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短編小説(フィクション)

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#短編小説

貸金庫への忘れ物

貸金庫への忘れ物

*この話はフィクションです。

「懐かしいな……」
ロビーに入ると、見慣れた制服の女性たちがカウンターの中で忙しそうに働いていた。
「あの、今日からこちらでお世話になります、山村と申しますが……」
一番手前のカウンターに座っていた若い女の子に、声をかけてみた。
「あ、えっと……」
「あのパートのスタッフで」
「あ、そうなんですね。少々お待ちください」
女の子は、高い声で、そう私に言った後、後ろを振

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太陽に霞んでいた月の誕生日

太陽に霞んでいた月の誕生日

*この話はフィクションです。

23歳の誕生日は、絶対に、人生最高の誕生日になるはずだった。
そのために、ずっと前から計画してきたんだもの、どうしてもそうならないといけなかった。

「私にとっての最高の誕生日は、ひとりで過ごすことです」
油断して、会社の先輩の咲羽さんに、うっかり、そう言ってしまったのが、まずかった。
「えーそんなの、寂しいじゃん」
ちょっと鼻にかかった声で言われた。
気が合わない

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大切だと思っていたものをなくして、途方に暮れた先にあったもの

大切だと思っていたものをなくして、途方に暮れた先にあったもの

*この話はフィクションです。

「ごめん。やっぱり、結婚できない……」
直樹は、頭を下げて、テーブルを見ながら、そう言っていた。
一瞬、私は、何が起こったのか、わからなかった。
直樹は、頭を下げたまま、上目遣いで、私の顔を一瞥し、
「本当にごめんなさい」
今度は、テーブルに、頭をつけてそう言った。

直樹と私は同じ年だったけれど、短大卒業の私の方が、会社では先輩だった。
新人で入ってきた直樹の教育

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買う権利を、譲ろうと思ったけど、やーめた!

買う権利を、譲ろうと思ったけど、やーめた!

*この話はフィクションです。

なんで、抽選で当たったのに、朝早く並ばないといけないのよ……。

スマホのアラームを消しながら、思う。
画面に映っている4:30が霞んで見える。
隣では、息子の達也が、軽くいびきをかいている。
あわよくば、夫の大樹に、並んでもらおうと思っていたけど、仕事で帰りが遅くなったようで、布団に入った気配を感じたのが1:00だったから、さすがに頼めなかった。
布団に入ったまま

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