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6月FOMC FRBは75bpの利上げを決定

米連邦準備制度理事会(FRB)は75bpの利上げを行い、7月のFOMCでこの引き締めペースを維持する意向も示しました。
フェデラルファンド・レート(FFレート)は3%を大きく上回り、ドル高が続くと予想されますが、FRBが、より厳しく・より速く動くことは経済的な代償も伴います。
景気後退のリスクの高まりは、2023年夏の利下げが議題になることを意味します。

5月に22年ぶりとなる50bpの利上げを実施したFRBは、その後1994年以来となる75bpの利上げに踏み切り、中央銀行としてより強力にインフレ圧力を抑制する姿勢を強めています。
5月のインフレデータとミシガン大学が発表した長期インフレ期待の急上昇を受けて、市場はこの方向に動き、FRBが前回示した50bpを上回る大幅な政策オプションを検討する可能性があるとの報道で勢いを増していました。
カンザスシティー連銀のジョージ総裁だけが50bpを支持し、FRBの量的引き締め計画は変更されていません。

FRBの新たな予測では、今後数ヶ月間、政策引き締めのペースが激しいままであることを示唆しています。
ドットプロットでは、年末のFF金利は3.4%(3月は1.9%)、2023年は3.8%(同2.8%)、2024年は3.4%(同2.8%)、長期では2.5%(同2.4%)が予測されています。
FOMCの最もタカ派でないメンバーでさえ、今年のFF金利は3%を超えて終了するとしており、この声明文は、インフレ率を目標の2%まで低下させることに「強くコミット」し、インフレリスクに「極めて注意深く」なるとのFRBの見解の変化を強調しています。
これらの利上げは、今後175bpの利上げを意味し、今年後半の4回の会合で50bpを3回、25bpを1回実施することを示唆しています。

FRBは、2022年第4四半期のGDP成長率を前年同期比2.8%から1.7%、2023年第4四半期を同2.2%から1.7%に下方修正し、FRBが重視するインフレ指標であるコアPCEデフレーターは2025年までに2%まで下がらないと予想され、2023年の4Q前年同期比は依然として2.3%と予想されています。

経済見通し(中央値)
GDP
2022年 1.7% (3月2.8% ▲1.1%)
2023年 1.7% (3月2.2% ▲0.5%)
2024年 1.9% (3月2.0% ▲0.1%)
長期  1.8% (3月1.8% ±0.0%)

失業率
2022年 3.7% (3月3.5% +0.2%)
2023年 3.9% (3月3.5% +0.4%)
2024年 4.1% (3月3.6% +0.5%)
長期  2.0% (3月2.0% ±0.0%)

PCE
2022年 5.2% (3月4.3% +0.9%)
2023年 2.6% (3月2.7% ▲0.1%)
2024年 2.2% (3月2.3% ▲0.1%)
長期  2.0% (3月2.0% ±0.0%)

コアPCE
2022年 4.3% (3月4.1% +0.2%)
2023年 2.7% (3月2.6% +0.1%)
2024年 2.3% (3月2.3% ±0.0%)

FFレート
2022年 3.4% (3月1.9% +1.5%)
2023年 3.8% (3月2.8% +1.0%)
2024年 3.4% (3月2.8% +0.6%)
長期  2.5% (3月2.4% +0.1%)

FRBの利上げ予想に対するリスクは上振れしていると考えられます。
インフレ率を早期に低下させるためには、経済の供給サイドの能力と旺盛な需要とのバランスをより良くすることが理想的です。しかし、地政学的な背景、アジアでの新型コロナ抑制策、米国での労働者供給不足などは、供給サイドの改題がすぐには改善しそうもないことが示唆されており、その結果、インフレ率は緩慢かつ粘着的に低下する可能性が高く、FRBは金利上昇を通じて需要を弱める責任が生じることになります。

現在から7月のFOMCまでの間に発表される経済指標は1ラウンドのみであり、雇用統計はかなり良い数字になると想定され(雇用意欲調査は引き続き好調で、求人数は1,140万件)、インフレ率は食品とエネルギー価格を考えると高止まりしている可能性が高くなることから、FRBは今回に続き、7月も75bpの追加利上げを実施する可能性が高くなり、パウエル議長もこの可能性を認めています。

