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秘密罪 #1

AM 5:30

目覚ましは6時半に設定したのだが、早めに目が覚めてしまった。


〇〇:習慣って抜けないもんだな。もしかして緊張もしてんのかな。


東京生まれの〇〇は、今日付けで高校2年生になったが、東京から離れた学校に転校した為、今日は転校初日になる。


〇〇:まだ早いけど、朝飯作るか、ついでに昼用の弁当も作っとくか、、そんで和さんの事は何時に起こせばいいんだっけ。


〇〇が和さんと呼んでいるのは、義妹の井上和。〇〇の母と、和の父が再婚した為、妹になった。再婚して妹ができると聞いた時から一定の距離を保って接しようと決めていた。

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AM7:00

和:〇〇さん、起こしに来てくれるかな...



部屋の扉がノックする音が聞こえ、慌てて和は目を閉じた。


〇〇:和さん、7時になりましたけど、起きてますかー?


返事はしない。


〇〇:和さーん、起きてくださーい!朝ご飯冷めますよー。


なんだか申し訳なくなり、目を開いた。


和:分かりました。今行きます。


部屋に入ってきてくれる事を期待していた為、ずっと扉越しに行われたやり取りに、朝から少し気分が下がった。

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〇〇和:いただきます!

味噌汁とご飯。ウインナーと目玉焼き。いわゆる一般的な朝食を頬張った。

〇〇:美味しく出来てます?

和:すっごく美味ひいです!お味噌汁の味も丁度いいでふ!

〇〇:あはは、ありがとう笑。でも口の中の物無くなってから喋ってください笑。

和:恥ずかしい// 次は私が作ります!期待しててください!

〇〇:そうしてくれるとありがたいです。あ、弁当作ったから持っていってくださいね。

和:えぇ!?お弁当も作ってくれたんですか?ありがとうございます!

〇〇:これくらいなら全然やりますよ。じゃ僕は準備できたら学校行くから。和さんも遅刻しないようにね。


和:え..あ...はい。わかりました...。

和:(一緒に行きたかったんだけどな。それにまたさん付けだし。距離を感じる。なんとか仲良くなりたいなぁ)


そんな事を思いながら、和は朝の支度をした。

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和と〇〇は2人暮らしをしている。
和の父は東京に転勤で来ており、そこで〇〇の母と知り合った。〇〇の両親は離婚しているが、和の母は若くして病気で亡くなっており、この歳頃の子供には両親が必要だろうとのことで、早々に再婚を決意した。
(ここからは和の父を義父と表現します)

義父が転勤を終え、義父の地元にある本社に戻ることになった為、この機会にと〇〇と母も共に、義父に着いていくことにした。

だが、急遽、義父の転勤が再び決まった。〇〇と和は学校も決めていた為、2人暮らしを余儀なくされた。2度目の長期出張で体が心配ということもあり、母は義父に着いて行くことになった。和は元々、義父の地元の家で1人暮らししていた為、その家に〇〇も住むことになった。

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AM8:20 乃木高校


昇降口の前には、クラス名簿が貼られ、それを見るべく人だかりができていた。

ワイワイガヤガヤ、また一緒のクラスになれた、彼氏と一緒のクラスになれなかったなど、感嘆の声や不満の声が上がっている。

??:えーっと、よく見えないな。人が多い!見たなら早く退いてよ〜。

??:おはよー遥香。なんか大変そうだな笑

遥香:あ、禅!おはよー。人多すぎて全然クラス名簿
見れないの。



禅:じゃあ代わりに見てくる。待ってて。

遥香:ありがとー!助かる!


私は賀喜遥香。そんで声を掛けてきたのは中学から一緒の小川禅。高1の時も一緒のクラスだった為、仲が良い。というか本当に仲が良い呼べる男友達が禅しかいない。


禅:おまたせー、遥香また一緒のクラスだったよ。2年1組。

遥香:ほんと!?良かったー。友達いて笑。

禅:俺も一緒で良かった。他にも友達いっぱい居たし。

遥香:禅は友達多いもんね。学校のほとんどの人が友達っていうレベル笑。

禅:遥香も友達多いじゃん笑。そういえば同組で名前知らない人いたなぁ。

遥香:本当の友達って呼べるのは、禅だけだよ。それより名前知らない人? なんて名前?

禅:井上〇〇って書いてあったけど。遥香知ってる?

