秘密罪 #45
ガチャ
美空:和!入るよ!
家の中から返事はない。美空は〇〇の部屋へ向かった。
ガチャ
美空:和! .....良かった...いた...。
和:.....美空....これ...。
和は〇〇の部屋で、一枚の手紙を持って、涙を滲ませていた。
美空:....和にも...あったんだね。..とりあえず座ろ。
和と美空は二人横並びで〇〇のベッドに座った。
美空宛の手紙の裏にはこう書いてあった。
「ずっと想ってくれてありがとう。〇〇より」
美空:...とりあえず、見てみよっか。
和:....うん。
美空と和は手紙を開いた。
〜〜
和へ
まずはいきなりの事でびっくりしてると思う。ごめんね。これしか方法が思い浮かばなかったんだ。
初めに、僕は記憶が戻ってる。全て思い出したんだ。隠しててごめんね。気を遣わせたくなかったんだ。
僕が和と初めて会った日、廃れてた僕の心に光が差した気がしたんだ。始めはあまり関わらないようにしようと思ってたんだけど、和は僕と一生懸命関わろうとしてくれてたね。それがとても嬉しかったし、僕の心も救われた。本当にありがとう。好きって伝えてくれた時も、正直びっくりしたけど、和は全然答えを出さない僕をずっと待っててくれて、いつでも本気で僕を想ってくれてたね。僕は家にいる時、とても幸せだった。和がいつも料理を美味しそうに食べてくれる所、僕のベッドに侵入してくる所、僕の髪を乾かしてくれる所。全部大好きだったよ。でもね、咲月ちゃんが事故に遭ったのは僕のせいなんだ。僕が家出をしなければあんな事にはならなかったんだ。僕は君達と一緒にいる権利はないんだ。
最後に、この手紙を置いて去る僕を許して欲しい。君達はきっと僕のことを追ってくると思ったから。勘違いしないで欲しいのが、君達と過ごした青い日々は、僕の心を色付けてくれた。ありがとう。良い人を見つけるんだよ。じゃあね。
〜〜
美空へ
家に入ったら急に手紙が入っててびっくりしたよね。ごめん。伝えたい事があったんだ。実は僕の記憶はもう戻ってる。心配しないで欲しい。
美空が東京から僕を追ってきた時は本当に驚いたよ。美空とは一番付き合いが長いけどあんな行動力があったとは思わなかった。でもその行動力のおかげで僕はどれだけ救われてきたかわからない。中学の頃からずーっと僕を好いてくれて、僕から一方的に関係を切ったのに、それでもずっと僕を想ってくれていたね。嬉しかったよ。でも、美空にはもっと相応しい人がいると思う。僕のような人間を好きになった美空はきっと、他の人も大事にできるし、愛する事ができると思う。美空は皆んなにとって太陽みたいな存在なんだ。でも、一人で悩まず、周りにも頼るんだよ。
最後に、この手紙を置いて去る僕を許してほしい。きっと美空は許さないだろうけど、これは僕のけじめなんだ。君達の隣にいる権利はないんだ。ずっとずっと変わらぬ思いを僕に伝えてくれてありがとう。君から生まれる真っ直ぐな言葉はいつまでも心に残っているよ。今までありがとう。じゃあね。
〜〜
涙が止まらない。何度も何度も涙を拭わないと手紙が見えない。間違いようがない〇〇の字でその手紙は書かれていた。
和:うぅぅぅ.....グスッ....あぁぁ....うぁぁ....
しばらく放心状態だった。
美空:....ヒック...グスッ.....あぁ....うぁぁ..
その時だった。
ガチャ
遥香:和ちゃん!〇〇いる!?
禅:〇〇いるか!?
さくら:はぁ...はぁ...〇〇君は!?
和:うぅ...グスッ...〇〇は....もう...いないよ...,
遥香:嘘....ねぇ....嘘でしょ...
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数分前
遥香:...ん?手紙?
