学園祭で再会した幼馴染は、大人っぽくて。
〇〇:.....レポート終わった?
△△:え、俺お前に見せてもらおうと思ってたんだけど....
〇〇:俺もやってねぇよ....あー...めんどくせ。
今年の春。俺は大学に進学した。割と偏差値が高い大学に入学し、辛い受験生活を乗り越え、後は楽しいキャンパスライフを送れる。そう思っていた。
△△:あー....彼女欲しい...
〇〇:それなー....はぁ....大学生って楽しいんじゃないのかよー....
誰もいない講義室で天を仰ぐ。△△とは高校から一緒で大学の学部も同じだ。それゆえに行動を共にしているのだが、話すことと言えばレポートと彼女欲しいの二択だ。
△△:いいじゃん。お前には和ちゃんいるんだし。
〇〇:......最近話してねぇよ。
△△:えぇ!? なんで!?
〇〇:.....大学も違うし? 大学生にもなりゃ話さないもんだろ。
△△:そうかなぁ....
井上和。俺の幼馴染。幼稚園から高校までずっと一緒だった。小学校の頃から勉強は俺が教えてきた。大学は俺が行きたい大学に和が入りたい学部がなかった為、別々のとこにいった。
周囲からは付き合ってるだの、夫婦だの散々言われてきたが、俺達はそういう雰囲気にはならなかった。
△△:でもお前、和ちゃんの事好きなんじゃねぇの?
〇〇:......好きだけど、もう無理だろ。あいつ可愛いから大学で彼氏とか出来てるだろうし。
△△:LINEでも話してねぇのか!?
〇〇:....高校卒業してから話してない。
△△:まぁじ?
そう。俺は井上和のことが好きだ。ちょっとうざいけど、優しいし、素でいられる。そんな和の事が好きだったが、もう無理だろう。
インスタのストーリーで不意に見てしまった。酷く大人びて綺麗になっている和を。逆にあれで彼氏がいなかったら、その大学の男子の目を疑いたいくらいだ。
〇〇:だから俺は新しい恋を探すんだよ....
△△:そうかぁ....
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女1:もうすぐ学園祭だねー。
女2:うちのサークル何やるんだっけ。
女1:出店みたいなの出すんじゃないっけ。
女2:ま、和がいるから売上は爆増でしょ!
和:私そんな力ないよ?笑
女1:何言ってんのー? この大学で一番可愛いの和だよ? これで彼氏いないの不思議だわー...
彼氏.....作ろうと思ったことはなかった。私にはずっと好きな人がいたから。でも、その人とは大学で別々になってしまった。その人は優しくて、かっこいいから、たぶん彼女もいるんだろう。
女1:・・和ー!聞いてる?
和:ふぇ!? あ、ごめん。聞いてなかった笑
女2:大丈夫ー?笑 だから、和は彼氏いた事あるの?って話してたの。
和:.....ないなぁ...
女1:ほんとに!? 私達は大学から一緒だけど...高校とかでもモテなかったの!?
和:んー....告白とかは何回か...
女2:それでも付き合わなかったと....あ!もしかして好きな人いたんだ!
和:べ、べべべ、別にそういうんじゃないから!//
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時は過ぎて、学園祭の時期。時期といっても、大学毎にやる時期はバラバラだ。大学の学園祭というのは、学校内外問わず様々な人が訪れる。
△△:なぁなぁ、学園祭行かね?
〇〇:あー?どこの大学の?
△△:まぁそれはいいじゃん。〇〇車出してよ。
〇〇:えぇ!?なんでだよ、電車で行けばいいじゃん。
△△:いいじゃんか、新しい恋探すんだろ?車で行ってさ、お持ち帰りでもしようぜ?
〇〇:えぇ......
仲間内で免許を持っているのは、〇〇だけ。足にされることも多かった。
〇〇:.....学食奢りな。で、いつ?
△△:今日。
〇〇:今日!?
〜〜
〜〜
気の乗らないままハンドルを握る。
△△:えーっと....そこの道を右。
〇〇:.....そろそろ教えてくんね?これどこの大学向かってんの?
