秘密罪 遥香の未来編
遥香:もー! そんな言わなくたっていいじゃん!💢
〇〇:遥香が料理教えてって言ったんだろ! 何回同じ間違いすんだ!💢
遥香:初めてだからしょうがないじゃん!
〇〇:にしても固すぎるわ! 春雨15秒でお湯から出すって....狂ってんのか!
遥香:だったら作ってる時に指摘してくれたっていいじゃん!💢
〇〇:遥香が言われるのやだって言って、最初は黙って見ててって言ったんだろ!💢
〇〇、遥香:ぐぬぬぬぬ!
さくら:ま、まぁまぁ落ち着いて?
禅:ほーら〇〇、ここは男が折れないと。
〇〇:だって遥香いっつもこうだし!・・
禅:はいはい、あっち行こうなー
〇〇:ちょ、禅!
〇〇は禅に奥の部屋へと連れて行かれた。
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〇〇と遥香は高校卒業後、同じ大学へ進学。大学卒業後は〇〇は一流企業へ就職。遥香はモデルの仕事をしていた。〇〇と遥香は大学の頃から同棲していた。
〜〜
〇〇:なんで僕が部屋移動しなきゃいけないんだよ...
禅:まぁまぁ、あのまま喧嘩してても嫌だろ?
〇〇:まぁ...そうだけど...。
禅:最近喧嘩多いのか?
〇〇:学生の頃に比べたら....多いかも...
禅:なんかあったのか?
〇〇:なんか....急に遥香が家事やりたいとか言い出してさ...遥香はモデルの仕事とかで忙しいし、大学の頃も家事は僕がやってたから
〇〇:それで教えてって言われても、遥香はできないとすぐ拗ねるし...だから僕やればいいって言っても聞かないし...
禅:家事って例えば何やってんの?
〇〇:掃除、洗濯、料理、その他諸々。
禅:お前それ全部一人でやってんの!?仕事しながら!?
〇〇:別にきつくねぇよ。和と二人で暮らしてた時もやってたし、それに遥香の為だったらキツくてもやるし。
禅:お、おぉ....。
〜〜
さくら:もう、かっきー泣かないの。
遥香:だっでぇ...グスッ...また喧嘩しぢゃっだ...うぅ..
さくら:またって...何回も喧嘩してるの?
遥香:うん...グスッ...全部私のせい....
さくら:何かあったの?
遥香:...〇〇は学生の頃からずっと家事とかやってくれてて...私はそれに甘えてて、〇〇は何も言ってこなかったんだけど...
遥香:仕事する様になって、〇〇より私は忙しくないから家事やろうと思ってやってみたら...全然できなくてグスッ...
さくら:うんうん。
遥香:出来ないの自分のせいなのに...なんか焦っちゃって〇〇に強く当たっちゃって...
さくら:なんで焦っちゃったの?
遥香:〇〇は全部出来ちゃうから...私必要じゃなくなるんじゃないかって思っちゃって...うぅ...グスッ..
さくら:そっかそっか...大丈夫〇〇君はそんな事思わないよ。
遥香:うぅ...さくぅ...グスッ...
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〇〇:ごめんなぁ、今日食事会の筈だったのに。
さくら:ううん。大丈夫だよ。それより仲直りしてね?
禅:そうだぞー、結婚も考えてんだろ?
〇〇:ばか!声がでかい!
禅:あ、すまん笑 じゃ、またな。仲良くやれよー。
バタンッ
〜〜
〇〇:ふぅ....遥香? そんな泣きながらやっても上手くならないよ?
遥香:グスッ...絶対料理できるようになるもん...
〇〇:また今度でいいって。それに僕が出来るんだし、大丈夫だよ。
遥香:....そうやってまた....私は必要じゃないんだ....ボソッ
〇〇:えっ?
遥香:もういい!
バタンッ
遥香は自室へ行ってしまった。
〇〇:...わかんねぇ...これどうすりゃいいんだ...
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翌朝
ジリリリッ
遥香:んぅ....ん?今何時だ。うわっ!もう10時だ!遅刻する!
