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秘密罪 #44


禅:ま、〇〇?.....入っていいか?

〇〇:.........あぁ、入ってもいいよ。


静かに笑っていたが、それを思い出したかのように突発的にやめ、禅を部屋に招いた。


禅:.....天知に何されたんだ?

〇〇:ん?....特に何もされてないよ。それより..君は?

禅:何もされてないわけないだろ....。俺は小川禅。〇〇の友達。

〇〇:.......へぇ....友達ね。

禅:〇〇と一緒に野球やってんだけどさ、まぁ覚えてないよな。

〇〇:...うん。ごめん。

禅:いや...いいんだ。でも甲子園まで行って、神宮寺と戦ったんだぜ?

〇〇:.......へぇ...神宮寺と...勝ったか?

禅:いや負けたよ。俺が打たれたからな。〇〇はホームラン打ってたぞ。

〇〇:.....神宮寺も成長してないな。僕からホームラン打たれるなんて。


普通の会話をする。おかしい点をあげるとすれば、〇〇のレスポンスまで数秒間があること。そして〇〇がどこか上の空だということだ。

禅は一度勝負に出た。


禅:〇〇...俺の旧姓覚えてる?

〇〇:覚えてない。今君の事を知ったんだ。

禅:......だよな。


今回はすぐに返答があった。


〇〇:.......君は....さっきから僕と目が合わないけど...なにか僕に対して後ろめたい事があるのか?

禅:は?

〇〇:昨日遥香って子が来た時に言っていた。君達は僕と喧嘩紛いの事をしていたんだろう?

禅:え、いや、まぁ....


スラスラと喋る〇〇を見て少し驚いたが答えた。


禅:正直....俺はお前の事を恨んでいた。色々あってな。

〇〇:....じゃあなんで君はここにいる。

禅:記憶が戻った〇〇と話がしたいから。まず〇〇に謝りたいし、〇〇が俺達に対してどう思っているか知りたい。あとは...まぁ俺は〇〇に結構助けてもらったからなぁ。修学旅行行けたのも〇〇のおかげなんだよ。

〇〇:.......そうか。僕は修学旅行に行けたんだな。...じゃあ....早く記憶を戻さないとな。

禅:そうだぞ。後早く怪我治してくれ。もう俺ら高3なんだから、最後の甲子園来るぞ。

〇〇:......神宮寺とか夏間に勝てるのか?

禅:勝つんだよ。〇〇もそう言ってたぞ。それに...妹との約束だ、甲子園優勝しないといけない。

〇〇:......そうか...頑張れよ。

看護師:すみません。バイタルチェックをしたいので退室していただけますか?

禅:あぁ、はい。じゃ帰るわ。早く記憶戻せよ。

〇〇:....あぁ...わかった。


禅は〇〇の部屋を後にした。天知が〇〇にした事は気になったが、特筆して〇〇におかしい様子はなかったので気にしないことにした。

〜〜

それから美空、和、さくら、遥香、禅が交代で一日毎に〇〇部屋を訪れた。少しずつ記憶を呼び起こす為に、〇〇との思い出の物や写真などを見せていった。

冬休みが終わり、三学期が始まる。〇〇は入院しなければならない。遥香達は東京から戻り学校に行かなければならない。

結局、遥香達が来ていた期間、記憶が戻る事はなかった。

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三学期が始まって1ヶ月。2月の初旬。生徒らは次の学年に向けての準備を始める。


飛鳥:HR始めるよー。

男2:はーい。


飛鳥は名簿を確認し、休みがいないかを確認する。


飛鳥:今日の休みは....男1だけね。

禅:....だけ?

飛鳥:あぁ.....入ってきていいよ。


ガラガラガラッ


女1:あっ!


扉を開けた先に立っていたのは、松葉杖をついている〇〇だった。


〇〇:よいしょ....ふぅ。

飛鳥:今日から〇〇復帰するからね。足はまだ完治してないから皆んな面倒見てあげて。

男2:〇〇ー。おかえりー。

〇〇:え、あ、うん。よろしく。

飛鳥:あ、ややこしくなる前に言っておくけど、〇〇は記憶喪失で皆んなの事覚えてないから。じゃー、HR終わりー。

一同:えぇっ!?

〜〜

男2:えっと....〇〇、俺の事覚えてないの?

〇〇:.....うん、ごめん。

男2:そっかぁ....まぁ仕方ないな。思い出せるように頑張ろうな。

〇〇:......あぁ、ありがとう。


そこで〇〇はある事に気づいた。


〇〇:.......なんか僕の机だけ新しくない?

遥香:あ.......そ、それは.....〇〇が休んでた間に壊れちゃったみたいだよ?

