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コメ作りが忖度文化を生む仕組み:省略版

以前こういう図を描いたことがある。

天の目ten-me+god

↑ 「人権」文化圏と、人権なき集団主義文化圏との違い
↓ (2012年の旧ブログより)

天の目ten-me+jap

スクリーンショット 2021-05-22 13.16.53

なぜこんな違いがあるんだろう。
それに加えてもうひとつ、腑に落ちなくてどうにも気になっていたことがある。

■ 儒教という謎の存在

 ↑これ。

年寄りを敬うとか、年功序列がデフォになってるとかで、
なにかあるたんびに

 儒教がー  儒教の影響でー

で済ませてる場面に出くわす。
そのたびに、毎度気持ち悪かった。
「なにそれ。なんでそこで止まるの。思考の ヤカンヅル かなにかなの」

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※ 本稿は、省略バージョンです。
資料込みで長々しく書いた稿は、
▶ 『コメ作りが忖度文化を生む仕組み:長尺版』
に置いてあります。

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■ ムギとコメ

そんな疑問をタンスの肥やしにしていたところ、ムギとコメの収量の違いが目についた。
 というか、驚いた。
 コメの収量が、ムギなんか目にならないくらいデカイじゃないか。
 すげぇ。

 どんくらいスゲェかというと。
●イネは1粒の種から稲穂が25本ですぜ!
●大昔の農法で、
 1粒のコメは20~30倍にもなったのに
 1粒のコムギからとれる収穫はたったの3~5粒!
  ┗ うわぁそれはツラかろう…!
●今どきのイネなら1粒撒けば700〜1000粒とれる!
 これは驚異的な生産力なんだと!

ムギとは比較にならない文字通り桁違い。
コメは作れば作るほど、打ち出の小槌状態になるスーパー作物だった!
 🌾 🌾 🌾 🌾 🌾 🌾 🌾 🌾 🌾 ❗

するってぇと、どうなるか。
スーパー生産効率が良すぎるコメ作文化圏と、ちょぼちょぼ作物のムギ文化圏。
それぞれの設定でシヴィライゼーションすると、世界はどう違って育ってくるだろうか?

■ ムギ文化圏とコメ文化圏、何が違ってくるのかな

ムギ文化圏は、ちょぼちょぼしか収穫できないため、ムギだけに頼って暮らすなんて夢の夢。
他の作物や、牧畜、狩猟に頼る割合が大きくなる。

対して、米作文化圏では
 コメ作りに参加→
 → どっかーん大きな富💰を仲間で山分け
 → 人手があればあるほど富増加📈
 → 異常な人口爆発コースまっしぐら
 👥 👥 👥 👥 👥 👥 👥 👥 👥 👥 👥 👥

栄養学的にも、コメは神!
どっぷり依存できちゃう性質をいろいろ持ってる。

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※ 本稿は、省略バージョンです。
資料込みで長々しく書いた稿は、
▶ 『コメ作りが忖度文化を生む仕組み:長尺版』
に置いてあります。

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 生産性の良さでタプンタプンに増えまくった人口は、ちょいとでも不作の年がやってくれば一転❗💀餓死まつり💀❗になってしまう。
 ❗飢饉❗が来るたびに、ワケマエを手にできる人数は限られる。命綱の米蔵を支配する権力者(既得権益)の気分一つで生殺与奪されることになる。

コメづくり文化圏の民にとって、「豊かさ」とはなにか。
豊 | 漢字一字 | 漢字ペディア
 ┗ 豊作、ゆたかの意を表す漢字。実った穀物の穂を高杯(たかつき)の上に盛った形。

コメづくり文化圏の民にとって、「富」とはなにか。
漢字の起源と成り立ち 「甲骨文字の秘密」
 ┗ 家(保存場所)に(コメで作った)酒があるさまを表した漢字が「富」

