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福祉施設の自主製品で収入を上げよう

うちの施設は、2012年6月開所。
開所から8年が過ぎました。

知的障害がある利用者の皆さんが作業をする際のコンセプトは、
・お客様が買ってくださる商品を作る
・1円でも多く売り上げる
・生活保護費を返す(減額されるようになる)
・一人一人が、できることをする
・お客様のご注文を優先する
・無駄な時間を省く
・困ったり、あれ?って思った時、すぐに職員を呼ぶ

などで、福祉施設でなくても一般企業でも当たり前と言えば当たり前のコンセプトで、知的障害がある利用者の人にわかりやすく話すと、上記のような言い回しになります。

開所当時から、そういう話をしているので、「生活保護費が減額になるから休みます」というような人はいらっしゃいませんし、生活保護課の職員さんにボランティアで来ていただき、わかりやすく説明を受け、稼げるだけ稼いだ方が、手元に残る金額も高まるということを理解しているようです。

なんと、目標工賃金額を超えた!

時給単価110円です。月工賃は、作業をした時間分の支給になり、残った分で材料を買い、それでも残った場合は、半期に1度ボーナス的な支給をして、一旦ゼロ円にします。そして、下半期も同様になります。

売れなければ工賃も支給できませんので、その単価を上げるには、不安なままずっと来ていましたが、利用者の人たちの作業が早くできるようになり、お客様のリピート率も上がってきました。

そして、2019年度、年間目標売り上げ(72万円)を半期で達成し、年度末に改めて計算をしたら、川崎市地域活動支援センター運営規定の中にある「目標工賃額」に匹敵する金額になりました。

うちの施設の利用者は日々定員5名という条件で行われている地域活動支援センターです。そのなかで、上位4名の平均工賃額ボーナス等も含めて、月額15000円になることが、「目標工賃額」の条件です。

うちの施設は、8人の人が利用をしています。
3人の人が、週5日利用。
3人の人が、週2日利用。
2人の人が、週1日利用。

しかも、午前だけとか、午後だけという人が多く、10時から17時の利用時間をすべて使っている人は、2人です。

さらに、毎日利用の人は世帯主さんなので、役所に行ったり、金銭管理団体とやり取りしたり、作業中に抜ける用事もいろいろあります。

それでも、上位3人は安定収入を得ているので、生活保護費の減額ができるくらいになっていますが、4位の人は、1週間の作業時間が5時間なので、月額4000円くらいの収入でしかないわけです。

なので、無理だろうと思いつつも、一応計算したら15000円どころか、16000円を超える平均値が出ました。

これは、すごい!
上位3人が、4位目の人の補填をしたのです。

それでも、コロナになった関係もあり、お店も閉めていたので、やっぱり2020年度も、時給単価110円のままスタートしました。

ただ、月額売り上げ目標を60000円から、72000円に上げると職員たちに決めてもらい、職員側の意識を高めました。

コロナだからこそ、ネットショップに変更

コロナのことがあり店を閉め、在庫を増やすことに専念しようと作業を続けていましたが、一方で、数年の課題であったネットショップを本格的に稼働始めました。

商品を作り、土曜日には新商品をUPすることを目標にして、UPしたら、SNSで拡散する。そして、入金を確認したらお送りする。

これだけです。

もちろん、SNSは日ごろから見ていただける人が多くなるような工夫はしていますので、記事を上げて「いいね」や「リツイート」などで、応援をしてくださる方もいらっしゃったことは大きな力になっています。ありがとうございます。

UPすると途端にネットショップが動き出します。
これは、商品が少ないせいもあるかもしれません。
1日に作る数が少なく、ショップにあげると言っても、10枚くらいの時もありましたから。

その繰り返しをして、ご近所のお客様ではない全国の皆さんに買っていただきました。
リピーターさんも何人もいらっしゃいました。うちの商品の良さを感じていただけたようです。ありがとうございます。

こうして、ネットショップをメインにして販売をし、その後、ようやく6月からお店を開き、ご近所の皆さんが買いに来てくださるようになってきたのです。

息楽マスクとは?

まず、薬局店頭にサージカルマスクがなくなる状態になってきたときに、マスクを作る必要があると考えました。

4月からマスクの生産を本格的に開始しましたが、最初はプリーツ型と立体型。そして、マスクキットも販売しましたが、その頃はどこでも布マスクの作製が始まった時期。そこそこ売れはしましたが、爆発的に売れるという状態ではない感じでした。安いところは250円ほどで売ってましたしね…

だんだんにサージカルマスクが店頭に並び始め、あえて布マスクを売らなくてもよい状態になりつつあり、一時の商品として、考える程度のものでしたが、その後開発した「息楽マスク」一本にして、様々な柄を並べました。

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息楽マスクは、独自デザインなので、どこにも売っていないという代物。
ですから、立体マスクよりも、高額に設定しました。