△△:それは無理だなぁ笑 教えたら行かないっていうもん。
もう小一時間程運転している。△△のガイドで運転。ただそれだけ。
△△:あ、そこ曲がったら着くぞ。近くの駐車場止めよ。
〇〇:あいよ。
近くの駐車場に止め、歩いて目的地の大学へ向かう。結構人が多くなってきた。
校門の前まで歩く。不意に校門に刻まれている文字が目に入った。
□□大学
〇〇:□□大学って.......おい、△△....騙したな。
△△:え、え〜? な、なんのことかなぁ?
□□大学とは、まさに井上和が通っている大学だった。
〇〇:...........
△△:......そんな怒んなって!一目和ちゃん見てさ、やっぱ諦めようって思ったならそれでいいじゃん!な!
〇〇:....はぁ...わかったよ。
〜〜
〜〜
和:いらっしゃいませ〜、どうですか・・うわっ!
気づけば沢山の人だかり。
女1:やっぱ和がいると売れるねぇ笑
女2:看板娘〜
和:もう....やめてよ笑
こんな人だかりの中にいるかもしれない。いつもそんな淡い期待を持ちながら見渡す。まぁ、連絡も取っていないし、来るわけがないのだが。
「いいからいいから!一回行こうぜ!絶対あそこに和ちゃんいるから!」
「えー.....はぁ....一回会ったら帰るからな?」
和:ん!
女1:どした?
作業をする手が止まった。色んな声が入り乱れる学園祭の中で、聞き馴染みがある声が二つ。確かに聞こえた気がした。
女2:あ、いらっしゃいませー。
和:あ.....
〇〇:あー.....よ、よう。久しぶり。
待ち望んでいた人が目の前にいた。好きな人が目の前にいた。
〇〇:き、綺麗に....なったな。
首の後ろをさすりながら目を合わせない。彼が照れた時によくやる癖だ。高校の時はよく揶揄っていた。
女1:なになにー?和と知り合い?
和:................
〇〇:まぁ、幼馴染っす。
女2:えー!イケメンじゃん!こんな幼馴染いるんだったら紹介してよ〜.........和?
和はいわゆる放心状態。ただ顔だけは真っ赤だった。
〜〜
和:はっ!
女1:あ、正気に戻った。
どうやら私は放心状態だったらしい。女1と女2に挟まれて私は座っていた。
和:ま、〇〇は.....
女1:あ!あの人〇〇君って言うんだね。
和:あ.....//
女2:.....好きなんでしょ、〇〇君の事。
和:いやぁ...えーっと//
女1:しばらく大学内ぶらぶらするっていってたよ。シフト今日はもう終わりだし行って来な。
女2:ここで逃したらもう無いよ〜。〇〇君イケメンだったし。
和:.......あ、ありがとう!
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〇〇:じゃ、そろそろ帰るか。
△△:え....良いの?和ちゃんと話さなくて。
〇〇:.....いいんだよ。諦めもついた。
実際に見たら、綺麗になり過ぎていた。元から綺麗だったが、異常とも呼べるほどに。恐らく誰か好きな男の為に自分磨きを頑張ったのだろう。まだ子どもで、自分と同じだと思っていた幼馴染は、大人っぽくなっていて、遠くに行ってしまった。
〇〇:おら、車取りに行くぞー。
??:ま、待って!
△△:ん?あ......
〇〇:んー?..........和...
和:も、もう帰るの?
引き止めたのは和だった。、
△△:お、おいら用事思い出した!タクシー拾って帰る!じゃあなー!!
〇〇:あ!おい!
△△は走り去ってしまった。
〇〇:....えーっと...何か用?
何いってんだ。俺。こんな事言うつもりじゃなかったのに。
和:こ、この後!暇!?
近くにいるのに大きな声で問いかけてくる。
〇〇:ま、まぁ...暇..だけど。
和:私の家!.....来ない?
〜〜
〜〜
ブゥーーーン
〇〇:...............
和:...............
助手席に和を乗せて運転している。何がどうなってこうなったかはあまり覚えていない。
〇〇:だ、大学には電車で行ってんの?
