秘密罪 #5
AM:5:00
〇〇:今日も早く起きちゃったな。本でも読むか。
5分後
〇〇:飽きたな。早めに弁当作っとくか。
5分後
〇〇:なんかやる気出ないな。うーーん。
〇〇:バット............振るか。
習慣なのか、未練なのか、結局素振りをする事でしか時間消費の方法が浮かばなかった。
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和:〇〇兄!おはよ!
〇〇:おー、おはよ。今日早起きだね。
和:なんてったって球技大会だからね!目が冴えちゃって。
〇〇:やる気あるのはいいけど、怪我するなよー笑
和:わかってるってー。あ、今日私早く行って練習するから。
〇〇:あいよー。
〇〇は登校中も、どうやって目立たないように球技大会を乗り越えるか考えていた。毎朝のように共に登校していた禅も、あの日以降、共にする事はなかった。
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生徒会長:今から球技大会を始めまーーす!学年問わず正々堂々と闘いましょー!
男1:しゃあ!絶対勝とうぜ!
男2:でも3年生とやるの嫌だな。
男1:なんで?
男2:いや今の3年生あんまいい噂聞かないっつーか。
男1:まぁでも禅いるからな!な!禅!
禅:うん。やるからには勝つよ。
やる気充分。学生のイベントだからといって、サボる者はほぼいなかった。
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第一体育館
男2:じゃ〇〇行こうぜ。最初はバスケか。
〇〇:うん。トーナメントだから負けたら終わりだよ。
男2:初戦は1年生か。補欠の出番ないくらい圧勝したります。
〇〇:まぁ頑張れ笑。
〇〇のチームは危なげなく初戦に勝利した。
第ニ体育館
禅:俺に寄越せ!
男3:禅!そのまま決めろ!
男1:しゃあ!ナイス!これでサッカー初戦突破か。
女1:キャー!禅君かっこいい!3年生に勝っちゃった!
1年生女:やっぱり禅先輩かっこいい!//
禅の勇姿を見るべく、多くの女子ギャラリーが集まっていた。
3年生男1:チッ!あの禅ってやつムカつくな。
3年生男2:やめとけ。甲子園出るような奴だから怪我させたら大変な事になるぞ。
3年生男1:めんどくせーな。2年1組か。 良い事思いついた笑。
午前中はバスケの優勝が決まる予定だった。2年1組は男女共に順当に勝ち進んでいった。
第一体育館 女子バスケ決勝
女2:賀喜さん!お願い!
遥香:任せて!
遥香が放ったシュートは見事にゴールに吸い込まれていった。シュートが決まったとと同時に笛が鳴った。
女2:やった!優勝だよ賀喜さん!なんでそんなに上手いの?
遥香:中学の時やってたんだよね笑。優勝できて良かった!皆んなのおかげだよ!
女2:賀喜さんがほぼ点決めてたじゃん!あと賀喜さんってなんか固いからかっきーって呼ぶね。
遥香:え!?かっきー?なんか嬉しいな。
女2:この後、男子のバスケの決勝だよね。2年1組残ってるみたいだよ。応援していこ。
遥香:うん!(バスケって〇〇君が出てるはず)
男子バスケ決勝
男2:決勝は3年生か、絶対勝つぞ。いや勝たなきゃならない。理由はわかってるな。
男4:あぁ、賀喜さんが応援に来ているからな。負けられるわけがねぇ。
男2:いくぞ!
2年1組は気迫に満ち溢れていた。可愛い子の応援とは、これほどまでにやる気を出させるのかと〇〇は驚嘆していた。
3年生男1:おまたせー。サッカー初戦負けちった笑。
3年生男3:おせぇよ。お前バスケも出る予定だったろ。決勝の相手は2年1組な。
3年生男1:2年1組?へーー笑。
審判:じゃ決勝始めます。この試合の審判は3年生が務めます。じゃ試合開始!
試合が始まりギリギリの攻防が続いたが、少し2年1組がリードする展開が続いた。そして前半が終了した。
男2:これ勝てるぞ!
男4:あぁいける!
〇〇達のチームは前半の結果で、勝ち筋が見え、一喜一憂していた。
3年生男1:おーい審判。ちょっと耳貸して。
審判:ん?なに? 面白そうじゃん笑おっけー。
〇〇は相手チームの男子が審判に何か言っているのを見逃さなかった。
審判:じゃ後半始めまーす。
後半開始早々に事件は起きた。
3年生男1:おら!
男2:うわっ!痛った!