アイデアに価値を付けたイメージです。
しかも7月から消費税をつけ、実質値上げをしました。

もともと、うちの利用者がしていた耳掛け式マスクで悲鳴を上げ始めたのが発端です。「耳が痛い」と言って、ストレスがたまり、作業もできなくなるほどでしたので、これを作ってみたら、その日以降、作業中は一切マスクを外すことはありません。

息楽マスクの特徴は、
・息が楽にできる
・耳が痛くならない
・メガネが曇らない
・過敏の人でも負荷がかかりくい
・食事やうがいの時など、机に置かなくても首にかけておける(清潔が保てる)
・汗の量が通常マスクより激減(しかも汗が拭きやすい)
・マスクをつけたままで飲み物が飲める
・口のあたりに湿気がこもらない

そして鼻だしマスクやあごマスクをしなくても、一日中つけていられます。

一時的な商品として考えていた

先ほども書きましたように、布マスクは、一時的な商品として考えていました。ですから、すぐに下火になるだろうと思っていたのです。

ところが、耳が痛いなどのほかにも、このところ、いろいろなニーズが聞こえてきたのです。

・立体マスクであせもができてしまった
・過敏があって、マスクが嫌
・風呂介助の時に息苦しい
・プールがあるんだけど、マスクどうする?
・聴覚障害の人と会話ができない

今までのマスクは、いのちをまもるため。
これからのマスクは、コロナありきで生活や事業を進めるため。
なのでしょう。

こういうニーズには、また開発をします。
ビニル製で作ってみたり、プールで潜れるように硬さがあるものを作ったり…

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単なるマスクですが、支援者として、パフォーマンスが悪くなるのは、いただけません!同じ福祉施設だからこそ、解決できる商品を作りたいのです。

おかげさまで、大口注文の期待もされる商品となってきています。

お客様が売れる商品を教えてくれる

さて、通常、うちのお店は、今までも対話を通して、お客様のニーズをつかみ、そういう商品を作ることで売り上げを伸ばしてきました。

「障害者が一生懸命作ったから買ってください」という言葉は言ったことがありませんし、お客様に売れる商品を作ろうと常々利用者にも話していましたので、今では、お客様にとって良くない(買いたくない)縫い方だと思うと、利用者の人から「直します」と言ってくるようになっているのです。

お店の名前も目立たないからこそ、障害者へのやさしさで購入しようという人はいませんし、商品を見てお店に入ってきてくださいます。

そして、リピーターになってくださいます。

こんな商品が欲しい!
もうちょっと大きなのが欲しい!
など、そういう声を大切にして、ご注文を受けたり、作っていくと売れるのです。

会話することは、やっぱり効果的

お店に来てくださった方限定ではありますが、ポイントカードを作っています。これは消費税を上乗せした際に作りました。
500円で1ポイント。20ポイントたまると500円券になります。
リピーターであることもわかります。
「いつもありがとうございます!」と会話も弾みます。

そして、手作り大好きなお客さんの作ったものを見せていただいたり、病気のお話や旦那さんへの愚痴なども伺います。

作り方を教えてほしいという人には、お教えしています。

また、うちで使えなくなった布を無料でプレゼントしています。
これは、お子さんの工作や小さなものを手作りしている人に喜ばれています。そして、作ったものを見せてくださる方もいらっしゃいます。

ネットと違って、直接お会いするからこその会話は、長話になることもありますし、その中でお客さんから教えていただくこともあります。

お客様を通して、商品が生まれるからこそ、お客様に買っていただけるという繰り返しで、売上もどんどん伸びているのです。

先を読む

たまたま私自身が、ものづくりが好きですし、困っている人にこういうものがあったら喜ばれるのではないか?という先読みをする性格なので、そういうものをデザインし、利用者の人に作れるような仕様にして、お作りしています。

お店は高齢者の女性の方が多くいらっしゃるので、「77歳女性。自宅にいる夫をうざったく思う時が時々ある」という方をペルソナにして、商品を考えることにしています。自分ご褒美やお友達、そして家族に買いたいという意味合いで訪れるという想定です。

どういう生地がよいかな?
どういう大きさがよいかな?
おひとり様限定のお品物の方が喜ばれるかな?

など、考えつつ商品化しましたし、インターネット販売を通して、お店に来れない方にも商品をお届けできるようスタッフとの役割分担もしました。

そして、職人と呼んでいるうちの施設の利用者のモチベーションを高めるために、お客様の声やどんなものが売れたかなどの情報を伝えることのほかに、売上が上がっていることを伝えていくことも大切な視点だと思います。

そして、ついに時給単価を上げた!

