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凡豪の鐘 #13



〇〇:ぐがー.....すーっ.....ぐごーっ......んぅ....

先生:ううんっ!💢


先生が大きな咳払いをする。


〇〇:ふがっ! んぅ.....。


一番後ろの席で、机に足を乗せ、教科書を顔に乗せ仰向けで寝ていた傍若無人な男は目を覚ます。


先生:....授業はしっかりと聞くように....。

男1:あれ?なんか今日先生優しくね?ボソッ

女1:うん、いつもだったらもっと怒るのにボソッ

美月:..............。

皆が訝しげにしていた。だが、先生が怒りにくいのにも理由があった。

〜〜

男1:あ、考査の点数貼り出されてんじゃん。

男2:んなもん見たくもねぇわ笑 はよ行こう。

男1:そうだな。......ん?待て待て......一位〇〇じゃん...

男2:えぇ!? あいつって頭良かったっけ!?小説しか書いてねぇじゃん!

〜〜

昼休み 屋上


〇〇:...............。


美月に作ってもらった弁当を早々に食べ終え、空を見上げる。雲一つない空を見ると、まるでこの世界には自分しかいないように感じた。


律:よーっす。

〇〇:ん。


どうやら、この世界には自分一人では無かったようだ。


律:お前さ!頭良いのかよ!


屋上にくるやいなや、律は〇〇に迫った。


〇〇:え? あー......高校の範囲終わってるだけだよ。

律:まぁじ? なんで?そんな真面目なタイプじゃないだろ。

〇〇:.......中学の時に色々あったんだよ。

律:へー....。ま、いいや今度勉強教えてくれよ。

〇〇:嫌だよ、めんどくせぇ..........あのさ、律。

律:ん?

〇〇:聞きたいことあんだけどさ、昨日茉央って家でどんな感じだった?

律:茉央?昨日は......会ってないな。ずっと部屋に篭ってたし、朝も早く行ったみたい。 茉央がどうかした?

〇〇:いや.....なにもないならいいんだ。


ずっと嫌な予感がしている。それは昨日の夜から。

〜〜

昨夜


〇〇:茉央!? どうした!?


神社にいたのは、びしょ濡れで体中に痣がある茉央がいた。どうやら制服から体育着に着替える途中だったらしい。


茉央:......もう...着替え見んといてよ...

〇〇:あ、いや...すまん....じゃなくて!どうしたんだよ!

茉央:あぁ......さっき転んでもうてな。

〇〇:.....転んだだけじゃそんな痣できねぇぞ。

茉央:は、派手に転んでもうたんや!

〇〇:じゃあ、なんでびしょ濡れ?

茉央:み、水溜りで転んだんや。

〇〇:ここ最近雨降ってないけど?

茉央:そ、そこだけ雨降ってたんや! もう帰る!


茉央は荷物を持って〇〇の横を通り過ぎて行った。


〇〇:茉央!!

茉央:ビクッ......な、なんや。


〇〇の怒号にも似た大声で茉央は足を止めた。


〇〇:.......俺の助け、いるか?

茉央:...................。


茉央は再び何も言わず、駆け出して行った。何かを隠していることだけは確かにわかった。

〜〜

〇〇:......茉央のこと、よく見とけよ。

律:え?

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放課後 


美月:...........なんか今日やけに静かだね。

〇〇:ん?俺?

美月:うん。小説も書いてないし。

〇〇:.....お前よく見てんなぁ...

美月:別に見てたわけじゃないから。


実際、小説に向かう手が、何故か乗らない。


〇〇:.......今日茉央は?

美月:茉央ちゃんは......今日も来ないみたいだね。

〇〇:........連絡は?

美月:ない。

〇〇:.....そか。


なんとなく暗い雰囲気が部室内に木霊する。そう思っているのは多分自分だけなんだが。

自分でも辟易するほど、昔から勘や予感が当たる。悪い予感も良い予感も。全て。

どうか、今回だけはこの予感が外れてくれと心の中で願っていると、部室の外で声が聞こえた。


夕華:ねーねー、あそこまでやっちゃって大丈夫?

