多汗症治療の体験記


はじめに

はじめまして。

私は現在、都内で内科医として勤務している多汗症もちです。
このnoteでは私が経験してきた多汗症治療をお伝えしていきます。
多汗症で悩む人の参考に少しでもなればと思います。

本題に入る前に私の背景を簡単に紹介させてください。

私と多汗症との付き合いは小学校高学年の頃から始まり、それから現在まで約20年続いています。私の多汗症は掌蹠多汗症・腋窩多汗症というタイプで、手のひら・足のうら・腋に多量の汗をかきます。
重症度でいうと日常生活に支障がでるレベルであり、3〜5分程度パソコン作業をしているとキーボードやマウス周囲に小さな池ができます。またグレーの服は腋汗が目立つので着れません。
思春期になると多汗症にかなり思い悩み、様々な対処法・治療を試してきました。手袋・汗取りパッド、市販の制汗剤・制汗パウダーから始まり、漢方・塩化アルミニウム(Perspirex®含む)・エクロックゲル・アポハイドローションまでいろいろ試してきました。

これから私が経験した治療について共有していきます。
私は内科医として勤務していますが、基本的には私が患者として経験した主観的な立場でのレビューです。ただ医師としての知識・経験は、ガイドラインや製薬会社の製品ページを読み解くのに役に立っており、それも活かされたnoteとなっています。

※当noteのコンテンツや情報において、可能な限り正確な情報を提供するように努めておりますが、必ずしもその内容の正確性および完全性を保障するものではありません。当該情報に基づいて被ったいかなる損害について、一切責任を負うものではございませんので予めご了承ください。

多汗症治療の選択肢

多汗症治療の選択肢は大きくわけて以下の3つです。

  • 内服治療(飲み薬)

  • 外用治療(塗り薬)

  • その他(水道水イオントフォレーシス・ボトックス治療・交感神経遮断術)

これらの治療は多汗症のタイプ(手足メイン、腋メイン、頭・顔面メイン)や本人の重症度・希望に応じて使い分けられます。
原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版によると、塩化アルミニウム、ラピフォートワイプ、エクロックゲル、アポハイドローション、水道水イオントフォレーシス、ボトックス治療が推奨度B(行うよう勧められる)となっています。ちなみに推奨度A(行うよう強く勧められる)の治療は存在しません。
このうち私が経験したのは、内服治療(漢方薬)と外用療法(塩化アルミニウム・エクロックゲル・アポハイドローション)であるため、このnoteでは主にこれらを扱います。その他市販の制汗剤もいくつか試しましたが効果がうすいものが多かったため今回は割愛します。

それぞれの治療について

  • 効果

  • 副作用

  • 続けやすさ(使用感・費用面)

の視点で書いていきます。
それではみていきましょう。

内服薬

漢方薬

効果
感じられない。
副作用
感じられない。
続けやすさ(使用感・費用面)
一般的な保険診療内の診療内容であり、薬剤料が高い漢方薬でもないため費用面では続けやすい。しかし、効果が感じられない場合は内服するモチベーションが続かないかも…。

私は高校生のとき初めて多汗症のため皮膚科へ行き、そのときに受けたのが漢方薬の治療です。
私はツムラ防已黄耆湯、ツムラ白虎加人参湯をおよそ3ヶ月内服しましたが、効果も副作用も感じられず結局続きませんでした。多汗症の治療において漢方薬は経験的に用いられているにすぎず、臨床試験で効果が証明された漢方薬が存在するわけではありません。

外用薬

塩化アルミニウム

効果
感じられる(脇汗はほぼ完全に抑えられたが、手汗にはいまいち)。
副作用
塗った部分が多少ヒリ痒くなる。
続けやすさ(使用感・費用面)
塗った部分が多少ヒリ痒くなるが、効果が感じられる分だけモチベーションが続く。費用面では、塩化アルミニウムが医療機関・薬局内での調剤か、市販の塩化アルミニウム(Perspirex®)になるかで変わってくる。

漢方薬は効果なく、高校生の私は多汗症は治らないと失望し多汗症治療は一旦諦めました。
しかし、やはり多汗症をどうにかしたいと思い大学生のときに再度皮膚科へ行ったところ処方されたのが塩化アルミニウムでした。

塩化アルミニウム外用療法は20世紀から使用されていた治療であり、効果・副作用ともに確立されています。

使用方法は就寝前に適量を患部に塗布します。私の場合は、脇にはドラッグストアで買ったカットコットンに染み込ませて塗り、手には直接塗っていました。Perspirex®の場合は腋に塗りやすいロールオンタイプがあり便利です。効果が出るまでは毎日塗布、効果が出てきた来たら自分で調整して塗布する間隔を空けます。

  • 効果

腋汗に対してはかなり効果が出て、ほぼ腋汗はかかなくなりました。しかし、手汗にはあまり効果がありませんでした。手汗に対して単に塗るだけでは効果がない場合は、塩化アルミニウムを塗ったあとに綿やビニール手袋をして就寝し、一晩かけて塩化アルミニウムを手に染み込ませるという密閉療法を行います。私もこれを試してみましたが、ヒリヒリと乾燥して手が荒れるわりには、やはり効果は感じられず手に塗るのは挫折しました。結局、腋に対してだけ塩化アルミニウムを使い続けました。体感としては3〜5日ほどで効果が出て、夏場は2日に1回、冬場は3日に1回の頻度で使用していました。

  • 副作用

一般的な副作用としては塗った部分の皮膚炎が挙げられます。皮膚炎といっても、私の場合は塗った晩は塗った部分が多少ヒリ痒い程度で翌朝にはほとんど気にならないレベルでした。ただ顔面に継続して塗るのは難しいと感じます…。

  • 続けやすさ(使用感・費用面)

塗った後のヒリ痒い感じはありますが、効果を考えれば許容範囲だと思います。
費用については、現在塩化アルミニウムは保険診療に適用のある外用薬がなく院内製剤となり自費となります。手に入れる方法は①クリニックや薬局内で院内調剤してもらう、または②Perspirex®を買うの2択になります。私は両方を経験しましたが、効果の面では院内調剤の塩化アルミニウムとPerspirex®に差はなく、違いは費用くらいです。

①クリニックや薬局内で院内調剤してもらう
塩化アルミニウムは保険診療に適応のある外用薬がないため、クリニックや薬局で塩化アルミニウムを調剤してもらう必要があります。診察部分は保険診療ですが、製剤自体は自費となり、自己負担は50mLで1000円弱でした(腋に2~3日に塗る場合は50mLで2ヶ月ほどもちます)。
ただ、すべての皮膚科クリニックや薬局が塩化アルミニウムの調剤に対応しているわけではないので、事前確認が必要な点には注意が必要です。

②Perspirex®を買う
私が転居に伴い訪れた皮膚科は多汗症診療に対応していたものの、塩化アルミニウムの院内調剤には対応しておらずPerspirex®を使うことになりました。
Perspirex®はデンマークのRiemann A/Sという化粧品会社が製造している塩化アルミニウム製剤です。手・足に塗る用のローションタイプと腋に塗る用のロールオンタイプがあります。
私が皮膚科クリニックで購入した時は定価の1本5000円弱でした。ただPerspirex®は化粧品として売られているのでネット通販で買うことも可能です。ネット通販では1本2000〜3000円のところが多いです。ただ偽物もあるようですので注意が必要です。

Q.調剤の塩化アルミニウムとPerspirex®、どっちがおすすめですか?

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