 さらには、コメ=富=酒への依存は、米作文化圏の人民の遺伝子まで淘汰しちゃって、アジア一帯で「下戸の進化」が観測されるほどにまでなってる。

 体質に影響するほどの依存度であれば、いわんや文化規範や思考様式に刻印がないはずはナイナイナイ。

 集団で富を作り、集団で富を蓄える。
 富の在り処は、集団。💰💰💰
 個人ではない。
 富を貯蔵する米蔵を支配する長老層の元、民はコメ作りにせいを出し、神聖な米酒を湛えて豊作を祈る。
 飢饉が来れば、誰が蔵のコメで食いつなげるかが支配者層(権力者)の一存で決められる。
 使えない民は「無駄飯食い」として切り捨ての対象になり、間引かれることによって集団が守られる。
 人減らし、姥捨、間引き… 😱

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■ ムギ文化圏とコメ文化圏、違ってくるのは富のありかのイメージ

 コメ文化圏では、コメの収穫と蓄えの観念が、何にも増して大きく肥大する。
 そのため、「どこに富があるのか」の社会的イメージが、ムギ文化圏とはだいぶ違ってくることになる。

富の濃集図

 コメでは「ヒト集団の中心」が「富のありか=豊かさの中心」として観念される。
▶ 村長(農作作業や蓄財管理の決定権者)が君臨し、
▶ 経験の蓄積が物を言うので、偉さの根拠が年功序列に収斂しがち
▶ 民は収穫集団の中に居られる資格(分け前を得られる立場)の剥奪を恐れることになる

命令(力)と富が「偉い身分」に濃集していて、人々はそこからオコボレをいただく立場。

  🌾  🌾  🌾  🌾  🌾

対して、コムギ文化圏では「富のありか」はどう観念されるか。

富の遍在図

 各種貯蔵食料の中でコムギ類が占める割合はあまり致命的なものではないので、ムギ類がコメみたいな超絶卓抜神格的なアイテムの位置におさまることはない。
 収穫集団への依存度は命に関わるほどではなくすむので、富のありかは、集団の中心ではなく、地に散財していて「自力」で活用するさまとして観念されるようになる。

コメ文化圏では
▶ 収穫集団がガメるものが、富。
かたや、ムギ文化圏では
▶ 個人の可能性を切り拓く際に自由活用できるアイテムとしてこの世に配されているものが、富。

異世界慣れしてるなら、魔王様になってコメとムギでどんな違いが出るか具体的に異世界シミュレーションしてみるといいかもしれない。

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■ コメ文化圏では「人権」概念が生まれない

 そこから一気に「人権」の話に飛んでみよう。
「人権」とは何か。
「個人には国家から与えられたのではない、およそ人として生得する権利がある」と観念するものであるらしい。
 この「人権」観は、米作のような強烈な集団依存がなかった文化圏だから成り立ったんじゃないか。

※ 本稿は、省略バージョンです。
資料込みで長々しく書いた稿は、
▶ 『コメ作りが忖度文化を生む仕組み:長尺版』
に置いてあります。

 コメづくり文化圏では、「個人の可能性を重んじる」ような「人権」の概念が成り立ちづらい。
 集団生産と集団蓄財への依存度が強く、人口がすぐ膨れ上がるため、飢饉のたびに意図的な人減らしをやらかすことになる。
 蓄財集団の中央を「正しい」と思わない者には、その集団内で生きる権利は与えられない
 そんな過酷な条件の中では、自己実現の権利など生まれようがない。
 そんな過酷なシガラミの中で観念される「権利」は、超越神と人の間で生まれるような無条件な権利「人権」ではなく、人と人の間で観念される
「分け前を得る権利」
くらいでしかない。

 実際、日本の民には「人権」が何を指すのかを理解できてない人が多くて、人権の話なのに「ちゃんとしてないやつには権利などない」と言い放ってしまうほどの錯誤が蔓延してる。

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■ 転属転勤が横行する日本

 超越神ではなく、蔵を支配するおえらいさんが君臨し、「偉さ」に根拠がなくてもエライ位置にいる人の「忖度(ご機嫌取り)」をする。さもないと、「分け前集団」からハブられる。
 そんなしんどい集団を維持しながらサバイバルしてきた日本の民は、現代の収穫集団である「会社」のことまでも、ついつい同じ目線で見てしまっている。
 就職が、「自分が獲得した技能を発揮する場をゲット」ではなく、「富の蓄積集団に参加させてもらう(ワケマエを得る)」みたいなことになっちゃってる。入社式や就職が、会社という収穫集団の一員になることとして観念されちゃってるんだ。