ゴール下での接触、どこからどう見てもファールだったが、審判はファールを取らなかった。〇〇は目立ちたくはない。だが自分を取り巻く環境が不幸なのは許せなかった。
3年生男1:もういっちょ!
男2:痛った!ぐぁあぁぁ!
空中で接触し、肘を執拗に下ろされ受け身を取れなかった男2は着地時に足を捻ってしまった。
審判:タイム!戻れないようだったら選手交代ね。
男4:おい審判どこ見てんだよ!
審判:口答えすると退場にするよ。
体育館は不穏な空気に包まれていた。
審判:(点取ってたのこいつくらいだったし、こいつ潰せば余裕だな)
〇〇:すんません。男2と選手交代で。
男2:え?お前誰だよ。
〇〇:いいからいいから。休んでな。
前に気づかれなかった事を気づき、〇〇は前髪を上げて出場した。
女2:出た!いつの日かのイケメン!なんで私達のクラスに出てんの!?
遥香:(あれ、〇〇君だ。バスケ出来るのかな)
審判:じゃ3年生ボールから。試合再開!
3年生男1:誰だか知らないけど、怪我させちゃったらごめんね笑。
バシッ!
3年生男1:えっ?
気づいた時には、相手の手元にボールは無かった。
〇〇:おらっ!
コートの端から端までごぼう抜き。最後はダンクで決めた。
その後も〇〇を誰も止める事は出来なかった。
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昼休憩
男2:おぉ!禅!サッカーどうだった。
禅:もちろん優勝。バスケは?
男2:いや、優勝したんだけどさ。なんか知らねーイケメンがこのクラスの競技出場してさ。ダンクとか決めてた。
禅:へーすげぇ。(〇〇かな)
男2:まじあいつ誰だ?
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屋上
〇〇:疲れた....
遠藤:おっ、〇〇君じゃん。
〇〇:おーさくら。お疲れー。
遠藤:お疲れ。バスケ見てたよ。あれ〇〇君でしょ。
〇〇:よく分かったな。
遠藤:確かに。皆んなは分かってないかも。っていうか!
さくらは〇〇に近づき、前髪をめくった。
遠藤:かっこよすぎ。クラスで話題沸騰だったよ。
〇〇:んー。そんな変わるもんかなぁ。
遠藤:絶対〇〇君ってバレちゃダメだよ。
〇〇:なんで?
遠藤:モテちゃったら嫌だから///ボソッ
〇〇:え?なんて?
遠藤:な、なんでもない!
〇〇:?
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午後の部が始まった。球技大会は外競技、中競技合わせて四競技。それぞれ男女別に分かれている。
午前の部で2年1組は男女バスケ優勝。男子サッカー優勝。このまま順当に行けば総合優勝。残るはソフトボールとバレーだった。
だが、、、
男1:まさかバレー男女共に一回戦で負けるとは......
禅:しかもソフトボール女子も一回戦敗退。これ優勝できる?
男1:無理じゃね?
遥香:無理じゃないよ!今から男子ソフトボール決勝始まるんだけど、2年1組残ってるの!
禅:まじか!
遥香:それに優勝したら、総合優勝だって!応援しにいこ!
禅達は室内競技を行なっていた。遥香もその応援に行っていた為、外競技の状況を把握していなかった。
遥香:よし!間に合った。今から決勝かな。
禅:そうみたいだね....って、ギャラリーめっちゃ多いな。
男1:そうだな。でもなんか、雰囲気重くね。
決勝を前に大盛り上がり。という訳ではなかった。
男1:よー、男2。応援来たよー。
男2:あ、あぁ、ありがとう。でも必要なかったかも。
禅:え、なんで?
男2:俺の代わりにでてるイケメン、今のところ全打席ホームラン。
男1:まじ?
男2:大マジ。ピッチャーもやってるけど1点も取られてないしな。
男2の言葉は嘘では無かった。試合開始しても盛り上がる訳ではなく、不気味な雰囲気の中試合が行われた。
原因はなにを隠そう〇〇だった。バスケでアドレナリンが出た+久しぶりのソフトボール。野球とは言わないまでも、〇〇のリミッターを外すには充分だった。
というよりもう目がギンギンだった。
審判:えーっと、試合終了...。優勝は2年1組です..。
〇〇:(ふーっ。ん?あれ?..これやっちまったか?)
試合終了と同時に大歓声が起きた。今まで歓声がなかったのは、プロ野球で完全試合を目前に歓声が無くなるのと同じように、余りにも凄いことが起き、声が出せなかっただけだった。
男1:すっげーーー!!!まじすげぇ!これで総合優勝じゃん!
