【技術史】カーシェアリングの始まり
自動車が誕生したとき、すでにカーシェアリングという考え方があった。しかしそれが発展するのは第二次世界大戦のさなかである。一般市民のガソリン消費量を減らし、その分を軍用車両に回すため、アメリカ政府は石油会社の協力を得て宣伝ポスターに800万ドルを割り当て、さらに「カークラブ」を設立して自動車免許所持者に登録を促した。「友人を作る新しい方法」と人間関係が豊かになることを強調したり、「ひとりで運転するのは助手席にヒトラーを乗せているのと同じです」というフレーズで罪悪感を抱かせるなど、宣伝活動を行った。
1947年ごろから、戦時の緊張が消え去るにつれてカーシェアリングは大幅に減少したが、1974年以降アラブ諸国が石油の禁輸を行ったのを受けて、ふたたび急増する。当時の大統領ニクソンは「自動車用エネルギー緊急管理法」に署名してカーシェアリングへの出資を決めた。だが1980年に19.7%を占めていたカーシェアリングは、2013年になるとわずか9.4%に減ってしまった。
カーシェアリングの歴史を振り返ると、人々の対応と政府が進める政策とが、原油価格とエネルギー情勢に大きく左右されることがわかる。現在では通信ネットワークの普及により、自家用車でのカーシェアリングが現実的な選択肢となり、利用者を着実に増やしている。
『参考資料』
エネルギーの愉快な発明史
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