目覚ましが鳴った時間は、今から準備すればギリギリ間に合う時間だった。
部屋から出て準備を始める。ふと、リビングのテーブルの上を見ると手紙が置いてあった。
遥香:ん....なにこれ。
遥香へ
昨日寝落ちしちゃったみたいだから、勝手に部屋入って目覚ましかけといたよ。遥香すぐ二度寝するからギリギリにかけた笑 あとお弁当作っといたから持ってくの忘れないでね。じゃ僕は先に仕事に行ってきます。今日も一日頑張ろー。
PS. 昨日遥香が作った料理、朝食べました。美味しかったよ!
〇〇より
いつも食事をしているテーブルを見ると、ハンカチに包まれたお弁当があった。
そして部屋を見渡すと畳まれた服。綺麗に掃除された部屋。〇〇が朝、家事をした痕跡が至る所に見られた。
遥香:....食器も洗ってある....
手紙の内容も自分を気遣っている文面で溢れていた。急に自分が情けなくなって、〇〇に対して申し訳ない気持ちが湧いてきた。
それと同時に、自分は必要とされていないという感情も湧いてきた。
遥香:仕事...行かないと....
燻った感情のまま、仕事の準備をした。
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会社
〇〇:ふぅ.....あ、もう昼か...
上司:よーし、〇〇。昼休憩入って良いぞ。
〇〇:あ、はい。じゃ、入らせていただきます。
上司:飯でも行くか?
〇〇:いや、お弁当持ってきてるんですよ笑
上司:またか笑 それにしても毎回美味そうだなぁ〇〇の弁当は。自分で作ってるのか?
〇〇:はい。自分で作ってます。
上司:あれ、でも彼女と同棲してるとか言ってなかったか?
〇〇:してますよ。僕が毎日朝昼夜作ってます。
上司:へぇー!〇〇は料理担当なんだなぁ。
〇〇:料理担当? 担当ってなんですか?
上司:いや...同棲してるんだろ?だったら、どっちが洗濯するとか、掃除するとか、そういうの決めないのか?
〇〇:全部僕がやってますね。彼女が家にいるだけで僕は幸せですし。
同期:彼女はそう思ってないかもですよ?
横で聞いていた同期の女子が話に入ってきた。
〇〇:え?
同期:私だったら必要とされてないんだって思っちゃうなぁ。
〇〇:え、そうなの?負担かけないように全部自分でやった方がいいと思ってたんだけど。
同期:なんで彼女にまで気遣うのよ。負担かけてナンボでしょ。それに負担だなんて思わないよ?二人で暮らしてるんだし。
同期:まぁ...それで仲良く暮らせてんなら良いけど。
〇〇:.......仲良くは....ない気がする....
上司:俺が急に〇〇に仕事頼まなくなって、それでも給料が振り込まれるとしたらどうだ?ちょっと気が引けるだろ?
〇〇:それは....そうですね。
上司:同じ事だよ。これからは彼女の事も頼ってやんな。
〇〇:....はい。やってみます。
〜〜
〜〜
撮影現場
カメラマン:今日ちょっと表情固いねぇ....
遥香:す、すいません...
カメラマン:まぁちょっと休憩しようか。お昼食べてきて良いよ。
遥香:わかりました...。
〜〜
マネージャー:なんかあった?
遥香:いや....その....
マネージャー:彼氏?
遥香:.......はい。
マネージャー:頼ってくれないって言ってたやつね。.....かっきーは彼氏さんのどんなとこが好きなの?
遥香:そりゃいっぱいありますよ!カッコいいし、優しいし、時々ドジするし、私の事よく見てくれてるし....
マネージャー:完璧なんだね笑 でもそれはかっきーが隣にいるからなんだよ?
遥香:え?
マネージャー:私、「秘密罪」読んだんだけどさ、かっきーがいなかったら、今頃彼はいないんじゃないかな。
マネージャー:彼はかっきーにたくさん助けられてたよ。だから大丈夫。かっきーは頼りにされてる。
遥香:....そうですかね。
マネージャー:うんうん!じゃお昼ご飯食べて、撮影がんばろー!
遥香:.....はい。
遥香がお弁当を開けると、そこには、ご飯の上に海苔で「ファイト!」と書かれてあった。
遥香:.......よし!
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遥香:.....ふぅ...ちょっと遅くなっちゃったな...