机の上にあったのは一枚の手紙だった。
遥香:「遥香へ」って書いてある....。誰からだろ。
遥香は手紙を開いた。
遥香へ
いきなりこんな手紙を書いてごめん。最後に伝えたい事があって手紙を書きました。僕の記憶は戻っています。嘘ついててごめんね。
転校して初めての隣の席が君だった。言わなかったけど美人さんだなぁって思ったんだ。君はまず球技大会の日、僕を救ってくれた。人と関わるきっかけをくれて君のそばに居れるようになりたいと思った。あの日見た星は綺麗だったよ。それからも君はいつも僕の事を気にかけてくれたね。そんな君から好きって言われたのは修学旅行の時。本当に嬉しかった。お互い素直じゃないし喧嘩をしたこともあったけど、僕にとってそれは宝物のような日々だった。誰にでも優しくて、ダンスが上手くて、時には弱くて、ちょっと意地っ張りで、日々を一生懸命に生きている、そんな遥香の隣にいられて、僕は幸せでした。
最後に、この手紙を置いて去る僕を許してほしい。遥香は遥香の人生を生きて欲しい。僕の事はもう忘れて欲しい。今まで僕と友達でいてくれてありがとう。じゃあね。
裏面には「答えを出せなくてごめん。〇〇より」と書かれていた。
気づいた時には、もう家を飛び出していた。
〜〜
さくら:郵便なんか頼んだっけ...。
さくら:ん?....これは...手紙?
さくらへ
突然の手紙に驚いていると思う。ごめん。伝えたい事を書いたんだ。まず僕は記憶が戻っている。嘘ついててごめん。
初めてさくらと話したのは屋上だったね。僕は初めてだったんだ。自分から誰かに父の事を話してみよう思ったのは。さくらのおかげで僕はすごく変われたんだよ。僕とさくらは似ていたよね。小説が好きだったり、過去に秘密を抱えていたり。僕はさくらをいじめから救った事を後悔なんてしていない。さくらという人間を助ける事ができて、僕は僕の価値を初めて感じたんだ。デートも楽しかった。食べ歩きも楽しかったし、なにより君が見せてくれた「耳をすませば」あれから何回も見ちゃってる。大好きな映画になったよ。さくらといて僕は守りたいって心の底から思えたんだ。君といる事で僕は充実していた。君に好きと言ってもらえて自信が持てた。とても幸せだった。
最後に、この手紙を置いて去る事を許してほしい。好きって言ってくれた返事が出来ない事、君の前から消える事、許してほしい。僕と里紗はいつでもさくらの事を見守っているよ。じゃあね。
裏面には「強く生きて。〇〇より」と書かれていた。
さくら:...お母さん!ちょっと〇〇君の家行ってくる!
〜〜
禅:郵便ってなんだろ。ん?なにこれ。
机の上に置いてあったのは、一枚の手紙と、大量の書類だった。
禅へ
突然手紙なんか書いてごめん。僕は記憶が戻ってる。嘘ついてた。
まず、謝罪がしたい。咲月ちゃんが死んでしまったのは僕が家出をしたせいだ。許される事ではない。本当にごめんなさい。
禅に送ったのはこの手紙と、甲子園に向けてのデータだよ。対戦する可能性がある全ての高校の選手のデータが書いてある。神宮寺や夏間の弱点なんかも書いてある。利用してくれ。そして必ず勝ってくれ。あと、U18に選出されたぞ。おめでとう。この経験は必ず役に立つ。
禅は始業式の日から僕を気にかけてくれてたよな。僕が勝手に思っていただけかも知れないけど、なんか「親友」って感じがして嬉しかった。だからこそ、親友であるお前の隣にいちゃいけない人間なんだと思った。早く気づいていればこんな事にもならなかったんだけどな。関係が深くなり過ぎてしまって僕も辛い。
最後に、禅は誰からも好かれ、誰からも頼られる。そんな強い人間だ。弱い人を救ってやるんだぞ。それじゃあ、じゃあな。
裏面には「甲子園優勝しろよ!〇〇より」と書かれてあった。
禅:.....くそっ!あいつ.....。彩!ちょっと出かけてくる!
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そして今に至る。
美空:.......〇〇....どこかに行っちゃうのかな。
誰も何も言わなかった。
禅:............ちょっと待て...和ちゃん。〇〇の財布とかある?
和:え?......うん。部屋にあったよ。
禅:.......あいつ....死ぬつもりかもしれない。
遥香:えっ!?
さくら:........私の手紙に.....僕と里紗はいつでもさくらの事を見守ってるって書いてあった.......。
遥香:.....里紗さんって確か....もう死んで.....
禅:こんな事してる場合じゃない!まだ間に合うかもしれない!探そう!〇〇を!
5人は家を飛び出した。一心不乱に探した。
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禅:......はぁ...はぁ...あいつまじで何やってんだよ!
遥香:あ!禅! 見つかった!?
