秘密罪 #40
ブーッ ブーッ
〇〇:"はい。もしもし"
吉原:"おぉ、〇〇君。元気にしているか?"
〇〇:"はい。滞りなく"
吉原:"それは良かった。 今日は練習日時が決まったから伝えようと思ってね。来週の日曜なんだが、参加できるかな"
〇〇:"はい。大丈夫です。参加させていただきます"
吉原:"よし。では待っているよ。それじゃ"
プツッ
〇〇:ふぅ.....やっと練習できる...。
〇〇は楽しみにしていた。野球することしか楽しみがなかった〇〇にとって、高いレベルで野球する事は至福の時だった。
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土曜日
監督:よし。今日の練習はここまで。
一同:ありがとうございました!
監督:あ、それと〇〇ちょっと前へ出ろ。
〇〇:はい。
監督:えー、知ってる奴も多いと思うがこの度秋月〇〇が一年生ながらU15野球日本代表に選出された。これはこのチームにとっても良い影響を与える。皆んなしっかりと送り出してやろう。
〇〇:日本の為に、チームの為に戦ってきたいと思います。応援よろしくお願いします。
チームメイトからの反応は無かったが、集合の輪の端の方で、声が聞こえた。
神宮寺:頑張れよ!
その声を皮切りにパラパラと拍手がなった。
監督:よし。じゃあ今日は解散!
〜〜
先輩1:はぁ....〇〇は上手いんだけどなんか贔屓されてるよなぁ...。
先輩2:わかるわ笑 上手いっつっても俺らとそんなかわんねぇって。
先輩1:なんかうぜぇよなぁ。
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日曜日 練習場
〇〇:....っし! お願いします!
練習場に入る際、〇〇は帽子をとり深くお辞儀をした。
コーチ:おっ!君は....秋月〇〇君だね?
〇〇:はい!今日はよろしくお願いします!
コーチ:うん。よろしく。じゃあ全員揃うまでちょっと待っててね。
〇〇:わかりました。
〜〜
〇〇:よし。....準備運動でもしとくか。.....ん?なんだあいつ。
〇〇の目線の先には練習場を走り回り既に汗だくな男がいた。
??:はぁはぁ.....疲れた...。
〇〇:...あのー...大丈夫?
??:あ?余裕だわ。てかお前誰だよ。
〇〇:あぁ、僕は秋月〇〇って言うんだけど....
??:あぁ!? お前が秋月〇〇か!
〇〇:あ、うん。そうだけど....。
??:お前のせいで俺の「ただ一人の天才中学一年生!U15で大暴れ」計画が台無しなんだよ!
〇〇:は?笑.......あれ、もしかして君が夏間光陽君?
夏間:そうだ!俺が夏間光陽! ......お前、あんま野球できそうに見えねぇなぁ...。
〇〇:あはは笑 まぁ頑張るよ。
これが夏間光陽と秋月〇〇の出会いだった。
吉原:よし。じゃあ集合!
〜〜
吉原:じゃあ基本的にはここにいるメンバーで世界と戦っていきたいと思う。レギュラーになりたかったら頑張ってアピールしてくれ。
吉原:練習を始める前に守れるポジションを教えてくれ。映像だと一つのポジションしか知れなかったからな。
選手達は順番に自分が守れるポジションを話していった。
吉原:じゃあ次。
夏間:はい!夏間光陽です!自分はピッチャー以外やった事ないです!というかピッチャー以外やりたくありません!!
吉原:おぉ!笑 いいなぁ元気があって。じゃあ次!
〇〇:はい。秋月〇〇です。僕は.....ピッチャー以外ならどこでも守れます。好きなように使ってください。
吉原:なるほど...夏間とは真逆だな。よし。じゃあストレッチして、キャッチボールしたらポジション別にノックするから準備しといて。
一同:はい!
〜〜
吉原:じゃ、ピッチャー陣はブルペン行って。野手はポジション着いて。〇〇は全ポジション入って。
〇〇:分かりました。
〜〜
ブルペン
夏間:おらぁ!