遥香:家に帰ったらちゃんと謝らないと...
ガチャ
遥香:ただいまー....あれ、靴ある。
いつもは帰ってきている時間ではないのに、〇〇の靴があった。
ガラガラガラッ
〇〇:あ、遥香。おかえり。
遥香:....ただいま。お弁当ありがとう。
〇〇:うん。美味しかった?
遥香:.....うん。美味しかった。あの....その....えっと...
〇〇:....ちょっと話があるからさ、荷物置いたらリビングに来てくれる?
遥香:あ....わかった。
別れを切り出されるのだろうと少し察していた。その現実を直視したくなくて、ゆっくりと荷物を置いて、何度か深呼吸した。
〜〜
〜〜
遥香:....おまたせ。
〇〇:ううん。
遥香:.....それで話って?
〇〇:えっとね.....その.....今日は夕飯を作っていません!
遥香:へ?
予想外の言葉だった。
〇〇:な、な、なんか今日は作る気分にナレナクテ...
〇〇:遥香と一緒にツクリタイナァ....
〇〇:ムシロ、ハルカノリョウリガ、タベタイナ
遥香:な、なんでカタコト?
〇〇:遥香にタヨリタイナァ...
その言葉を聞いた瞬間に確信した。この人は私の気持ちを汲み取って発言している。私の事を私よりも知っている。そして、笑っちゃうくらい不器用。
でも、そんなとこを好きになったんだ。
遥香:....よしっ!作る!
〇〇:ほんと!?
遥香:作るよー!! 〇〇の胃袋掴んじゃうからね!
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数十分後
遥香:.......ごめん。
テーブルに置かれていたのは、カレーの匂い以外はカレーの情報がない何かだった。
〇〇:大丈夫!パクッ
遥香:あっ!?
〇〇:モグモグ.....ん!?
遥香:....美味しくないよね...。
〇〇:美味しい!
遥香:えっ?
〇〇:これ美味しいよ! カレーの味はしないかもだけど、ちゃんと美味しい!
遥香:ほんと!? パクッ
遥香:ん!美味しい!
〇〇:でしょ?
久しぶりに家の中に笑い声と明るい雰囲気が漂っていた。
〜〜
〇〇:ふぅ....ごちそうさまでした。
遥香:...........ごめんなさい。
〇〇:え?
遥香:私....ずっと〇〇に頼って欲しくて...頼って貰えるような人になりたくて...でもなれなかったから〇〇に強くあたっちゃって....
遥香:これからも....頑張るから!
〇〇:....僕もごめんなさい。一緒に暮らしてるのに全部一人でやろうとしてた。遥香の気持ちに気づけなかった。
遥香:〇〇は悪くないよ....
〇〇:もう....また暗くなってる..。じゃあ、どっちも悪くないって事で終わり!いい?
遥香:.....わかった!明るくいこう!
〇〇:ふふっ笑 だね。 でもなんかカレー食べてると思い出すなぁ。高校の時遥香が泊まりに来た時のこと。
遥香:....私も。一緒にカレー作ったけど...うまく行かなかったなぁ...。
〇〇:あの時は....なんか結婚したらこんな感じなのかなぁって思ってたよ。
遥香:それ言ってた笑 急に言うからびっくりしたんだよ?笑
〇〇:.......今はほんとに結婚したいと思ってるけどね...。
遥香:えっ!?
〇〇:二人で笑い合って、時々喧嘩して、それで仲直りして、僕ららしい生活をしたいな....
遥香:そ、それって....
〇〇:......結婚する?
彼から発せられたあまりにも自然な言葉。その言葉に脳に介する暇もなく脊髄で反射していた。
遥香:うん。
〇〇:へへ笑 やった。
遥香:ずっと〇〇といる。
〇〇:うん。よろしくね。これからも。
〜〜
ひどく不器用な二人。これからたくさん喧嘩もするだろうけど、どうせ仲直りする。
プロポーズの言葉も不器用で、不恰好で、不自然。でもそれが二人にはぴったりだった。
〜〜
笑いが絶えず、時々喧嘩をし、それでも幸せ。そんな家庭を築くのは、まだ少し未来のお話。
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Finish
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