真凛:大丈夫っしょー。ライバルは減らしとくもんだよ。

奈央:い、いや.....やめた方が.....

真凛:あ?なんか文句あんの?奈央。

奈央:あ、ご...ごめん...

夕華:ギャハハ笑 真凛顔怖いって笑 そんなんでアイドルなれんの?

真凛:えぇー? だってぇ、わたしぃ、可愛いし?

夕華:いけそう笑 真凛性格悪いけど、顔可愛いもんねー。早くアイドルになってイケメン紹介してよ笑

真凛:任せなって。性格悪いのなんて隠せるから笑

奈央:................。


そんな話をしながら女子生徒は部室の前を通って行った。


美月:........なんか感じ悪い会話だったね。

〇〇:.....そうだな。


〇〇の中では、点と点が線で繋がった気がした。

〜〜

美月:結局茉央ちゃん来なかったね。

〇〇:......そうだなぁ。

美月:何かあったのかな。

〇〇:.....知らね。

美月:知らねって......意外に薄情なんだね。

〇〇:意外ってなんだよ。

美月:いや...結構人の事も見てるし、優しいとこもあるから。

〇〇:....山下さぁ...助け求めてないのに、助けられたら迷惑だと思わない?

美月:え?....うーん...まぁ....迷惑っていうか....他人に迷惑かけたくないから助けを求められないっていうのもあると思うけど。


〇〇は寝ていた体をゆっくりと起こした。


〇〇:.....なるほど....なぁ、律ってまだ空手続けてんの?

美月:律君? あー....なんか去年全国一位かなんかで表彰されてたよ。クラブチームかなんかで。

〇〇:.......よし....俺ちょっと先帰るわ。

美月:え?

〇〇:....近い内にまた茉央を部活に戻すから。

美月:え? やっぱり茉央ちゃんになんか・・

〇〇:さいなら。


ガラガラガラッ


〇〇は話の途中で帰ってしまった。


美月:まだ話の途中なのに💢

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五百城宅


律:たっだいまー。

茉央母:おかえりー。ご飯もうすぐできるから待っててね。

律:うぃーす。.....あれ、茉央もう帰って来てんの?

茉央母:あぁ....でも...部屋から出て来てくれないの...

律:ふーん....なんかあったんかな。

茉央母:ちょっと様子みて来て貰える?

律:りょーかい。


律は階段を上がり、茉央の部屋へと向かう。向かう途中で〇〇の言葉を思い出した。「茉央のこと、よく見とけよ」 なんとなく、嫌な予感を孕みつつ、部屋をノックした。


コンコンコンッ


律:茉央ー? 入って良いか?

茉央:....あかん。


扉越しに声が聞こえる。


律:なんでだよ。お母さんが、部屋から出てこないって心配してるぞ?

茉央:....ええから。

律:............とりゃ!


律は隙を見て強引に扉を開けた。


律:うぉっ!?


部屋を開けた途端、鼻に異臭が襲って来た。牛乳を拭いた雑巾のような、そんな臭い。


律:ま、茉央?


部屋に茉央は見当たらなかったが、ベットのに人一人分の膨らみがあった。


律:茉央、なんかあったのか?

茉央:....なんもないから....。


声色は明らかに涙ぐんでいた。


律:.....この臭い、なに?

茉央:......なんでもないから。

律:.......助けて欲しかったら言えよ。また来る。

茉央:............。


バタンッ


たぶんこれ以上聞いても何も言わないと悟った。ただ一つ明らかになったのは、茉央に何かあったという事だ。

母親になんと報告すれば良いか迷っていた時、スマホが鳴った。


ブーッ ブーッ


画面に表示されていたのは....天鐘〇〇。


律:"はい。もしもし"

〇〇:"おー、悪りぃな、急に電話かけて"

律:".....あぁ、大丈夫、そんでなに?"

〇〇:"......茉央、大丈夫か?"

律:"んー.......何があったかはわかんねぇけど...大丈夫ではねぇかも"

〇〇:"........なぁ、律"

律:"ん?"

〇〇:".....プロット、書き換えたいんだけど"


律はその言葉を聞いた瞬間、体が固まった。


律:".....まじ?"