和:うん。電車からのバス。.....〇〇は....免許取ってたんだね。
〇〇:あー....うん。バイトして金貯めて車買った。安っすいやつだけどな笑
和:......運転してるの....カッコいいね...
〇〇:いや....んなこと...ねぇよ//
信号待ち。自然と首の後ろに手がいく。
和:....ぷっ笑 やっぱり照れたら首の後ろに手やる癖治ってないんだね笑
〇〇:なっ// う、うっせぇなぁ....
なんだ。意外と話せんじゃん。
〜〜
〇〇:ここ?
和:うん。ここ。
〇〇を自分が住んでいるアパートに招待する。
和:......あれ?
〇〇:ん?
よく考えたら、男の人を家に入れるの...初めてだ。あれ、なんだろう。緊張して来た。お互いの実家には何度も行き来してたのに。
和:ま、まぁ、入って//
ガチャ
〇〇:お邪魔しまーす....結構綺麗にしてんだな。実家の部屋は汚かったのに笑
和:うるさいなぁ笑 とりあえずそこ座ってて。コーヒーかなんか淹れるから。
〇〇:あいよ。
和:え!?コーヒー飲めないよね?
〇〇:飲めるようになったんだよ。
和:むー....なんかムカつく笑
〇〇:うっせ笑
なんだ、普通に話せるじゃん。また昔みたいに話せてるじゃん!
和はコーヒーを淹れながら笑みを溢していた。
あれ、でも......幼馴染だって思ってたから、付き合えなかったんじゃないのか。このままでいいのか?
和:......はい、コーヒー。
〇〇:ん、ありがとう。ズズッ.....ん、にがっ!
和:いひひ笑
〇〇:おま....これ濃くしたろ!
和:せーかい笑
〇〇:もー.....
和:........ね、ねぇ、〇〇。
〇〇:ん?
和:〇〇はさ....か、彼女とかいるの?
〇〇:ぶっ....なんだよ急に...
和:いいじゃん!気になったんだから!
〇〇は首の後ろに手を回して節目がちになった。
〇〇:........いねぇよ。好きな人はいるけど。
和:あ....そうなの。
彼女がいないという事実と、好きな人がいるという事実が心の中で混ざる。
〜〜
心臓が跳ねて仕方ない。弾け飛びそうだ。
〇〇:(あー....これ言うべきか?どうなんだ?)
体には汗がじんわりと滲む。
〇〇:和は....彼氏いんのかよ。
和:わ、私!? 私は.....いないよ。
え、いないの? なんで?なんでいないの?こんなに可愛いのに。
〇〇:あ、そう。
和:....好きな人は...いるけど...
終わった。まぁ、そうだよな。予感はしてた。....もうこうなったら思いだけ伝えてさっさと帰ろう。
〇〇:....あのさぁ、俺好きな人いるって言ったけどさ・・
和:それ以上言わないで.....グスッ
和は目に涙を溜めていた。あれ....なんかまずいこと言ったか?どうしよう。
ギュッ
〇〇:あ.....
和:ふぇ......
気づいたら抱きしめていた。自分の胸の中で大きな目がこちらを見る。
〇〇:.........好き。好きです。和のことが。
和:え......
〇〇:ずっと好きだった。伝えられなかったけど。和に好きな人がいるのはわかってるし、でも・・んっ!
今度は強く抱きしめられる。こちらを見ていた目は、自分の胸に押し付けられている。
和:わらひぃもうき!
〇〇:え?
自分の胸だけが震えた。
〇〇:なんて?
和:ぷはっ......わ、私も好き//
〇〇:は?
和:だから....私の好きな人は〇〇だってこと!
〇〇:.......まじ?
和:.....まじ。
〇〇:........じゃ、付き合う?
和:......ボフッ うゆ
〇〇:聞こえないって笑
和:うんって言ったの///
〇〇:あ、照れてる。
和:んーー!!// 生意気だ//
たった一歩だった。幼馴染とは近いようで遠い。一枚の壁に隔てられている。その壁を破れれば、なんてことはないんだ。
和:これからよろしくね?〇〇?
〇〇:あ.....うん//
和:あー!またその癖出てる笑
〇〇:うっさい//
俺はこれから何度首をさすることになるんだろうか。
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Finish
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