コーチ:138キロ....速いな。
夏間:今日調子いいなぁ!.....ん?あれ秋月か...
コーチ:次!サード! カキンッ
〇〇:....っし!
明らかに周りとか違う動きをしていた。一切の無駄がない。ミスする気配も感じなかった。
夏間:........すげぇ....。
〜〜
吉原:じゃ、今日の練習は終わり。あと何回が練習あるから詰めていこう。このチームなら勝てるよ。じゃ解散!
一同:ありがとうございました!
ミーティングが終わると、選手達は自分の荷物を持って帰り支度をしている。
夏間:おい!秋月!
〇〇:ん?あぁ、夏間君か。なに?
夏間:お前....めちゃめちゃすげぇじゃん!俺より全然野球うめぇ!
〇〇:え、、あ、そう。ありがとう笑
選手1:夏間も凄いよ笑 お前ら中1なんだろ?すげぇなぁ。将来甲子園で当たったら手加減してくれよ?
選手2:それな笑 今度俺にも教えてくれ。じゃあなー。
夏間:っかれっした!
〇〇:お疲れ様でした。
正直〇〇は驚いていた。中学校で段々と僻み、妬みの声が上がっている事はわかっていた。ここでも自分は最年少。そういう事もあるのだろうと思っていたが、実際はそうではなかった。高いレベルになると自分は浮かないし受け入れられる。それを実感した日だった。
6月18日
今日は日本代表の練習があった。最高だった。ここまで楽しい日はあっただろうか。心地よかったなぁ。絶対に勝って、また来年もメンバーに選ばれたいと思った。プロ野球選手.....そんな事は考えた事もなかったが少し興味が出てきた。より高いレベルでやってみたい。父からは会社を継ぐか、医者の2択と言われている。正直どちらも興味はない。そんな人間が雇用したり、人の命を救うような仕事はできるのか....。またしっかり考えよう。
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〇〇は日本代表の練習に参加していくうちに、どんどん野球に没頭していった。だが父と約束していた事も遂行していた。テストでは毎回トップだった。
神宮寺:なぁ....来週日本代表の試合なんだろ。
〇〇:そうだよ。
神宮寺:いいなぁ....俺もプロ野球選手目指してるんなら選ばれないとダメだよなぁ...。
〇〇:.....お前プロ野球選手目指してるのか。
神宮寺:うん。
〇〇:...そうか..。
〜〜
8月13日
来週は日本代表の初戦。予選を勝ち上がって本戦に勝ち進まないとな。あのメンバーなら心配はない。心配なのは自分だ。今日神宮寺と話していて思った事があった。身近に本気でプロを目指している人がいる。それに比べて自分はそこまで本気になれているだろうか。自分より本気でプロを目指している人が選ばれるべきではないだろうか。こんな事考えてしまっている時点でダメなのかな。まぁ試合に出る事はないだろうが、不甲斐ない姿を見せないように頑張ろう。
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試合当日
吉原:よし、オーダー発表するぞ。1番センター・・
吉原監督がオーダーを発表している。自分はなんとなく上の空で聞いていた。中1の自分がスタメンで入るわけがないと思っていたからだ。
吉原:7番ショート秋月。
〇〇:.........ん?
吉原:7番ショート秋月!返事は!
〇〇:は、はい!
まさか選ばれるとは思わなかった。だがそう思っていたのは自分だけのようで、周りは当然といった表情で〇〇を見ていた。急激な緊張が襲ってくる。
選手1:ははっ笑 〇〇緊張してんのか?
〇〇:えぇ.....まぁ、はい。
選手2:今日はネット配信もあるからなぁ笑 緊張してるとカメラに抜かれるぞぉ?
〇〇:やめてくださいよ....。うわぁ緊張やばい...。
夏間:おらぁ!〇〇!バシンッ
〇〇:いっだぁ!何すんだよ夏間!
