いざこざの後、地固まる3_時雨

「そ、れは……」
「…………」
そのまま二人とも黙ってしまい、気まずい空気が流れた。休憩室には授業終わりで昼食をとっている生徒がたくさんいるため、葵たちの兄弟喧嘩に目を留める人はいなかった。
「…ね、ねぇ、あお―――」
「なっぎ~!さっきの授業のノート……ってなになに?なんかやばい空気?オレ話しかけるタイミングミスった…?」
凪が葵に声をかけようとしたら後ろから凪の友人が肩に腕を回してきた。だが、一瞬で二人の雰囲気を察し、引き返そうとした。
「ごっめ~ん!取り込み中だったらまた後で声かけるわ~!」
「あ、ちょっ……」
友人が去ろうとしていたのを反射的に止めてしまい、振り返る友人の顔と葵の顔を交互に見た凪は頭を悩ませた。
「……っ」
葵が少し寂しそうな笑顔をしていたから。
小さい頃にも一度見たことがある。それは、傷ついた気持ちを押し殺して無理やり笑っている笑顔だ。
「――あ‘‘ぁぁ~~…もうっ!あ、葵っ!家!帰ったら!話しよう!」
「…あ、あぁ……?」
「田中!すまん用事ってなんだ?てかお昼まだなら一緒に――」
凪は葵に宣言(?)をし、友人のもとへ駆け寄っていった。
「…なんであいつあんなに怒ってんだ…?」
葵は頭にはてなを浮かべながらも、モヤモヤしていた気分が晴れて少しすっきりしていた。




「田中~。今日のラオケいけなくなったわ~」
「おー。何か用事が……あ、兄貴か?」
「……ん~…まぁ、そんなとこ。ずっとギスギスしたままってのも嫌だしなぁ…」
「お前ら兄弟の作品、楽しみにしてんぜ」
「うん!絶対いいもの作るから!……の前に家帰ってから葵とどう話すかが問題なんだけどね…」
あはは…と乾いた笑いを零す凪。すると後ろから聞きなれた声が聞こえた。
「……今の、ほんとか…?」
「っ!?あ、葵……どっから聞いて…」
振り返ると葵がいた。きっと早めに授業が終わったから迎えに来たのだろう。いつもは登下校を共にしているので、先に授業が終わったほうが教室にい迎えに行き、一緒に帰ることになっている。今日朝、凪はいなかったが、お昼の一件で一緒に帰ることは約束されていたも同然だった。
「最初から聞いてたよ…。それで結局俺と一緒に…」
「あーもーその話は家に帰ってから!てことで田中、ごめん僕たち帰るね」
はいはいと田中は親のような視線を向け、軽く手を振った。

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