜:そ、それは// 〇〇君の事が...好きだから//


何故ここで恥ずかしがるんだ。今まであり得ない事を言っていたのに。


〇〇:いや....その...ありがたいんだけど...

桜:ねぇ、付き合ってくれるよね! ね!

〇〇:その...まだちょっと恐いっていうか...川崎さんの事よく知らないし...

桜:むぅ.....桜って呼んで?

〇〇:え?

桜:桜って呼んでくれないとやだ...

〇〇:えぇ......さ、桜?

桜:えへへぇ// 桜って呼んでくれたぁ//


感情の起伏がおかしくないかこの子。


桜:あ、私今日泊まるから。

〇〇:へ?

桜:もうお母さんに連絡したし。

〇〇:い、いやいや、明日も学校だし、そもそも今日初めて話したし...

桜:大丈夫だよ。家隣だから。

〇〇:いや...そういう問題じゃ、、、

〜〜

とまぁ、こんな具合である。


桜:パクッ...ん!美味しい!〇〇君料理上手いんだね!

〇〇:まぁ...毎日作ってるからね。

桜:前に残り物食べた時も美味しかったしなぁ


本日何回目かわからない程の恐怖。


〇〇:......なんで桜は俺の事好きになったの?


気になっていたことを聞いてみた。


桜:それは...なんでだろ。最初は同じマンションの人だ!ってクラスで見つけた時思って、気づいたら目で追ってて、そしたら気づいたら〇〇君の部屋入ってて....

〇〇:話が飛びすぎ....

桜:とにかく、〇〇君の事が大好き。えへへ//


本日何回目かわからない程の可愛い。


桜:〇〇君は...私のこと...嫌い?


その上目遣いはずるい。


〇〇:えぁ.....まぁ....ちょっとは?//

桜:えへへぇ// ちょっと好きになってくれたぁ//


完全に溶けきっている。

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風呂を済ませ就寝の時間。風呂の時も、なんとか入ってこようとして大変だった。なんとか断ったが、体を洗うごとに、どの順番で体を洗っているかを言い当ててくるのは怖かった。


〇〇:俺ソファで寝るから。ベッドで寝ていいよ。

桜:何言ってるの?一緒にベッドで寝るんだよ?

〇〇:いや...さすがにそれは...

桜:いいから、ほら!


桜は〇〇の腕を掴み、ベッドに放り投げた。尋常じゃない力だった。

〇〇が起き上がってベッドから出ようとするが、逃さず、桜はベッドに潜り込んで抱きしめた。


桜:えへへ// 〇〇君の匂いでいっぱい//

〇〇:さすがにこれは//

桜:照れてるね//

〇〇:誰だって照れるよこれは//

桜:.......〇〇君、よく頑張ったね。

〇〇:え?


桜は〇〇の頭を優しく撫でて、強く〇〇を抱きしめた。


桜:お父さんもお母さんも共働きでさ、いつも家で一人。学校でも△△君以外と話してるの見た事ないし。

〇〇:........。

桜:でも、〇〇君が優しいの桜知ってるよ。道で困ってる人助けてたり、係の仕事、他の人の分までやってたり。

桜:私、そういう所好きだよ。.....だからさ、私には甘えていいんだよ?

桜:私はなんでも受け止めてあげるから。


もう僕の心は溶けきっていた。こんな短時間で溶けきるとは思わなかったが、恐怖の心が全て、愛情へ変わっていった。

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カーテンの間から差し込む光で目を覚ます。気づいたら眠ってしまっていたらしい。

目を開けると、女神の様な微笑みで桜がこっちを見ていた。


桜:えへへ// おはよ。よく眠れた?

〇〇:うん。よく眠れた。

桜:これからはずっと一緒に寝ようね?もう、〇〇君は、私のモノなんだから。

〇〇:え、あ、.....うん//


結論 
可愛いストーカーは、許せる!

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                  Finish







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