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「ロンドン」「ニューヨーク」「パリ」劇場の取り組み🏰

こんばんわ!TEATROです!
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今日は、海外主要 3 都市「ロンドン」「ニューヨーク」「パリ」の劇場の取り組みをまとめてみました!

コロナで影響を受けている現在の情報ではなく、
平成 28 年度「ホール・劇場等に係る調査・分析」報告書からの情報です。
https://www.seikatubunka.metro.tokyo.lg.jp/bunka/bunka_seisaku/houshin_torikumi/files/0000000938/houkokusho.pdf

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●調査対象 3 都市の特徴

ロンドンは古くから公共機関が中心となって文化芸術を広く振興し、市民はもちろんのこと、国内・海外に対して、積極的に文化情報を配信している。また民間企業の商業活動も活発で、ウエストエンドなどは、鑑賞を目的とする人々を世界中から集めている。
ニューヨークはブロードウェイに代表されるように、民間企業の活動が中心である。商業活動を行う民間企業に加えて、民間を母体としながらも非営利組織として社会的な使命を担い、公共機関の支援を受けつつ活動を行っている様々な組織が存在する。
パリはニューヨークとは対照的に、国や市が主導する施設や公演が非常に多い。大規模な複合施設の開発や長い歴史を持つ施設の運営をはじめ、公演制作・運営に至るまで、オペラ、バレエ、クラシックコンサートなどを中心に公共機関が積極的に推進している。民間企業の活動としては、ナイトエンタテインメントなどがみられる。

これら 3 都市に共通する特徴は、いずれも専門のホールや劇場を多く保有し、そこで様々なジャンルの公演が、個別に開催されてきていることである。
多くの移民の受け入れによる市民の多様化や、ポップス系音楽の人気などにより、各施設の多目的化が近年は進行してきたが、東京のホールや劇場は、もともと専門劇場としてではなく多目的な用途のために開発されてきたことと比較すると、施設の置かれている背景は大きく異なる。

・ ロンドン
政府が社会の創造的な力を引き出す芸術文化政策等に力を入れており、クリエイティブ産業の成長をリードしている。特にウエストエンドを中心としたミュージカル、音楽、ファッション、デザインなど、多岐にわたる分野において、文化政策を推進している。ロンドン市は文化支援に非常に積極的で「芸術と文化は文明社会の基礎をなす特徴であり、政府は市民の共通の利益のため、これに投資し、支援する責任がある」と考える。一方、世論調査の結果も、ロンドンの住人が、その文化を非常に大事にしていることを示している。
ロンドンが、アートやカルチャーで成功できた理由は、大ロンドン庁による「文化の街」という、明確な定義づけがあったからとの意見がある。明確な方向性に基づいて、常に具体的にどのように展開すべきかを継続的に協議、検討する場があり、その結果を具体的な活動に結び付けてきている。

・ニューヨーク
観光と芸術文化の相乗効果を発揮。
特にブロードウェイを中心としたミュージカルやアートなど、数多くの資源があり、芸術支援を通じて利益を還元し、地域貢献を推進している。
ニューヨークは増大する都市力と経済的成功を、芸術や文化への投資に結びつけ、ヨーロッパの大都市に対抗し、市民の豊かな文化生活の実現と、商業的な成功を目指してきた。
非常に多様な創作活動と、細分化された市場の成立を可能にしているのは、多くの外国人訪問客、都市の全米からの求心力、そしてニューヨーク市内の様々なコミュニティからなる市民構成である。海外生まれの市民は 40%近くにのぼり、それぞれの文化基盤を持ち、そのコミュニティを対象として世界中の様々な種類の文化公演が創作、開催されている。また、ニューヨークの多くの芸術家や文化団体の存在、精力的な創作活動、ショービジネスとしての成功事例などが、クリエイティブな労働者を求める他の企業、ニューヨークならではの文化的な経験を求める学生、世界中から訪れる観光客などを惹きつけ、流動的でダイナミックなエンタテインメント産業を創出し、継続的に魅力的な作品を提供し続けている。
またニューヨークのホール・劇場の市場において特筆すべきことのひとつは、小さな公演から世界的ショービジネスまでへの連続性が、存在することだと思われる。対象が限定された非常に小規模なローカルな公演から始まり、レストランやバーでのショー、オフ・ブロードウェイ、そしてブロードウェイへと、市場や関係者の評価により様々なステージが用意されている。ライブも、100 人ほどのライブハウスから数万人規模のスタジアムまで、需要に応じた規模の会場が存在する。もちろん、需要の総量が大きなニューヨークだから可能になる供給状況ではあるが、それが作品やアーティストの成長と育成に寄与している。

