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従業員退職時のストックオプションの扱いはどうすべきか

通常、従業員退職時(役員の退任時も同様)には、ストックオプションは会社が取得して消却します。
ただ、問題はその手続で、実際のところよくわかっていない会社が多い気がします。

これは、結論から言えば、SOの発行要項の内容次第ということになります。つまり、SO取得は、会社法上の取得条項を発動して行うことになりますが、その取得条項を、発行時にどのように設計したかということです。通常は、会社法236条1項7号のイかロとして設計します。

七 当該新株予約権について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができることとするときは、次に掲げる事項
イ 一定の事由が生じた日に当該株式会社がその新株予約権を取得する旨及びその事由
ロ 当該株式会社が別に定める日が到来することをもってイの事由とするときは、その旨

しかしながら、多くの発行要項では、「新株予約権者が行使条件を満たさなくなった場合(≒退職した場合)、当社は、無償で当該新株予約権を取得できる」というような記載しかされていません。
これ、イとロのどっちに当たると思いますか?

「取得できる」という文言からすれば、任意に取得できるように設計されていて、イではなくロである、と解釈するという考え方もできます。しかし、ロの場合は取締役会で取得決議をして、新株予約権者に通知する必要があるのですが(会社法273条)、このような手続きをとっている会社はあまり見たことがありません。

じゃあイとして処理しているのかというと、イの場合は、退職で当然に取得するので新株予約権原簿も退職日付で変更する必要があるのに、必ずしもそのように処理していないように思います。

もちろん、中には、「当会社が別途定める日に、…取得することができる」と明確にロとすることを意図して設計された発行要項もありますし、行使条件不該当で当然に取得する、つまりイとすることを明確にした発行要項もあります。

しかしながら、実務では、そのあたり曖昧な雛形が出回ってしまっているのか、発行時に取得のことまで頭が回っていないのか、上記のような曖昧な発行要項が横行しているのです。

SOを発行する際は、割り当てた従業員等が退職するときのことまでよく考えて発行しましょう、というお話でした。

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