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#短編小説
太陽に霞んでいた月の誕生日
*この話はフィクションです。
23歳の誕生日は、絶対に、人生最高の誕生日になるはずだった。
そのために、ずっと前から計画してきたんだもの、どうしてもそうならないといけなかった。
「私にとっての最高の誕生日は、ひとりで過ごすことです」
油断して、会社の先輩の咲羽さんに、うっかり、そう言ってしまったのが、まずかった。
「えーそんなの、寂しいじゃん」
ちょっと鼻にかかった声で言われた。
気が合わない
大切だと思っていたものをなくして、途方に暮れた先にあったもの
*この話はフィクションです。
「ごめん。やっぱり、結婚できない……」
直樹は、頭を下げて、テーブルを見ながら、そう言っていた。
一瞬、私は、何が起こったのか、わからなかった。
直樹は、頭を下げたまま、上目遣いで、私の顔を一瞥し、
「本当にごめんなさい」
今度は、テーブルに、頭をつけてそう言った。
直樹と私は同じ年だったけれど、短大卒業の私の方が、会社では先輩だった。
新人で入ってきた直樹の教育
買う権利を、譲ろうと思ったけど、やーめた!
*この話はフィクションです。
なんで、抽選で当たったのに、朝早く並ばないといけないのよ……。
スマホのアラームを消しながら、思う。
画面に映っている4:30が霞んで見える。
隣では、息子の達也が、軽くいびきをかいている。
あわよくば、夫の大樹に、並んでもらおうと思っていたけど、仕事で帰りが遅くなったようで、布団に入った気配を感じたのが1:00だったから、さすがに頼めなかった。
布団に入ったまま