・パリ
都市景観と文化環境の向上を目指し、都市再開発事業を行い、劇場を含めた文化施設を整備してきている。パリにおいては、実演芸術よりも視覚芸術が中心で、博物館や美術館を中心とした観光客の効果が大きい。
(ルーブル美術館は、世界で最も来館者数の多い美術館である)
パリ市民は多様性に富んでおり、貧富の差も激しいため、すべての市民ではないが、美術やホール・劇場などの公演文化について、日常的に鑑賞する生活習慣を持っている人々は多い。
またパリは、アーティストの創作活動、育成に対する支援にも積極的で、パリ市は創作の助成として、年に 2 回公募を行っている。
また、国がパリ市内のアーティスト・イン・レジデンスを整備、若手のアーティストの育成を支援し、パリ市が推進する、海外の芸術家を支援するアーティスト・イン・レジデンスの助成プログラムもある。

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●新規顧客開拓の事例

国や自治体、およびその支援を受ける非営利組織と、独立採算を基本とする民間の営利組織の位置づけと立場、そしてその目指すものに非常に大きな
相違があることが、一層明確になってきた。
前者は助成金や支援金、寄付などの経済支援をもとに、社会的な使命を担って目的を追求する。一方、後者は話題性の高い公演を創出し大量の集客を図り事業を成功させ、その利益を事業継続に充てる。
新規顧客の開拓に際しても非営利組織は文化機会の社会への広い提供と文化振興やアーティスト育成を主な目的としているのに対して、営利組織は事業の成功と発展を目的としている。

♢City of London Information Centre:ロンドン 
・公演の市場調査と開発
最初に顧客を誘致することはそれほど難しくはないと思われるが、リピ
ーターを作る事はとても難しい。バックアップするのがプログラムや新
しい商品で「来たい」という期待感を持たせ続けなければならない。

♢Southbank Centre:ロンドン
・公演の無料体験
年間公演プログラムの約半分を無料で実施しており、集客と認知向上に
貢献している。

♢Alexandra Palace:ロンドン 
・エリア内施設の複合機能
特定のイベントの目的から、今後は長時間の滞在が楽しめるように隣接
へのホテル建設誘致を計画している。ホール、イベントスペース、パブ、
公園が一体となって連携を取り、人流を増やして顧客獲得を図っている。

♢Greater London Authority:ロンドン 
・情報訴求
ロンドンの劇場情報専門の Web サイトとして、昨年「Theatre.Com」
を開設した。

♢TERMINAL5:ニューヨーク
・様々な規模の会場を提供
アーティストはまず小さな会場でライブを成功させて固定ファンをつか
み、次第により大きな会場に移行していくなど、公演規模を成長させて
いくことができる。それが異なる会場規模のライブハウスを複数運営管
理している強みであり、主催者にメリットを提供できる。

♢Roundabout Theatre Company (Executive Director):ニューヨーク
・会員制への進展
1 年間(9~6 月の 1 シーズン)に 3~7 作品を 60%の金額で観劇でき
る Subscription Program があるが、Subscription は Membership に
変わっていく傾向がある。若年層の取込みには非常に注力しており、コ
ロンビア大学との連携、Underground で 25US$チケットの販売、若
年層に対して価格を下げるなどの育成を行っている。

♢Theatre Development Fund:ニューヨーク
・ダイナミックプライシング
ダイナミックプライシングの最大の目的は、利益の最大化を図ることで
ある。普段劇場に足を運ぶことのない層を取り込み、利益の最大化を図
る。通常、チケットの売り出し時には価格を安く設定し、公演が近くな
るほど高くなる。ダイナミックプライスのメリットは曜日・季節の波動
に合わせて、価格設定ができることで、試験的に価格を設定してみるこ
ともできる。

♢Broadway Inbound:ニューヨーク 
・ダイナミックプライシング
事前予約と、直前購入では価格差をつける、演目により異なるが、事業
者としては事前予約で席が埋まる状態が理想的なため、理論的には事前
予約の方が安い。FIT レートは 24 時間いつでも価格が変わるダイナミッ
クプライスで、ショーが近づくほど価格が上がる。テクノロジーが重要
なため、B to B(ツアーオペレーター)の卸値は変動的にはできない。
単価と入場率のバランスを図り全体売上を最適化するのが重要。

♢LINCOLN CENTER:ニューヨーク 
・アウトリーチの目的
アウトリーチは、マーケティング(潜在的な顧客開拓)、教育機会の提供、
CSR 活動(一般大衆でも音楽にふれられる。)の 3 つの目的がある。
ニューヨーク市の住民でリンカーンセンターを知らない人がいる。アウ
トリーチによりまずは知名度を上げて、リンカーンセンターに足を運ぶ機会を提供する。

