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秘密罪 #7


さくら:ちょっと待ってよー!里紗!

里紗:ほらさく。置いてくよー!


中学2年生の夏の蒸し暑い日。どんなに暑くても学校には行かなければならない。

里紗はさくらの唯一の友達。中学1年生で出会い、友達のいないさくらに良く話しかけてくれた。

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△△:里紗ちゃん!おはよー!

里紗:おはよー!

□□:里紗ちゃん。課題やった?

里紗:やったよー。教えようか?


見ての通り里紗は社交的だった。誰とでも分け隔てなく接する。いわゆる本当に性格が良い人。でも本当は少し暗かったり、アニメが好きだったり、そんな点でさくらとは素で話すようになった。


さくら:.......。

里紗:さく?どしたの?

さくら:ううん!なんでもないよ!

里紗:ほら、1時限目移動教室だから行くよ!

さくら:うん!


この頃からさくらはいじめられていた。物静かで抵抗も少なかったからかもしれない。里紗だけが心の拠り所だった。

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七華:さくらちゃーん、放課後来てねー。

さくら:.......。

麻美:は?返事は?

さくら:.....わかった。

七華:じゃ、体育館裏ねー。


さくらが考えていた事は、里紗に迷惑はかけない。ただそれだけだった。

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里紗:よし!今日も学校終わった!さくー帰ろー。

さくら:....ごめん。ちょっと今日は用事あって。

里紗:あ、そうなの?じゃ先帰ってるね。

さくら:あのさ、里紗はどうして私と友達でいてくれるの?

里紗:なにそれ笑、んーなんでって言われてもなぁ。さくといると楽しいし、さくといると本当の自分でいれる気がするんだ。

さくら:...そっか。ありがとう!私用事行ってくるね。

里紗:はーい。(なんか様子変だな)


さくらは里紗と友達でいれることがなにより嬉しかった。それだけで満たされていた。

だがそれと裏腹にいじめは益々エスカレートしていった。

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七華:キャハハ!次は耐えれるかな笑

麻美:じゃ次はテニスボールね!


ボコッ


さくら:痛ッ....もうやめてよボソッ

七華:えー?今なんて言ったの?


七華はさくらの髪を掴み、無理矢理顔を上げさせた。

さくら:何も.....言ってないです....。

七華:そうだよね。なにも言ってないよね。じゃ次はバスケットボールかなー。

将人:なにしてんのー。

麻美:あ、将人来てたの。

修也:俺もいるよー。なにしてんの。

七華:見ての通り可愛がってんの。修也達もやる?

修也:おー、俺らも丁度腹立ってたからストレス解消でいいよな!

麻美:なんかあったの?

将人:担任に呼び出された。あーまじで腹立つ。

七華:じゃほら、こいつ貸してあげる。

将人:おー!じゃ、お言葉に甘えて。


その後の事はあまり覚えていない。ただただ最後の一線だけを守る。その事だけに集中していた。だがそれ以外は一通り行為に及んだ。

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里紗:よし!今日も昼休みだ!さく!屋上でご飯食べよー。

さくら:いいよ。一緒に行こ。


屋上


里紗:さくの家の卵焼き美味しい!

さくら:里紗の家はお父さんが作ってるんだっけ。

里紗:そうだよ。片親だからお仕事とか、料理とか頑張ってくれてる。

さくら:良いお父さんだね。

里紗:自慢のお父さんだよー。ん?あれ?さくら、その痣なに?

さくら:あ!こ、これはなんでもなくて...。

さくらは袖を引っ張り、痣を慌てて隠そうとした。


里紗:嘘でしょ。ちゃんと言って。

さくら:........。

里紗:友達でしょ?大丈夫、さくの事は私が守るから。

さくら:.....わかった。


今までの事を全て話した。里紗には言わないと決めていたが、それ以上にさくらの体も心も限界だった。

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里紗:許せない。私がなんとかする。

さくら:ダメ!次は里紗が狙われちゃう!

里紗:私は大丈夫だから。


里紗の行動力は凄まじかった。先生にも報告し、すぐ効果は現れた。七華達は補導され、さくらへのいじめも無くなっていった。

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七華:さくら、まじムカつくんですけど。

麻美:それな、すぐチクリやがって。

修也:里紗って奴も絡んでるらしいぞ。

七華:まじムカつく!なんか良い方法ないかなぁー。

将人:里紗って確か片親だったよね。

麻美:確かそうだったはず。

将人:あはは笑 良い方法思いついちゃった笑

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それから数日が経った。里紗とさくらは報復も覚悟していたが、不気味なほどに七華達はなにもしてこなかった。

だかそんな日々も長くは続かなかった。


里紗:ただいまー。今日はお父さん早く帰るって言ってたな。ご飯作っといてあげよ。


1時間、2時間経っても里紗の父は帰ってくる事は無かった。里紗も待ちくたびれた時、インターホンが鳴った。


ピンポーン


里紗:ん?お父さん?なんでインターホン鳴らしてるんだろ。 はーい。お父さんお帰りなさ・・

警察:夜分遅くすいません。

里紗:け、警察の方ですか?