〇〇:"まじ"

律:"........バレる確率は?内申に響いたら困るんだけど"

〇〇:"バレたことなかったろ"

律:"そうだけど....."

〇〇:"お前がやんなかったら俺一人でやる"

律:".....んもー! わぁったよ! やるよ!"

〇〇:"それでこそ律だ。じゃ、また後で話そう。それまで茉央は学校休ませとけ、じゃあな"

律:"あ、ちょ、待っ・・"


プツッ 電話は切れた。


律:あいつ......始めから断らないって分かってたろ....。

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何日か経った。もう6月が目前に迫っていた。

〜〜

1年教室


1年男1:なぁなぁ!真凛ちゃんってアイドルのオーディション受けるんでしょ?

真凛:えぇ!? ちょっとぉ、誰から聞いたのぉ?

1年男1:夕華ちゃんから聞いたよ!

1年男2:あ!それ俺も聞いた。

真凛:もー! ちょっと!言わないでって言ったじゃん!

夕華:ごめんて笑 だってこんなに凄いことなんだから皆んなに知ってもらおうと思って。

真凛:もぅ.....皆んな...応援してくれる?


潤んだ瞳で上目遣いをする。


1年男1:可愛い....もちろん!応援するよ!

1年男2:俺も俺も!男子皆んな応援してる!

真凛:えへへぇ、嬉しいな。ありがと!


真凛はウィンクをしてみせた。


1年男1:ていうかさ、最近茉央ちゃん休んでるよね。

真凛:茉央?

1年男2:あ、そういえばそうだね。中学の時から真凛ちゃんと茉央ちゃんって仲良かったよね。なんだ休んでるか知ってる?

真凛:なんかぁ....具合悪いって言ってたかなぁ...心配....様子見に行ってみるよ!

1年男1:優しいんだね!

真凛:友達だもん!

〜〜

昼休み 柔道部 部室


ガラガラガラッ


真凛:よーっす。

悠真:おー、お疲れ。

夕華:お疲れー。

真凛:また授業サボってここでゲームしてたの?

悠真:そうだよww お前も来ればいいのに。

真凛:私はクラスでの立ち位置ってもんがあるのー。

晴人:ははww めんどくせぇ。

大和:あれ? 俺の奈央ちゃんは?

真凛:んー、奈央は今日休み。

大和:えー....んだよもー...茉央ちゃんも休みなん?

真凛:休み。あんたらがやりすぎたんじゃない?

悠真:真凛がやれって言ったんじゃねぇかww まぁ、いいや、次の玩具探そ。


坂乃高校 悠真 晴人 大和

柔道部所属。現在は柔道部は3人しかいない。だが、圧倒的な実力で全国の個人戦も、この3人で一位、二位、三位を独占している。

柔道界の期待の星。........そう思われているのは、世間でのみ。この学校で生活していれば、柔道部に関わってはいけないということは、全員が承知である。

黒い噂が絶えない。そもそも授業には出ないし、柔道部に関わった人間は学校に来なくなる。どこかへ転校していく。


悠真:真凛、アイドルになるってほんとか?

真凛:うん。私オーディション出すよ。

悠真:えー.....アイドルなったらいつお前とヤればいいんだよ。

真凛:隠れていつでもできるって! 

悠真:ならいいけどさー.....まぁ、いいや、アイドルになるまでヤりまくるからな。

真凛:はいはい。

夕華:あ、そうだ! ねぇ聞いてよ晴人!

晴人:んー?

夕華:なんか最近誰かにつけられてんの!

晴人:あぁ? つけられてる?

夕華:そうそう! 帰り道とかにさ!一瞬だけ見たんだけど......なんか.....和服?っぽいの着てた。


その言葉を聞いた瞬間、柔道部の3人の動きが止まった。


悠真:....おい夕華。顔は見えたか?

夕華:え?....い、いや暗くてわかんなかったけど...

大和:......まさかの..."和僧"復活?

晴人:だったらおもろいなぁww

悠真:まぁ...とりあえず夕華、またなんかあったら報告して。

夕華:え? わ、わかった。

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             To be continued









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