♢Shubert Organization:ニューヨーク
・若者への公演制作と発表機会の提供
Shubert Organization のグループに文化基金組織がある。この使命は
若い世代の劇場・アート分野への関心を高めること。商業的な目的では
ないが、最終的には未来の世代の顧客層の拡大に寄与している。高校生
が夏休みに 1 か月間で作った劇の発表があり、17 劇場のいずれかで開催
する。ブロードウェイの劇場での発表なので、高校生にとっては夢のよ
うな晴れ舞台となる。著名な役者をホスト役で呼ぶ。

♢NYC & Company:ニューヨーク 
・若者対象のプログラム
若年層の観劇促進を目的とする組織「Public Theater」では、年間 200
~2,000US$の寄付を募り、対象公演のチケットが 5%引きになる特典
を付与するプログラムがある。実際に若者の劇場来場の促進に繋がって
いる。会員になり劇場に来場することで、共通の趣味や価値観を持つ若
者同士のネットワーキング強化にも繋がっている。

♢SALLE PLEYEL(サル・プレイエル):パリ 
・パートナー、スポンサーの開拓
公演前後に飲食やパーティーなどができるようなパートナー用スペース
を設け、年間スポンサーと、公演プログラムごとのスポンサーとの両方
が利用できる。企業が、クライアントとのコミュニケーションイベント
として、カクテルパーティなどで交流を深めてもらう。

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●サービス向上の事例

サービス向上に関しては、非営利組織であれ営利組織であれ、それぞれのホール・劇場の立場に応じて様々な取組がなされている。

♦︎Greater London Authority:ロンドン 
・チケット価格の設定
ロンドンの一般的なショーはチケット代が非常に高いため、定期的に 10
ポンド程度で入場できる公演の実施を促す支援を行っている。

♦︎KINGS THEATRE:ニューヨーク 
・施設建築の魅力
劇場の持つ歴史や内装が人気となり、月に数回シアターツアーを催行し
ている。

♦︎Theatre Development Fund:ニューヨーク 
・公演価格の設定
イールドマネジメントは、在庫状況に応じて価格を流動的に決定して売
上を最大化しようとする、売り手側の柔軟な販売管理である。ショーの
プロダクション側(制作側)で価格案を決定し、シアター・ディベラッ
プメント・ファンドが、全体的な価格設定の妥当性検討(Landscape)
を行う。制作側がシアター・ディベラップメント・ファンドの価格提案
を受けないこともある(値下げをしたくないプロダクションは定価、も
しくは高価格帯で販売しても良い)。

♦︎TERMINAL5(THE BOWERY PRESENTS):ニューヨーク
・アーティストとの距離
ライブハウスでは、顧客とアーティストとの距離感を非常に重視してい
る。一体感を強く感じることができる小さな会場を、顧客は求めている。

♦︎Roundabout Theatre Company (Executive Director):ニューヨーク
・コミュニティのニーズに応える組織づくり
最新技術を駆使していかに顧客を獲得するか、チケッティングシステム
によりいかにチケット販売を拡大するか、効果的な舞台演出等の最新技
術に詳しい若い人材を登用して演出力を高めるなど、これらは組織力を
強めることで、サービス向上につながると考えている。

♦︎Shubert Organization:ニューヨーク 
・スマートフォンの活用
スマートフォンでの写真撮影について、会場内であっても本番公演前は
可能にした。それまでは、ホワイエなどの共用部は OK だが会場内は写
真撮影禁止にしていた。しかし上演前に舞台の写真を撮って SNS にアッ
プしたい観客が非常に多く、またそれは大きな宣伝になると考えている。

♦︎Broadway Inbound:ニューヨーク 
・公演の網羅的な紹介
取扱い作品を 1 つのグループとして商品群をプロモーションしている。
あまり知名度のない作品も PR できて新たに発見してもらえ、より効果的
な販促(チケット販売)、マーケティングが可能になる。

♦︎SALLE PLEYEL(サル・プレイエル):パリ 
・インバウンド誘致
フランスで制作するプログラムはフランス語でのみ行っており、他の国
では通用しない。観客もフランス人がほとんどであり外国人は 5%以下で
ある。世界中の人たちが楽しめるようにするために、公演を英語で行っ
たり、アングロサクソン系の演目を行うよう考えている。

♦︎SALLE PLEYEL(サル・プレイエル):パリ 
・鑑賞環境
サービスという意味では、改修工事で作った空間が、まさにサービスで
ある。特に「座る」「見る」「聞く」にこだわりを持たせた、快適な鑑賞
環境を用意した。快適な空調、椅子、視認性、残響調節、舞台との近い
距離、最高水準の音響機材、広いバースペースとレストランなどが例に
挙げられる。

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今はまだ世界的に閉まっている劇場が多いですが、
劇場の再開を楽しみにしています!!

ではまた!!

TEATRO

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