禅:はぁ、遥香...まだ見つかってない。
遥香:.......もしかして...もう....自殺したんじゃ...
禅:いらねぇこと考えんな! 今は見つかるまで探すんだよ!
禅は民家が立ち並ぶ中、大声を上げた。すると、禅達の目の前にある民家から人が出てきた。
男1:あのー....うるさいんですけど.....って禅かよ!
遥香:あ....あれ? こんなとこまで来てたんだ..。
一心不乱に探し、気づけば男1の家まで来ていたことに気づく。
男1:なにしてんの、こんなところで。
禅:なぁ!ま、〇〇見なかったか!?
男1:〇〇?〇〇なら一時間前くらいにあったけど?
遥香:ほんと!?
男1:え、うん。なに探してんの?
禅:あいつどんな様子だった?なんか話したか!?
男1:え?ま、まぁ話したけど....
〜〜
一時間前
ピンポーン
男1:はーい。......って〇〇じゃん!事故の怪我治ったのかよ!
〇〇:あはは笑 久しぶり。おかげさまで治ったよ。
男1:そうか....そりゃ良かった。んで?何しに来たの?
〇〇は深く頭を下げた。
〇〇:男2から聞いたよ。僕を庇って、君が今までいじめられていること。本当にごめんなさい。そして、ありがとう。
男1:.....誰にも言うなって言ったんだけどなぁ笑 ま、良いってことよ!いじめられんのなんて屁でもねぇからな!
〇〇:君は.....強いんだな。でも今日はこれを君に送ろうと思って。
男1:これって?
〇〇は徐にスマホを取り出して、とあるデータを男1に転送した。
男1:....これは?
〇〇:七華達が人をいじめてた時の録音とか証言を全部送った。好きに使って。これで君ももういじめられないだろう。
男1:お前.....俺はまた....学校に行けんのか?
〇〇:うん。対応が遅くなってごめん。
男1:....そっかぁ....はは笑.....嬉しいな....。
〇〇:良かったよ。じゃ、僕は帰るよ。
男1:あぁ、また学校でな!
〇〇:............じゃあな。
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男1:・・って事があったけど?
禅:お前....〇〇の事庇ってたのか....。
男1:まぁな。んで?用はそれだけ?
禅:〇〇がどこ行ったかわかるか!?
男1:いや....帰るとしか言ってなかったからな。わかんね。
禅:......そうか。ありがとう。遥香、行こう。
遥香:行くってどこに!?
禅:しらみつぶしに探すしかねぇだろ!
その時、禅達の前に一台の黒塗りの車が止まった。車の窓がゆっくりと開いた。
天知:へーい、嬢ちゃんに兄ちゃん。乗ってくかい?
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〇〇:.....すーっ....すーっ....ん....ふぁあ...寝ちゃってたか。
もう夜だった。生徒達が帰ったのを見計らってから〇〇は学校に入り、屋上へ向かった。
〇〇:........星が...綺麗だな。
恐らく最後に見る星だろう。〇〇は仰向けになって寝ながら星を眺めていた。不意にポケットに手を突っ込み、一枚の紙を取り出す。
その紙にはこう書かれてあった。「凶」
〇〇:結局、修学旅行で引いたおみくじ....当たってたな笑
〇〇:.....これが僕の最良の選択かはわからないけど....僕にはこうするしか思いつかなかったな....よいしょ
〇〇は重たそうに体を起き上がらせた。立ち上がって柵へと近づく。不思議と怖くはなかった。
〇〇: ....Country roads, take me home To the place I belong.....って言っても...帰る場所は無いなぁ笑
〇〇:まぁ......行くべき場所に行こう。
〇〇は柵へとたどり着いた。足をかけ、柵の外側へと乗り出す。
〇〇はリストバンドをつけ、修学旅行で買った狐のお面を被った。
〇〇:.......死に顔は....見せたくないからな。
〇〇:.....青春の意味なんか、結局僕にはわからなかったけど....
〇〇:あの日々が青春じゃないなら.....もう僕は青春なんて知らなくていい。
青春とは、ありあまる力を他にどうにも使いようがないので、ただ風のまにまに吹き散らしてしまう所にあるのかもしれない。とある作家は口にしている。
〇〇にとってそれはなんだったかはわからないままだが、6人でいた日々を〇〇は青春と呼ぶことにした。
そうして一呼吸おき、〇〇は屋上から
身を投げた
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To be continued
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