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Netflixで次観るべきなのは『コブラ会』だと断言できる理由

Netflixといえば緊急事態宣言下で『愛の不時着』や『梨泰院クラス』が爆発的人気となりました。9月末時点でも相変わらずTop10に両作品がはいっているだけでなく、韓流ドラマは上位にランクインしています。

自分もNetflixでアート系や『全裸監督』などもつまみ食いしつつ、韓流ドラマの沼にはまり『アルハンブラ宮殿』まで観たところで、我に返りまして、いろいろ生活と仕事に支障をきたすと思い一時リタイアしておりました。

しかしながら、ある知り合いの方から『コブラ会』がすごいと聞いてネトフリ再開して1週間でシーズン2まで一気にやってしまいました。これは全人類に広めたいドラマだと思います。もともとYouTubeのドラマシリーズだったようですが、Netflixに移ってきたようです。

『コブラ会』は1980年代のアメリカの空手映画『ベスト・キッド』の正当な続編です。自分の子どもなどはジャッキーチェンによるリメイクを本物だと思っていますが、あのたどたどしい英語を話す沖縄生まれのミヤギ先生が登場する『ベスト・キッド』の続編です。

物語は、1984年の空手大会で、高校生のダニエル(当時のいじめられっ子)とジョニー(いじめっ子)が決勝戦で戦うシーンで始まります。ダニエルの飛び蹴りをジョニーが顔面にもろにくらって地面に伏したところから、30年以上経って同じくジョニーは家で地面に伏しているシーンに移り変わります。お酒の瓶がちらばった部屋で・・・。

1.ダークサイドへのフォーカス

『コブラ会』は『ベスト・キッド』の主人公だったダニエルではなく、悪役だったジョニーを主人公にしています。ジョニーはあの決勝戦で負けてから、細々とした電気工事の仕事をしながら、離婚も経験し、酒浸りになる50代の親父になっています。

ジョニーの人生をたどっていくと、彼は彼なりに不幸な親の元で成長し、まじめに生きたいと思っているのに何かいつも邪魔が入ってしまう生活をなんとか生き抜いてきたわけです。

一方のダニエルは、カーディーラーとして絵にかいたような成功を遂げてむしろ視聴者からみても、ウザいと思わせるようなテレビCMをしていたりとなんだか感情移入できない存在として描かれています。

ダークサイドのサイドストーリーにフォーカスした映画として2019年の『ジョーカー』も秀逸でした。決して感情移入はできないですが、彼らには彼らの事情があったんだと切ない思いを抱かせます。

格闘技漫画『タフ』でも相手を倒す直前に敵役の回想シーンが入りますし、『鬼滅の刃』でも鬼殺隊に切られる鬼ですら切ない回想シーンを繰り広げます。

そんなダークサイドにいるジョニーが少年を救ったことをきっかけに空手道場を開き、彼が所属していた流派コブラ会を復活させようとします。一方のダニエルもそんなジョニーとの接点で発火し、ミヤギ先生の教えを継ぐミヤギ空手を復活させて、子どもたちによる代理戦争が勃発するのです。

空手経験者の自分としては”空手に先手無し”のミヤギ先生の教えは圧倒的に正論です。しかし、ダークサイドで必死にもがいてきたジョニーが教える”先に打て、強く打て”という先手必勝の教えも、現実の世界の話として共感せざるを得ない。

完全な二項対立で物語が進むのかというと決してそういうわけではありません。ウザくなってしまった成功者であるダニエルの奥さんがよくできていて、時にダニエルを諭し、これまたダニエルにも共感が生まれるようなシーンが徐々に増えてきます。

ダニエルとジョニー、N極とS極のように両サイドなのですが、どちらも応援したくなる、そんなストーリー構成で一気に魅せてくれます。

2.随所に現れる日本趣味

『ベスト・キッド』が放映された1980年代の日本はバブル崩壊の直前で世界の時価総額のトップを日本企業が占めていました。日本がイケイケの時に、いじめられっ子をたどたどしい英語を話すミヤギ先生が空手を教えて成功に導くというストーリーが生まれました。

ダニエルは今は亡きミヤギ先生を最高の師匠として今でも慕っており、自社での車の購入者には盆栽を渡したり、家には掛け軸が飾ってあったりもします。

一方のジョニーも生徒が「Karate Teacherになってくれてありがとう」という発言に対して、「No!! Senseiと呼べ!」と訂正させます。このシーンがかっこよすぎて電流が流れるほど痺れます。

随所にでてくるイケイケだった頃の日本への憧憬(の片りん)。日本人として観ていて、少し誇らしかったり嬉しかったりするはずです。

3.アラフォー世代をド直球で射抜く1980年代へのリスペクト

アラフォー世代、1980年代に小学校に行っていた少年たちは、『ベスト・キッド』のテレビ放送、再放送を観るたびに胸を熱くし、翌日の休み時間は武道大会と飛び蹴りに励んだことと思います。

とんねるずがワックスがけやペンキ塗りのミヤギ先生の教えをオマージュし、少年たちにとってワックスがけやペンキ塗りは憧れのお仕事でさえありました。

そんな自分たちが30年以上を経て、ミヤギ先生の数々の名シーンを古いフィルムで観ることになります。今観てみると、とんでもないくらいたどたどしい英語を話しているのですが、それがまた東洋の神秘を表現していてかっこいい。

ダニエルのミヤギ空手の道場ではワックスがけやペンキ塗りで練習をスタートさせるところも、『ベスト・キッド』世代を震えさせます。

さらにはワルかっこいいジョニーが、自身の生徒に1980年代の音楽を強制したところ、逆に生徒が80年代にはまってしまうという演出も、この世代の自尊心に火をつける設計になっています。


そういったわけで『ベスト・キッド』世代は間違いなくハマる設計になっています。オープニングのCobra Kaiが表示されるまでのタイトルコールも、毎度痺れます。

シーズン2のラスト2話では怒涛の展開で2021年のシーズン3に繋ぎます。来年の続編が今から待ち遠しいです!

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