2020年4月の時給単価は110円でしたが、6月の工賃では120円にし、7月の工賃は130円にしました。もちろん、一時的になりますが、9月末でいったん締めると支給されるボーナスは、相当額になると考えています。

なぜなら、7月末時点での収入が、年間目標収入額720000円の約75%を達成したからです。

つまり、4か月で、9か月分を稼いだからです。

もちろん、この後どうなるかは本当にわかりませんので、単価を下げることがあることは、利用者の皆さんには最初に説明しています。

今の主流は、マスクとエコバッグです。
先に書きましたが、いつまでも売れる商品ではありません。
ですから、定番商品もいつも以上に売りたいですし、新しい商品開発や売り方も職員側の課題になります。

価格は上げてよいものと考える

うちの施設は、一度決めた価格を何かきっかけがあった時点で、あげるようにしています。
たとえば、この価格じゃ割に合わないと考えた時や、需要と供給が合わない時や、作ってみたら思いのほか手がかかることなどが大きな理由になります。

たとえば、人気商品「パフクッション」も最初は、1500円で売っていましたが、何度も値上げをし、今は4400円(消費税込み)にしています。

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適正価格にはまだ達していない可能性もありますが、一つ一つが手作りで、できるだけ1点ものにこだわっていますし、お客様に布をお選びいただくこともできる商品。

そして、お客様の多くが、値段より物を見て購入してくださり、笑顔を作り出せる商品です。

安いより、高いからこそ価値があると思いますし、安くないと言って購入されないお客様は、当店のお客様ではなかっただけです。

プレゼントにするにしても自分へのご褒美にするにしても、ちょっと高いくらいがちょうどよいのです。

値上げをしましょう!

あなたの施設の自主製品が、食品であるなら、まず一品10円の値上げをご提案します。あんパンが110円であれば120円にするイメージです。
もし踏み切れないなら、何個入りいくらとしてみる。すると一人当たりの販売単価が上がります。

値上げとともに、何かプレゼントを用意することもよいと思います。
価格を上げ、「○○円お買い上げの人に、1個おまけ」にしても良いですね。

うちは消費税をつけた時にスタンプカードを用意しましたので、ちょっとお得なイメージがあったと思いますし、そのほかにもプレゼントをご用意しています。

同じものを売るにしても500円で売るか?600円で売るか?ということで、売上が全然変わります。
ほしいと思うお客様には、品物勝負なのです。

何も引け目を感じることはありませんし、堂々と価格を上げることです。
それだけの商品を作っているのであれば。

バザーに出しているから、安くしないと売れないという声も聞こえますが、価格を高くしない理由をいろいろ考えているだけで、本来、バザーが勝負の場所ではないのです。

わざわざ材料を買って、それ以下の値段で売っているところも見受けられますので、意味がありませんし、利用者の皆さんの労働も価格に上乗せしなければならないのです。

値上げしない本当の理由

やっぱり知的障害がある人たちが、もっと欲しいと言わないことに職員は甘んじていると思います。
そして、職員自身が販売のプロではないことも理由のひとつではないでしょうか?

作ることは作るけど、そこで燃料切れ。
売ることはまた別のスキルが必要なので、そこまで手が回らない。

障害がある人が作っているから売れないのではないかと思いやすくしてしまい、親御さんに売れたから良しとしてしまう。

親御さんに売れても、お金そのものは家内循環なだけで、社会は動かない。

そんなところが、大きな理由なのだと思います。

うちの利用者たちは、売上が上がると本当に喜びますし、ご注文が入ると張り切ります。仕事って、元来そうあるべきだと思います。

声なき声を拾い上げて、実現するのが私たち施設職員の仕事なのですが、もしうまくいかないようであれば、製作や販売のプロに、一時的に協力していただくのもよいと思います。

彼らができることと世の中のニーズのマッチング

私は次のアイデアを持っていますが、それは別のお話になります。

ただ、やるべきことは、彼らができることと世の中のニーズを繋げることです。

うちに施設だけでは、きっと人数が少なくて、悲鳴を上げると思います。
今までも、大きな仕事が来た時は、他施設に協力していただいたり、手作りが好きな一般の方にも手伝っていただき、下請け工賃を支払って急場を乗り越えたこともあります。
それが当たり前になれば、収入が欲しい人にも役立ちます。

もちろん、主催施設としての苦労もありますが、大きな施設であれば自分のところだけでできるはずです。

縫製ができる人は、これから宝になると思いますので、もし、一緒に何かをしたいということであれば、当法人にご連絡ください。

特別支援学校も縫製をするところが増えると良いと思っています。

どうやって行くか?などのご相談も承ります。

おわりに

うちの作業が売り上げを上げてきている実践を書かせていただきました。
どの部分でも皆さんの施設のヒントになれば幸いです。

障害がある人の作業をする時間に提供できるものを提供するだけの時代はもう終わりにしましょう。

一番手っ取り早い方法は、商品価格を上げることです。
もちろん、一般の人たちに売る方法も大事です。

収入を得て、それを回すことで社会も動きますし、自分たちができて、お客さんができないことは、頼りにされることを知ってほしいと思います。

私たち福祉施設は、お涙ちょうだいで商売をするべきではありません。

知的障害がある彼らは仕事が好きです。社会を動かす役割にもなります。

お客様が欲しいと思って買ってくださる商売をしようではありませんか!

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(タイトル写真:多色巾着2200円。手縫い)

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