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医療の現場を経てデータを解析することの意義とは │ データサイエンティスト瀬川さんインタビュー

テックドクターの湊です。テックドクターはウェアラブルデバイスを中心としたセンシングデバイスのデータから病気・病勢の指標となるデジタルバイオマーカーとデータを元にしたプログラム医療機器の開発をしています。
今回は、医療現場と大学での研究を経てデータサイエンティストとして入社された瀬川さんのインタビューです。
テックドクターの雰囲気と解析のあれこれなど感じて頂けたら嬉しいです!

医療現場を経験し、スタートアップへ

── ここまでの経歴などを教えてください

大学で理学療法士の資格を取り、卒業後に大学附属病院の理学療法士として働きながら、大学院の研究室に所属し並行して研究を行なっていました。
大学の附属病院で1年目は急性期病棟、2年目以降は回復期の担当として、主に回復リハビリ中の患者さんを担当していました。
その後、東京の系列病院の新設クリニックに移動、そのさらに数年度には転職して横浜の訪問リハビリステーションで働きました。
一方で、統計の勉強にも興味を持つようになり、データを活用して、そもそもリハビリ自体を必要とするようになる前の予測や予防に活かしたいという思いを持つようになりました。

理学療法士として働いていた頃の瀬川さん

── 技術的な興味はどのように持つようになったのですか?

「運動コントロール」「運動学習」
理学療法の一つに「運動学習」という分野があります。患者さんにとって新しい動きを学習するときや、脳卒中など中枢神経系疾患のリハビリテーションで活用され、知覚と運動の結びつきや運動コントロール方法などに着目している分野です。
一般的に理学療法士は歩くことなどを研究することが多いのですが、私は音楽が好きだったので、その興味から運動学習と絡めて鍵盤の上での指の制御を強さやリズムの正確さなどを測るという、運動制御領域の研究をしていました。具体的にはMIDIキーボードというものを使い、打鍵と打鍵の間のインターバルや叩く強さをデータで収集し、解析を行いました。
初めはエクセルやSPSSで計算していましたが、より複雑な解析のためにRなども使ったりしました。
リハビリは主に、失われた運動機能を取り戻すようにサポートしていきますが、その際にどのように学習して取り戻していくかについて取り組む中で、もっと統計やデータを活用して、より早期発見に繋げたり、効果的なサポートを行えるようになりたいと興味を持つようになりました。

── 医療現場の仕事

理学療法士は、立つ・歩く・寝る・起き上がる という行動をサポートしたり回復させる為のお手伝いをするのが仕事ですが、必ずしも体の機能回復だけではなく、道具をうまく使って生活できるようにすることも重要です。 
場合によっては本人の思いに合わせて、機能を回復させなくても杖や歩行器を使ったり、家の環境を変えるよう指導することもあります。
病院では、1日に6〜7人 訪問リハビリの仕事の時は月に20人くらいを担当していました。

入院している患者さんは回復状態が良くなる一方で、訪問リハビリや通院で行うリハビリの場合は残念ながら付きっきりでサポートすることはできません。会った時には「頑張ろう」となる患者さんも、普段の状況を見て差し上げることはできません。
自宅でどうやったか、その結果どうなったかを説明できる人は良くなりやすいのですが、本人自身が痛みや感覚を説明できないケースも多くあり、そうした場合の対応はさらに難しく、時間がかかります。

医療従事者として多忙でしたが、人のためになる仕事は楽しかったです。仲間と一緒に働き、研究も夜まで一緒にやり、早朝からまた病院に行くという充実した日々でした。

過去の経験を活かし、データ解析で生み出す価値

── テックドクター入社の経緯ときっかけ

入社の経緯は、訪問リハビリに従事する中で、もっと重症化する前に介入できたら、というやり切れない思いがあったことです。予防や予測をできる可能性は感じていたので、そのテクノロジーに取り組んでみたいと思いつつ、医療機関にいる間はどうしても優先順位を上げることができません。
そんな時にテックドクターのデータチームリーダーの深見さんから声をかけられたことが直接的なきっかけでした。
話を聞いて、ウェアラブルのデータで生活に特化したデータが取れる、患者さんの状況を推測することができる!と思いました。
転職は他には考えていなかったのですが、自分の興味に合った選択を取れたと思います。

── 普段の解析内容について

普段は、リーダーの深見さんやメンバーのみんなと和気あいあいとアイデアを出し合いながら、いろいろな取り組みをしています。
とにかくデータが大量にあり、多くの切り口で解析できる可能性があるのが楽しいと感じています。
普段は、研究機関や企業研究の解析を通してデジタルバイオマーカーの開発に従事しています。特に最近は、女性の不調に対する解析を担当することが多く、産後うつ・PMS・月経痛など女性ホルモンに関わる解析はかなり多く取り組んでいます。
多くの方が悩み、我慢していることが多いと思うので、デジタルバイオマーカーの開発をぜひ実現して人の助けになりたいです。

オフィスではフリーアドレスなので今日は開放感のある窓側の席を使っています

デジタルバイオマーカーができること

── 入社後の業務と感じていること

データサイエンティストとしては、日々勉強しながら頑張っています。チームのメンバーの能力が高く、とても恵まれた環境で楽しいです。
扱うデータも、24時間の連続データが見えていること自体が”すごいこと”だと感じます。
病院で得られるのは、ある1日のいち時点のピンポイントのデータだったので、解析をすることにも限界がありました。
それが今は、毎日・毎時間の連続したデータを通じて人々の変化を見ることができ、可能性を感じながら取り組んでいます。
今後テクノロジーが進化して、血圧や血糖値も連続で取得できるようになると、もっと面白い世界が来ると思います。
理学療法の観点からすると、特に血圧とSpO2を常時見ることができれば、心臓や呼吸器のリハビリにおいてやれることは増えるはずです。
一方で、そのまま見せるだけでは医療従事者の負担が増える一方なので、どういう形で表現するかも重要な使命だと考えています。

データの解析を通じて、いつか人の為になる

── データ発想で現場に届ける

いつかは電子カルテに載っている情報と合わせて、ウェアラブルデバイスの連続データからわかることも見られるのが当たり前になるといいな、と思っています。

一方で患者さん側も、現在は自分自身の不調に気が付くことは難しいですが、客観的に表現することで自分の不調がわかり、人に伝える手段にもなるというのが重要だと思います。
主観ではなくデータによる客観指標として見ることで、もっと寄り添い、その人の状態をより把握できるようになるといいなと思っています。

インタビューから 〜テックドクターの組織〜

ここまで読んで頂き、ありがとうございます。今回は医療現場の経験を経てデータサイエンティストとして入社してくれた瀬川さんに話を聞き、記事にしてみました。

我々は日々、デジタルバイオマーカーが人の為になるにはどうしたらいいかを考えていますが、瀬川さんは解析をして答えを出す以上に、「どう使うことができるか」を考えてくれる素敵なメンバーです。
テックドクターでは、その人の経験や能力を発揮して頂くために環境をどう整えるかも組織の重要な仕事だと思っていますので、ぜひいろいろな経験の方に興味を持っていただけたら嬉しいです。
ご興味のある方は、ぜひお気軽にご連絡下さい。
お問い合わせ:https://www.technology-doctor.com/

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