警察:あなたは里紗さんですね。

里紗:そ、そうですけど。

警察:あなたのお父さんね、電車で痴漢したんですよ。とりあえず署まで来てもらえるかな。

里紗:え.....?

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女生徒1:ねぇねぇ聞いた?里紗ちゃんのお父さん、痴漢したらしいよ笑

女生徒:聞いた聞いた!仕事クビになったらしいよ笑


里紗の父親が痴漢をしたという噂は瞬く間に広まった。それ以降、里紗には誰も関わらなくなっていった。さくらを除いて。


さくら:里紗....大丈夫?

里紗:うん。。大丈夫!さくらは心配しないで!

さくら:........。


里紗は明らかに無理をしていた。父の仕事はクビになり、前科がついたことで再就職も難しかった。生活の目処はついていなかった。


七華:うまくいったね笑

麻美:私達が、あいつの父親の前に立って「この人痴漢でーす!」って言うだけで捕まっちゃうなんてね笑

七華:将人てんさーい。

将人:だろー?

修也:最後の仕上げがまだだろ笑

麻美:そうだった、そうだった。じゃ今日の放課後体育館倉庫集合ね。

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さくら:里紗ー。一緒に帰ろ。

里紗:ごめん今日はちょっと用事あって。

さくら:........用事って?なに?

里紗:..........。

さくら:七華達関係なんだね。 私も着いていく。


里紗:え!?ダメだよ!

さくら:私達は一緒でしょ?里紗が助けてくれたから、私は生きていられるの。


正直、さくらの足は震えていた。声も震え、頼りある姿には見えなかった。だが里紗にとって、それは勇気になり代わった。

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七華:おっそーい。早く来いよ。

里紗、さくら:............。

七華:ま、いいや。そういえば里紗ちゃんのお父さんって変態なんだってねー笑

里紗:........ッ!

麻美:電車で痴漢とかありえなーい。てか、あの時の顔めっちゃ面白かった笑

里紗:(あの時の顔...?まさか)

里紗:お父さんを痴漢に仕立て上げたのは、あなた達なのね?

麻美:なにその言い方怖ーい。だって触られたもー
ん。

里紗:お父さんはずっとやってないって主張してた!

七華:やってないって証拠ないもーん。ま、そんな事はいいの。修也、将人ちょっと抑えてー。


里紗は男2人に容易に抑えられた。抵抗するも女1人に男2人。びくともしなかった。

再び思い出した恐怖。足がすくみ声が出ない。さくらはなにもする事が出来なかった。


里紗:ちょっと!なにするの!

七華:さてと、どこまで耐えられるかなー笑

麻美:最初からバスケットボールでいいじゃん笑


その文言で何をするかは、さくらにはすぐわかった。過去の記憶がフラッシュバック。気が遠くなりそうだった。


ドゴッ

ボゴッ


里紗:痛い!やめて!

七華:キャハハ!良い声出すじゃん笑

麻美:何つったんてんのさくら。

さくら:え?

麻美:さくらも投げんだよ。

さくら:え?

七華:え?じゃなくて早く投げろよ。


さくらの体は勝手に動いていた。心で拒否しているのに体は、その声に恐怖していた。


七華:早く投げろよ!


ボゴッ


鈍い音がした。さくらの手にボールはない。すでにボールは里紗の腹に到達した後だった。


さくら:あ.....あぁ.....うわぁぁぁ!!


さくらは走って体育館を後にした。逃げ出した。その後の事はわからない。一つ確かな事は、さくらが里紗にボールを投げた事だった。


麻美:なにあいつ笑 ま、いいや。飽きてきたな。

七華:そうだね。じゃ修也と将人。あとはやる事やっちゃっていいよ。

将人:了解ー。こっからが本番だな修也。

修也:文字通りな笑

里紗:ちょっと!何するの! やめて!何でもするから!やめてぇ!


体育館倉庫では、ただ里紗の悲鳴だけが響いていた。

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それから何ヶ月が経っただろうか。
あの日以来、さくらと里紗は話すことはなくなった。里紗は毎日放課後にどこかへ行き、顔はやつれていた。

さくらもあの日の事を後悔していたが、何も出来なかった。

そんな日々が1年くらい経っただろうか。中学3年生の夏。蒸し暑い日だった。


さくら:......屋上行こ。


さくらは涼もうと思い屋上へ向かった。いつもは誰もいないはずの屋上。だかその日は1人先客がいた。


里紗:あ、さく。

さくら:.....り、里紗。

里紗:なんだか....久しぶりだね。

さくら:....うん。あの、えっと。

里紗:私のお父さんさ、自殺しちゃった。

さくら:え?