〇〇:......そう。

〜〜

授業中


さくら:......〇〇君、ここの問題はね...って解けてる。


さくらは中学までの記憶しかない〇〇に勉強を教えようと机をくっつけていた。


〇〇:あ.........ま、まぁ中学の時から高校の範囲やってたからさ。このくらいは解けるよ。

さくら:そ、そう。わかんないところあったら聞いてね?

〇〇:うん。ありがとう。

〜〜

昼休み


ガラガラガラッ


美空:〇〇!無事!?ご飯食べ行くよ!

〇〇:あ、美空。ほんとに一緒の高校通ってたんだね。

美空:そうだよーギュッ ほら捕まって?屋上行くよ。

〇〇:いや....美空が僕にくっついてんじゃん...。

屋上


〇〇:....ここ..眺めいいな。

和:でしょ!いつもここで食べてたんだよ?

〇〇:......ふーん。

遥香:.....記憶...ちょっとでも戻んない?

〇〇:.....うん。戻ってないね。

遥香:そっかぁ...少しずつでもいいから、、思い出せたらいいね。

〇〇:....うん。

美空:戻すって言ったけど....やっぱり戻らなくてもいいかなぁ。

さくら:え、なんで!?

美空:だってー...今の〇〇の彼女は私なんですもんギュッ


美空は〇〇に抱きついた。


〇〇:ちょ、美空!

遥香:ま、〇〇君から離れて美空ちゃん!

美空:あれー?遥香さん嫉妬ですかぁ?

遥香:ちっ、違うよ//

〇〇:.....美空はもう僕と別れたんでしょ。離れて。

美空:えっ!?

〇〇:....ごめん、強く言い過ぎたね。


〇〇は美空の頭を軽く撫でて立ち上がり、松葉杖をつきながら屋上から出ていった。


遥香:........なんか....雰囲気違うよね。

さくら:うん.....私も思った。

和:.....なんか病院で話した時と雰囲気違いますよね。

禅:そうか? 俺が話した時はあんな感じだったぞ。

遥香:.......そう..。

〜〜

教室


〇〇:ふぅ.....。

男2:あれ、〇〇。禅達と一緒じゃないの?

〇〇:あぁ...僕だけ早めに来たんだ。

男2:ふーん。


〇〇は今日学校に来てから抱いていた疑問を男2にぶつけた。


〇〇:.....なぁ...この机に座ってる人ってずっと休んでるの?


〇〇は男1の机の前に行きそう言った。


男2:え.....あぁ....男1ね。うん、まぁ....ちょっとな。


明らかに言い淀んでいる。〇〇は男1の机に座り、机の中をまさぐった。


男2:あっ!ちょ...おい!


男2が止めようとしたが、もう遅かった。


〇〇:なんだ....これ。


机から出てきたのは、おびただしい量の画鋲と男1への罵詈雑言が書かれた紙だった。


男2:いや....えっと...これは..。

〇〇:この事を知ってるのは君だけ?

男2:......うん。

〇〇:ちょっと話を聞かせてくれないかな。

〜〜

それは三学期が始まってすぐの事だった。

〇〇が学校に来ていないとわかるやいなや、七華達が〇〇の学校の備品を破壊していった。机が新しい物に交換されていたのはそういう理由だった。来る日も来る日も2年1組の黒板には〇〇への悪評が書かれていた。2年1組の生徒達は先生が来る前に消して隠滅していた。あまり事を荒立てない為に。

だが、それに我慢ができない人がいた。


体育館倉庫


七華:あはは笑 次何する?

修也:でもまだ〇〇学校来てねぇんだろ?来てない時にいくらやってもなぁ...。

将人:〇〇の周りの奴らでもいじめとく?〇〇が学校来た時責任感じて病むでしょ笑

麻美:それいいね笑 誰いじめようかなぁ。


ガラガラガラッ


男1:....いた。

修也:ん?なんだお前。

男1:.......お前ら...もう〇〇に関わんのやめろよ。

将人:は?なに?俺らがなんかやったっての?証拠もないのに?

男1:......お前らがやったってのはわかってんだよ。俺の友達に手出してんじゃねぇよ...。

七華:何言ってんのこいつ笑 ダサすぎなんだけど笑

男1:うるせぇな! おら!

修也:痛った! てめぇ....覚悟しろよ。


男1は目の前にいた修也を殴っていた。


男1:あいつはなぁ!良い奴なんだよ!お前らみたいな奴が貶めていい奴じゃねぇんだよ!

〜〜

翌日


男2:おはよー....っておい!顔なんでそんな腫れてんだよ!

男1:え?あぁ...ちょっと転んじゃって...。

禅:すげぇ腫れてんぞ。大丈夫か?

男1:大丈夫大丈夫!気にすんな!

男2:そうか....。


その日以降、男1は隠していたが、隣の席の男2は変化に気づいていた。机の中は誰にも見せないし、机のの中の教科書を取った時、少し血が出ていることもあった。

男2は明らかにおかしいと感じ、意を決して話を聞く事にした。


男2:お前、最近なんかあったろ。

男1:ん?なんもねぇよ?