遥香:聞いたことないなぁ。もしかして転校生だったりして。

禅:遥香でも知らないかぁ。まぁクラス行けばわかるか。とりあえず行こうぜ。

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〇〇:あんまり目立たないように生活しよう。その為に目元まで前髪伸ばして顔見えづらくしたし。あーでも同じクラスに陽キャとか居たら嫌だな。まぁ内輪で友達出来てるだろうし、転校生にはあんま声掛けないか。


そんな事を1人ぶつぶつ呟きながら学校へ向かった。


学校に着き、まずは職員室に向かった。


〇〇:失礼します。今日からお世話になります。東京から転校して来ました。井上〇〇です。

先生1:お!転校生君か。えーっと、君は....2年1組だね。あそこの左から2番目の机の先生が担任の先生。挨拶しておいで。

分かりました。と言い左から2番目の机に向かった。

〇〇:お仕事中すみません。今日からお世話になります。井上〇〇です。

??:おー君が噂の転校生君か。私は担任の齋藤飛鳥です。よろしくね。

〇〇:よろしくお願いします。(綺麗な先生だな)
ていうか噂ってなんですか。

飛鳥:いやーだって、中学と高1の時の成績見たらねぇ。あれは誰だって驚くでしょ。そして君の過去も色々聞いたしね。


その言葉に〇〇はひどく驚いた表情を浮かべた。


〇〇:生徒には言わないでくださいね。絶対に。

〇〇は少し凄んだ表情で言った。

飛鳥:言わない言わない。まぁいずれバレるとは思うけど。そんときは相談しな。とりあえず今からHR始まるから着いてきて。

〇〇:はい...。(この先生。僕の過去を知ってるのか。気を付けないとな。)

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2年1組

男1:お!禅!クラス一緒だな!よろしく!

禅:おー、よろしく!授業中寝んなよ?笑

男1:いやお前もな笑。

女1:禅君!また一緒のクラスだね!よろしく!

禅:よろしく〜。授業中寝てたら起こしてね笑。

全員の名前覚えてるのかってレベルの量の友達に禅は挨拶されていた。

遥香:(相変わらず禅は友達多いな)

男2:おい、賀喜さん一緒のクラスだぞ。これは勝ちだな。

男3:そうだな。成績良いし、可愛いし、頼りになるし、悪いとこないよな。

女2:賀喜さん!クラス一緒だね。よろしく!

遥香:うん!よろしく!

女3:また一緒のクラスだね!また勉強教えてよー。

遥香:教える教える!いつでも言って! 

女3:ありがとー!

遥香:(良かった。まだ皆んなに頼られてる。このまま嫌われないと良いな。)



少し時間が経ち、クラスの騒々しさも落ち着いてきた頃、扉が開いた。


ガラガラガラ


飛鳥:静かにしろぉ!飛鳥ちゃんがHRを始めるんだからな!皆んなが静かになるまで10ぷ...

禅:先生、もう皆んな静かですよ

飛鳥:くっ...カッコよく行きたかったのに。まぁいいや。そんなことより、今日はなんと...重大報告があります。


男1:え、なになに。もしかして転校生とか!?


禅と遥香は朝の事もあり、無言で目を合わせた。


飛鳥:なんとこのクラスに転校生がやってくるのだ!


クラス全員の歓声が響いた。


男2:まじか!やったぜ!先生、女子男子どっち!

男3:可愛い子だったら、このクラスの事一生忘れねぇ思い出になるわ。

女2:えーイケメンが良いー。このクラス、禅君しかイケメンいないしー。


男全員:んな悲しい事実を突きつけんな。泣くぞ。


飛鳥:転校生は男だ!イケメンかどうかは見て決めろ。 


飛鳥:じゃ入って良いぞー


先生がそう言ってから、クラスの雰囲気は少し緊張した空気感に変わった。


〇〇:(教室の外に声聞こえてるよ....。入りずらいな。
まぁ.....入るか。)


ガラガラガラ


〇〇:東京から来ました。井上〇〇です。よろしくお願いします。

〇〇は深くお辞儀をし、悪い印象を与えないように努めた。


クラスからは一拍、間をおいて拍手が響いた。


〇〇:(よし、まぁ及第点ってとこかな)

飛鳥:どうだ皆んなイケメンか?〇〇は。



クラス全員:(前髪で顔見えねぇぇぇええ!!!)


しばらく静寂が続くと、それを切り裂くように先生が口を開いた。


飛鳥:まぁ皆んな仲良くするように。〇〇、席は賀喜の隣空いてるから賀喜の隣ね。あそこの空いてる席。


〇〇:分かりました。


〇〇は席まで移動し、着席した。


飛鳥:じゃ今日は始業式やってお昼挟んで、連絡とかして終わりだから。 じゃ始業式まで各自自由。



その言葉を皮切りに、いくつかの友達で集まりグループが出来ていた。


〇〇:(本でも読むか)



話す友達もいない〇〇は何回読んだのかも分からないレベルでボロボロな本を取り出し、自分の世界に入った。



遥香:(どうしよう。とても気まづい。話しかける?いやでもめっちゃ本読んでるし。でも転校初日で困ってる事あるかもしれない。ここはいっちょ話しかけたりますか!)