男1:てかお前誰!凄すぎんだけど。
〇〇:えーっとね、、あ!用事思い出した!
男1:あ!どこ行くんだよ!
男2:まぁいいじゃん。後からで。閉会式始まるぞ。そんでさ、午後始まってから〇〇いないんだけど、誰か知らない?
禅:あ、あぁ。〇〇なら腹痛いから保健室行くってイッテタゾ。
男2:なんで後半カタコトなんだよ笑。
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教室
〇〇:今頃閉会式か。終わったらHR。用意するもん用意して、屋上行ってるか。
〇〇はなにやら教室で準備をして、屋上で時間を潰していた。
〇〇:なんだかんだ言って、楽しかったなぁ。。
〇〇:野球.....やりてぇなーーー。
〇〇:友達も......欲しいな。
球技大会で再び芽生えてしまった感情。こんな人として当たり前の感情を高校2年生にして抑制するなど、辛いなんてものでは無かった。
〇〇:そろそろ教室戻るか。
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クラスメイト達は優勝した喜びを噛み締めながら、教室へ歩いていた。
男1:まじ優勝嬉しいわー。
男2:それなー。あのイケメンのおかげ。結局誰なんだろうな。
禅:ま、まぁそれはいいじゃん。それより喉乾きすぎて死にそう。
男1:水筒も午前中で空になったし、今日死ぬほど暑かったしな。
女1:あっづーい。死にそう。
球技大会の疲れと暑さで皆んなダウン寸前だった。
男1:HRめんどくせー。
ガラガラガラ
男2:うおっ!なにこれ!
全員分の机の上にはキンキンに冷えた飲み物とアイスが置かれていた。
禅:最高じゃん!誰が用意したの?
女2:わかんない!けど神!
皆んなは疲れ切った体に染み渡らせるように、アイスと飲み物を頬張った。ただ1人を除いて。
遥香:(この飲み物、〇〇君がショッピングモールで大量に買ってたやつだ。もしかしてこの為に?)
女2:あれ、かっきーなんで食べないの?
遥香:え、いやなんでもないよ!今食べる!
ガラガラガラ
男1:おー、〇〇。腹大丈夫か?
〇〇:うん。大丈夫だよ。優勝したんだってね。おめでとう!
男2:〇〇もアイス食え。あ、腹冷えるからやめとくか......って1人分足りない。
〇〇:あぁ、僕は良いよ。頑張った人が食べれば良い。
男2:そ、そうか?
遥香、禅:...............。
ガラガラガラ
飛鳥:皆んな!優勝おめでとう!飛鳥ちゃんは誇らしいぞ!
女1:先生ありがとー!あとアイスと飲み物もありがとね!
飛鳥:そんなん用意してないぞ。
女2:え、先生でもないの?じゃほんとに誰。
飛鳥:.......ま、ともかく今日は皆んな早く帰りたいでしょ。だからそれ食べたら解散!〇〇はちょっと廊下に来てー。
〇〇:はい。
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飛鳥:飲み物とアイス用意したの〇〇でしょ?
〇〇:いやー......
飛鳥:今日大活躍だったイケメンも〇〇でしょ。
〇〇:.....なんでもわかるんですね。
飛鳥:まぁ担任だからね。隠してる理由もわかる。
〇〇:..........。
飛鳥:でもね、皆んなが皆んな君を避けるわけじゃない。中学時代は避けられてきたかも知れない。
飛鳥:〇〇はさ、転校する時に何校にも断られたでしょ。
〇〇:はい。でもそれは当然だと思います。就職でもそうなる事は覚悟しています。
飛鳥:うん。それは覚悟した方がいいね。でもなんでこの高校は君を受け入れたと思う?
〇〇:それは.....
飛鳥:それはね、この学校の生徒なら君を救えると思ったからだよ。君はこの先、人の何倍も厳しい人生を送ると思う。だからこそ、この学校に入れたいと思ったのよ。
〇〇:..........。
飛鳥:君はもう気づいてる筈。君を君として見てくれる人がこの学校にはいるって事。
〇〇:それはわかっています。僕を僕として見てくれる人がいる。でも、そんな人こそ、僕のせいで不幸にしたくないんです。
飛鳥:それを共有してくれる人が友達なのよ。 もう自分を許してもいいんだよ。
〇〇:......少し考えてみます。
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男1:禅、じゃあなー。
禅:おう!じゃあな。
女2:かっきー、ばいばい。
女1:え、かっきーって良いな。私も呼ぼ。かっきーバイバイ!