男2:聞き方を変える。誰に何されてんだ。いつからだ。

男1:っ....だからなんも・・

男2:なんかあった事はわかってんの。誰にも言わないから、ほら話してみ。

男1:.......誰にも....言うんじゃねぇぞ...。


男1は自分が七華達にいじめられている事を告白した。体は傷だらけだった。そして、これ以上他の犠牲者を出さない為にも、誰にも言わないでほしいという旨を告げた。


男2:.....わかった。.....でもお前は少し学校休め。

男1:えっ?

男2:ほとぼりが冷めるまで休め。立ち向かうことだけが正義じゃない。逃げることも戦略だ。

男1:.........。

男2:そもそも標的はお前じゃない。な?だから少し休め。

男1:....うぅ...グスッ....わがっだ...。


そうして男1は今日まで学校を休んでいる。

〜〜

男2:まぁ...今はあいつら学校に来てないし何してんのかわからないけど...

男2:〇〇は目立ってたんだよ。記憶失くしてわからないだろうけど....。

〇〇:..........そうか....。わかった。

男2:え?


〇〇はそれしか言わず、そのまま自席に着いた。

男2はそれに驚いたが、再び声をかける事は出来なかった。

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それから2週間程が経っただろうか。学校に来れば〇〇の記憶も戻るだろうと思っていたが、記憶は一向に戻らなかった。むしろ〇〇は遥香達と距離を置くようになっていた。

下校も〇〇はいち早く教室を出て家に帰っていた。

〜〜

遥香:.....和ちゃん、〇〇は家ではどんな感じ?

和:....普通です。前とおんなじ感じです。

遥香:....そう。

和:....あ...でもなんか最近忙しそうにしてます。

さくら:なにしてるの?

和:....なんかずーっとパソコンしてたり、誰かに電話してたり....なにしてるんだろ。

禅:....三年分の記憶ないから調べ物でもしてんのかな。

遥香:.......そうかもね...。

美空:まぁ...そろそろ記憶も戻りますよ。....思い出した時に自殺とかしないように気を付けていましょうね。

遥香:...そうだね。


この時はあまり深く考えていなかった。それは〇〇が記憶を取り戻す様子がなかったからだ。

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平穏に思えた日々も終わりが来る。それは突然ではなく、少しずつゆっくりと蝕んでいくように。

〜〜

飛鳥:じゃ、HR終わり。

遥香:先生、今日〇〇は休みですか?

飛鳥:うん。風邪引いたって。

遥香:...わかりました。

〜〜

昼休み


さくら:和ちゃん。今日〇〇君具合悪そうだった?

和:はい。朝に、今日は調子悪いから休むって言ってました。

さくら:....そう。どこかいつもと違う所とかなかった?

和:特に...ないと思います。

さくら:...なら良いんだけど。


どこか嫌な予感がしていた。それはさくらだけでなく、屋上にいる5人全員が。


遥香:...何も...ないよね。

美空:.....大丈夫です。〇〇なら....。

〜〜

少しの不安を抱えながら5人は帰路についた。


遥香:ただいまー。

遥香母:おかえりー。遥香宛に郵便来てたわよ。

遥香:郵便?

遥香母:机の上に置いといたからね。

遥香:....なんだろ...。

〜〜

さくら:ただいま。

さくら母:おかえり。さくらにお手紙来てたわよ。

さくら:手紙?

さくら母:机の上に置いといたわよ。

さくら:はーい。

〜〜

禅:ただいまー。

彩:禅兄おかえり。

禅:おぉ、彩早かったね。

彩:うん。 あ、禅兄宛に色々なんか届いてたよ。

禅:なんかって?

彩:手紙とか、なんかの書類とか?机の上に置いといたよ。

禅:わかったー。

〜〜

美空:ただいまー...って言っても誰もいなかった笑

美空:よいしょ....ん?郵便受けに何か入ってる。


美空は郵便受けを開けて入っている物を取り出した。

美空:.......これ.......急がないと!


美空はそれを見た瞬間、家を飛び出していた。

〜〜

和:ただいまー。


返事はない。


和:〇〇ー?元気ー?


返事はない。手洗いうがいを済ませてから〇〇の部屋へ行った。


和:入るよー。


ガチャ


和:〇〇ー、あれ、いない....。


部屋に〇〇はいなかった。ひどく静かな部屋に一つ違和感がある。


和:ん?なにこれ。


〇〇の机の上に一枚の封筒があった。封が開いている。和は興味本位でその中身を見た。中に入っていたのは一枚の手紙だった。


表紙にはこう書いてある。


和:「和へ」....これ私への手紙?


裏を見てみるとそこにはこう書いてあった。


「一緒に居れなくてごめんな。 〇〇より」

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              To be continued



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