遥香:あのー....〇〇君だっけ。東京から来たん…

〇〇:無理して話しかけなくても良いよ

遥香:あ...いや無理してるとかじゃ...ごめん。

〇〇:気にしないで。


遥香:(やっちゃったぁぁぁぁ!!!やっぱり話しかけちゃダメだったかぁ。隣の席の人に早々に嫌われちゃったかなぁ)


〇〇:(これでいいんだ。今友達を作ってもどうせ離れて行くことは分かってる)


遥香:(でもダメ。私は変わるって決めたんだから。困ってる様子だったら助けて、友達がいないようだったらなってあげるんだ。また話しかけよう)


そんな2人を遠くから見つめている人物がいた。


禅:(これは面白くなりそうだ笑。それにしても、あの転校生どっかで見た事あるんだよなぁ)

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教室にいるのも気まずかった〇〇は、読書をやめ校内を探索することにした。

〇〇:ここは1年生の教室か。

少し覗いてみると、和が楽しそうに女子と話しているのが見えた。

〇〇:僕とは全然違うなぁ。まぁ顔整ってるし、社交的だから当たり前か。


ちょっとした劣等感を覚えながら、階段の登った。

〇〇:ここは...屋上か。

屋上へと扉には立入禁止の張り紙があったが、扉が少し開いていた。

〇〇:入ってもバレないだろ。つーか気持ちいいなここ。暇な時は屋上で決まりだな。


独りで喋っていると、下の方から女性の声が聞こえた。


??:君独り言多いね。


〇〇:うわっ!びっくりした!


彼女はクスクスと笑い、扉の横に座っていた。


??:君転校生だよね。一緒のクラスだ。私遠藤さくらって言います。よろしくね。


〇〇:え..あぁよろしくね。でもなんで屋上にいるの?立入禁止って書いてるけど。

遠藤:それを言うなら君もじゃん。私は良くここに来るの。クラスに居場所がないし。


深い理由がありそうだったが、聞く気にはなれなかった。


〇〇:そっか。まぁ色々あるよな。

遠藤:君は?何で来たの?

〇〇:探索してたら、扉開いてたから。クラスにいるの気まづいし。あと始業式サボろうと思って。

遠藤:悪い子だね。転校初日でサボるなんて。とか言って私もサボるつもりだったんだけど。


友達を作らないつもりだった〇〇だが、この子の前では、なぜか居心地が良く色々話してしまう自分がいた。

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始業式が終わり、教室に戻ると先生に怒られたが、適当な理由をつけ、何とか難を逃れた。


飛鳥:よし。今から委員長決めるよー。誰かやりたい人いる?


遥香:はい。私やります。

飛鳥:じゃあ女子は賀喜ね。男子は?誰もやりたい人いないんだったら、じゃんけんね。

男1:えーー、禅やれよー。

男2:禅が適任だって。賀喜さんとも仲良いし。

禅:俺は部活忙しいから無理。潔くじゃんけんで決めようぜ。


クラスの男子が渋々拳を突き上げ、じゃんけんの音頭をとった。


結果は一発で決まった。

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職員室

飛鳥:じゃ委員長の役割はこんな感じね。賀喜は去年もやったからわかると思うけど。〇〇は賀喜から教わるように。

〇〇:分かりました.......

飛鳥:じゃ今日はこれで帰って良いぞー。あ、あともうサボるなよ。

〇〇:はい。(サボりってバレてんのかよ)

〇〇遥香:失礼しましたー。


ガラガラガラ

遥香:えっと..〇〇君。これからよろしくね?

〇〇:うん。よろしく。じゃ僕は帰るね。また明日。

遥香:あ..もう帰るの?学校とか案内しようと思ったんだけど。。

〇〇:始業式の時間に見て回ったから大丈夫。


そう言って〇〇はその場を後にした。

遥香:むぅ..なんか避けられてるような気がする。私なんかしちゃったかなぁ。

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夕飯の食材を買い、帰路に着いた。その途中、今日あった事を考えていた。


〇〇:はぁ、なんでじゃんけん負けるかな。よりによって一番目立つ役職....


〇〇:ほんとは皆んなと仲良くしたいけど、恋人とか作ってみたいけど、そんな権利、僕にはないよな。だって....



『僕は殺人犯の息子なんだから』


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                                          To be continued












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