FRBの利上げサイクルにおける累積利上げと引き締めペース

その後、9月と11月に50bpの引き上げ、12月に25bpの引き上げが想定され、これは市場の予想に近く、1988年以来最も積極的なFRBの引き締め策となります。また、FRBの量的引き締め計画はこれらの措置を補完するものとなります。

しかし、より速く、より深く制限的な領域に入ることは、ハードランディングのリスクが高くなることを意味します。国債の利回り曲線が上昇し、住宅ローン金利は今後数週間で急上昇し、一般的な30年物固定金利は世界金融危機以前の水準である6%を試すことが想定されます。

米国30年固定金利住宅ローンの金利平均

同時に、時間当たり所得の伸びが軟化していることがすでに確認されており、株式市場の急落は消費者心理と企業心理に打撃を与え、支出と雇用に打撃を与えており、その結果、内需の見通しはすでに弱くなっており、ドル高が国際競争力を低下させ、企業の収益性を圧迫しています。

景気後退を回避できたとしても、FRBはインフレ率が低下していると確信すれば、政策を反転させ、より中立的な立場へと移行すると予想されます。
2022年に見られた食糧および燃料価格の大幅な上昇が年間比較から脱落するため、インフレ率は2023年第1四半期後半から第2四半期にかけて急速に低下する可能性があると想定されます。

また、需要の減退が利益率の圧縮につながると予想され、住宅市場が予想通り軟化すれば、住宅賃料の緩和を通じて年間インフレ率の押し下げに貢献する可能性があります。

長い間の課題であった、供給サイドの改善に関しては、今後 1 年間にサプライチェーンの緊張が緩和され、エネルギー価格が安定することで、少しは下がると期待されます。
また、株式市場の下落により、一度は引退した労働者が職場に戻ることで、労働力の確保が促進されるかどうかも注視していく必要があります。

もし供給サイドの要因が改善されれば、2023年後半には米国のインフレ率が2.5%を下回る可能性があり、これは利下げの扉を開くことになります。
さらに、過去50年間、利上げサイクルの最後の利上げから最初の利下げまでの平均期間は7ヶ月で、 現在の様に、インフレ率が不安定だった1970-2000年ではわずか3カ月でした。

月曜日の報道で、今回のFOMCでの75bpの利上げの可能性が明らかになり、FRBが75bpの利上げを決定することは十分に織り込み済みでした。
市場にとって新しい情報は、ドットプロットであり、6月の発表では、2022年末のドットプロットの中央値が3.8%となり、本日の会合に向けて織り込まれていた3.65%よりも高くなりました。

この発表で米短期金利とドルは結果的に少し先行していますが、パウエル議長の発言もあり、ボラティリティの高い展開を見せています。
しかし、インフレサイクルの山場を乗り切ろうとするFRBが明確に減速または一時停止すると市場が判断するには時期尚早と思われ、このため、ドルは年初来高値付近での取引が継続することが想定されます。
しかし、FRBのターミナルレートは来年はすでに3.90/4.00%近くに設定されており、このターミナルレートの設定がドル高トレンドの主要な推進力であったため、ドルは必ずしもこの高い水準から積極的に上昇する必要はありません。

しかし、FRBが利上げのペースを上げたことで、他国の中央銀行にとっては課題が増えたことになります。
ECBは、ユーロ圏経済がより高い金利に対応できるかどうかの疑問が生じたため、6月のタカ派記者会見に対するユーロの反応に失望したと思われます。また、今日の欧州天然ガス価格の高騰と4月の貿易赤字が過去最大となったニュースは、ユーロ圏の深刻なスタグフレーションのリスクを彷彿させ、エネルギーショックを背景にユーロの公正価値が低下しているという懸念も生じます。

為替市場で、さらに興味深いのは日銀の金融政策決定会合です。
今回のタカ派的なFRBの決定は、ドル円が135を押して日銀会合に臨む可能性があることを示唆しています。
日銀の金融政策が変わらなければ、135円を突き抜けて無秩序に動き、日銀の為替介入の可能性が想定されます。
1ヶ月のドル円のインプライド・ボラティリティが15%近くあり、さらに高く取引される可能性があるのも不思議ではありません。


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