里紗:世間の目は厳しかったんだろうね。再就職も出来なかった。

さくら:.........。

里紗:.....こんなことになるなら......助けなきゃ良かった。

さくら:え.....?

里紗:こんなことになるなら、さくらの事なんて助けなきゃ良かった!


里紗から聞いた事もない怒号。喉が擦り切れているような悲しみと怒りが混じった怒号だった。


里紗:私、何度も汚されちゃったよ。何度も何度も。
好きな人にあげるつもりだったのに。

さくら:.....ごめんなさい。本当にごめんなさい!私あの時、ボール投げちゃって、本当に体が勝手に動いちゃって・・


里紗:さくら、ギュッ


里紗はさくらを優しく抱きしめた。


里紗:さくらは何も悪くないんだよ。さくらもこんなに辛い思いをしてたんだね。


さくら:....グスッ...うわぁぁあぁぁん!


さくらは里紗の胸の中で咽び泣いた。謝罪の気持ちと自分の不甲斐なさに。


里紗:コラコラ。そんなに泣かないの。さっきは助けなきゃ良かったなんて言ってごめんね?

さくら:グスッいいの。私はそれだけの事をした。

里紗:しょうがないよ。

さくら:私達......また友達になれるかな。

里紗:.........なれるよ?

さくら:.....ありがどうグスッ。本当にありがどうぅ。

里紗:ふふっ笑。ほら昼休み終わっちゃう。先に戻ってて?

さくら:わかった!今日一緒に帰ろうね!


さくらはそう言い残し、屋上を出て行こうとしたその時。


里紗:さく!

さくら:ん?なに?

里紗:好きな人作るんだよ!
  彼氏が出来たら優しく厳しくすること!
  浮気するような奴はだめだよ!
  あとは良い友達を作ること!私みたいなね!

さくら:何言ってるの?笑

里紗:あとは....そうだな。
  これからの人生でどんな事があっても負けない事!辛い事があったら逃げてもいい、投げ出してもいい!だけど....死ぬのだけはダメ!負けちゃダメだよ!誰かを絶対に頼る事!良い?

さくら:....うん?わかったよ笑。

里紗:じゃ行ってよし。

さくら:うん。里紗も早く来なよー。


仲直りできた喜びでさくらの足取りは弾んだ。だがもう2度と。もう2度と里紗と会う事は無かった。


里紗:さく。ありがとう。 私はもう.....行かなきゃ。

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さくら:里紗は私と別れた後、そのまま屋上から飛び降りたの。

〇〇:..........。

さくら:私にトラウマを植え付けたく無かったんだと思う。屋上でも会話が私と里紗との最後の会話だった。

さくら:でも私は里紗を助けてあげられなかった。里紗が死んだのは、里紗のお父さんが死んだのは、全部私のせいなんだよ。

〇〇:...それからまたさくらはいじめられたの?

さくら:うん。七華達と高校が一緒だって知らなかった。でも一緒だと知って、償おうと思った。

さくら:私はいじめられて当然の人間。いじめを受け入れることは里紗への償いなんだ。 これが私の過去。私の全て。

〇〇:........話してくれてありがとう。

さくら:うん。だから助けてなんて言ってないって言ったのはそういう事。

〇〇:.....わかった。僕もう行くね。


〇〇はさくらから全ての事を聞き、屋上を後にした。

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昇降口


遥香:禅帰ろー。

禅:おう!テストまじ疲れたー。〇〇は誘わないの。

遥香:〇〇君なんてもう知らない!またあの女2人とよろしくやってるんじゃないの?

禅:まぁまぁそう言わずにさ。あ、ほら〇〇いるじゃん。おーい〇〇!

〇〇:あぁ禅か。

禅:一緒に帰ろうぜ。

〇〇:ごめん。やる事あるから。先帰る。

遥香:ちょっと!〇〇君!なんであの女と・・


遥香は途中で言葉が出てこなかった。〇〇は酷く恐ろしい雰囲気を漂わせている事に気づいたからだ。球技大会でのバスケの時とは違う、冷酷で人間味がない。目に光がなかった。


〇〇:じゃあな。

禅:お、おう。 なぁ遥香、〇〇大丈夫かな。

遥香:....また1人で何かしようとしてる。〇〇君の目、最初に会った時みたいだった。

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それから数日が経ち、〇〇はある決意と計画が固まった。


〇〇:よし。さくらを助ける。そして、



七華達を殺す


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              To be continued




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