遥香:うん!バイバイ!
皆んな帰り支度を終え、帰る者がほとんど。教室には、禅と遥香、〇〇しか残っていなかった。
〇〇:(さてと、帰るか)
〇〇が席を立とうとした時、
遥香:〇〇君待って。
〇〇:え、なに?
禅:俺と遥香から〇〇に話がある。
いつもなら関わるなと言って帰る〇〇だったが、飛鳥の言葉をずっと脳で反芻していた為か、拒否することが出来なかった。
〇〇:......わかった。なに?
遥香:..〇〇君は私達にもう関わるなって言ったよね。
〇〇:うん。
遥香:〇〇君と関わると皆んな不幸になるって。実際今までもそうだったって。
〇〇:そうだね。
遥香:だからね、私達決めたの。
〇〇:....うん。(結局お決まりのストーリーだ)
遥香:私達、〇〇君と友達になる事にしたの。
〇〇:今までありがとう。君達といれて楽しかった..........って、え!?今なんて!?
禅:だから友達になるの、〇〇と。
〇〇:え、話聞いてたんだよね。
遥香:うん。
〇〇:じゃ...なんで?
遥香:君と関わってきて、君が底抜けに優しい事がわかった。でもそれは父親が殺人犯だからその罪悪感で優しいと思ってた。だけど街で見たかけた時、君はただ困ってたって理由だけで人を助けてた。もう関わらないって言ってた筈の私の事もね。
〇〇:.......。
遥香:結局君は、罪悪感とか関係なく優しいんだよ。私達はそんな君と友達になりたいと思った。君と関わって不幸になるより、君と関わらない方が私達は不幸なの。
禅:俺らは気にしないぞ〇〇。なにより話してくれた事が嬉しかった。
遥香:私は前に、私と君は似てるって話した事があったよね。
〇〇:うん。
遥香:私ね。前に人を見殺しにした事があるの。
〇〇:....え?
遥香:中学の頃、私は内気で友達なんて禅と禅の妹と和ちゃんって子しかいなかった。義妹じゃなくて、禅の実の妹ね。
遥香:禅の妹と、和ちゃんと3人で旅行する事になってね。その時に.....禅の妹が車に轢かれたの、飲酒運転だったかな....。
遥香:私は内気で周りの人に助けを求める事が出来なかった。その時、まだ禅の妹に息があったかはわからない。けど....あの時すぐに助けていればってずっと思ってた。
〇〇:けどそれは君のせいじゃ.....
禅:俺もそう言ったよ。でも遥香は変わった。その日から、無理にでも社交的にするようになった。クラスの静かの子にも声をかけるようになった。皆んながやらないような事も率先してやったんだ。あの日の償いの為に。
遥香:でも、自分が自分じゃなくなるような気がした。段々辛くなっていった。そんな時に、君が転校してきたの。
遥香:私と似ていると思った。けど私なんかより全然辛そうだった。
遥香:その時ね、私償いとかじゃなくて、純粋に君を助けたいと思ったの。そして屋上で会った時、私の事も助けて欲しいと思ったの。これが私の気持ち。
禅:辛い時、助けてくれるのは友達だぜ?家族にも頼れないんだったら、なおさらな。
しばらく沈黙が続いた。〇〇は何度か顔を上げるも、2人はずっと、〇〇を見つめていた。
〇〇:........本当に......いいのか?
遥香:私達が君と友達になりたいって言ってるの。私は君に秘密を打ち明けた。君も私達に秘密を打ち明けた。それが全てだよ。
禅:もう自分を許してやっても良いんだぞ。
その言葉を皮切りに、〇〇の目から涙が止まらなかった。子供のように、泣きじゃくっていた。そんな〇〇を2人はまた何も言わずに見つめていた。
〇〇:...ありがとう。本当に、ありがどうグスッ
禅:泣きすぎだっての笑。
遥香:ほんと笑。今までの〇〇君だったら想像できないね笑。
〇〇:....うるせぇよ。
禅:あ、いつもの〇〇だ笑。 ほら外も暗くなってきたし、帰ろうぜ。
遥香:うん!帰ろー!もちろん〇〇君も一緒にね!
友達として共に帰り道を歩く。そんな学生ならば当たり前の事が〇〇にとって何年振りなのか。ただただ〇〇はその喜びを噛み締めていた。
その帰り道で見た星は生涯で1番綺麗だった
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To be continued
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