夏間は思い切り〇〇の背中を叩いた。
夏間:緊張してたから。でもほら手の震え止まったろ。
〇〇:あ....ほんとだ。
夏間:気楽に行ってこい。俺が出るまでのお膳立てをしておくんだな!
〇〇:はっ笑 お前が出る機会なんて無くなるくらい点取ってやるよ笑
〜〜
実況1:さぁ日本代表初戦。吉原監督率いる吉原JAPANは予選突破できるのか。注目選手などはいますか?
実況2:そうですね...。やはり中学一年生でスタメンに選ばれている秋月〇〇選手でしょうか。未知数ですので非常に気になりますね。
実況1:そうですね。注目して見ていきましょう。お、間も無く始まるようです。
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2週間後
実況1:さぁ!いよいよ決勝です!ここまでよく勝ち上がって来ましたね!
実況2:そうですね!なんといってもキーマンは秋月〇〇選手でしょう!今大会の打率は6割を超えています。
実況1:ホームランバッターという訳ではないですが確実に点が欲しい所でヒットを打っていますね。そして守備ですよ。なんど〇〇選手のファインプレーを見た事か笑
実況2:かなり日本はあのファインプレーに助けられましたね。
〜〜
吉原:よし。いよいよ決勝だ。準備できてるか。
一同:はい!
吉原:このメンバーでできるのも今日で最後だ。悔いのないように。それと....優勝したらモテるぞ。
一同:っしゃあああぁあ!やったるぞ!!
〜〜
7回裏 4対3でアメリカがリードしていた。後攻は日本の攻撃。二死満塁で7番の〇〇に回ってきた。
正直、この大会での〇〇は神懸かっていた。〇〇がいなければ負けていた試合も多かった。
〇〇:ふぅ.....よし。 グッ
いつも通りに構える。緊張はなかった。むしろ落ち着いていた。
ズパンッ!
球速は141キロ。中学生にしてはかなり早かったが夏間の球を見慣れている〇〇にとっては打ち頃の球だった。
〇〇:(次で仕留める)
ピッチャーがモーションに入る。〇〇は流れるようにタイミングをとり、振り抜いた。
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12月31日。
生きてきて今までで最高の一年だった。正直まだ興奮が覚めやらない。あれが生きてるって実感なんだと知った。野球だけをやれたらどれだけ幸せだろうか。あぁ....野球をずっとしていたい。またあの場所で野球がしたい。プロ野球....あの時みたいに高いレベルでやれるなら、やってみたい。視野に入れてみようかな。というかもう僕、プロ野球選手になりたいんじゃん笑 また来年も選ばれるように頑張ろう。
〜〜
決勝戦の後、学校ではお祭り騒ぎだった。
女1:〇〇君!写真一緒に撮ろう!
女2:〇〇君!サインちょーだい!
〇〇:い、いや....ちょっと...あ!用事思い出した!ごめん!
女1:あ!どこ行くの!
〜〜
〇〇:はぁ...なんであんなにしつこいんだ...。
神宮寺:よぉ。大変そうだな笑
〇〇:あぁ、神宮寺か..。
神宮寺:そりゃ人気でるよ笑 だって決勝のあの場面で逆転満塁ホームランだぜ?俺見てて震えたもん笑
〇〇:まぁ....僕も出来過ぎだとは思ったよ。でも楽しかったなぁ。
神宮寺:いいなぁ...。よし!今から練習するぞ!俺も絶対選ばれる!
〜〜
年が明けて〇〇は中学2年生の年になる。少しだけ心も体も大人になる。だが1番不安定な時期ともいえる。
美空父:美空。一ノ瀬家の人間として自覚を持って中学生活を送りなさい。
美空:はい。頑張ります。
美空父:よし。じゃあ早く寝なさい。
美空:わかりました。おやすみなさい。
中学2年生。〇〇にとって人生で最大の転機の年。〇〇のすべてが変わる日。それが始まろうとしていた。
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To be continued
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