 収穫のワケマエをいただく身になるからには、好き嫌いなど言ってはいられない。
 畝作りから耕起、種まき、草とり、配水、鳥追い、収穫、備蓄と、どんな作業でも文句言わずにやらなきゃいけないのが農作業。
 会社という収穫集団の中でも同様な作法が発揮されてしまってて、社員があっちの部署こっちの支店と会社の都合で振り回されることは常態化してるし、収穫集団に入っていることこそが命綱と観念されるから、名刺には技能名ではなく社名が記されることになる。

 生産集団の中のどの役割でも、文句言わずに引き受ける。
 すなわち、マルチタスク化。
 この作法は、日本で技能集団(労働者の権利を守る組合)が発達しない一因にもなってて、うん、賃金上がんないよねっ。

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■ スパイト行動が蔓延する日本

 本稿は「コメ文化圏」の話だったよね。
 もちろん、コメ文化圏は日本だけのことじゃない。
 韓国や中国でも、それぞれお国柄はあれ、同じようなコメ文化圏的な文化作法の染み付きが見られる。なにせ、アジア一帯に下戸人間を大量進化させちゃうほど、広く長くヒトと共進化してきてた米作なんだもんね。

 で、コメ文化圏の国々で共通するように見える(西洋とは違ってそうに見える)作法が、なんや知らん鼻についたときに、ひっくるめて
「儒教がー」「東洋はー」
みたいなヤカンヅルワードで済ませると便利だったのかな。

 さて、中国の場合は、城塞都市文化と(米酒から「富」の漢字を生むほどの)米作文化、そして支配者の一貫性が乏しかった歴史的経緯と、西欧法の受容が日本を経由したためうまく行かなかったなどがあって、血縁第一である人権なき中央集権社会になってる。
→ 『中国は人権を日本に学んでしまった、資料置き場』

 対して、島国日本では(そんな狭い島でもないと思うんだけど、山間部が多いとかの地形影響もあるのかな)、米作文化が島嶼化した状態というか、
「資源量には限り(定員)がある」
「幸福量は無限じゃない」
「良いことがあればそのぶん必ず悪いことがある」

のような、萎縮方向の見做しが文化のはしばしに強く染み付いている。
→ 『文化進化(収斂)系の知見、資料メモ置き場』
→ 『日本民の作法、資料置き場』

 いきおい、「蔵の富が限られてる」「限られた富に選ばれないとヤバい」「選ばれたやつはズルい(俺の取り分が減る、みんなの取り分をくすねてる)」が嵩じて、他の人間の没落を画策したり喜んだりする作法まで生まれてきてしまう。
 妬み(ねたみ)がらみの意地悪行動の中で、自分が損をしてでも妬んだ相手を引きずり降ろそうとする呪怨な仕草のことを、研究者さんたちは
「スパイト行動」
って呼んでる。

自分が損をしてでも、だれかを貶めようとまでしてしまう。
「自分が損をしてでも」?
研究者さんでも、なんでそこまで突き進む呪わしい行動が生まれてきてるのか、あまり見当がついてないらしい。

「自分が損をしてでも」
 ふーむ。
 つまり、「富は限られてる」「富を得るには権利が必要」と観念される場合、とにかく自分以上に誰かが階層を多く落ちれば、自分は少々落ちても「落とされる」心配がなくなる、と見えるようになるのかもしれない。
 そうだな。
 自分が「ワケマエ集団から完全に排除される」心配がないなら、自分は少々下がっても誰かをすごく落とす(もしくはワケマエ集団から放逐する)ほうが、結果的に自分のワケマエが増えるだろうからトクだと観念されるのか。

 島嶼的日本民が見せる集団主義っぽい作法は、集団を守るためでも集団の和を尊んでのことでもない。
 尊い富を集めて支配する権力者に率いられる「おこぼれをもらえる集団」からハブられたくないから、集団の空気を重んじてるだけじゃないか。

富の濃集図

 そうやって見てくると、日本の悪しき風習「働きすぎ」「サービス残業」も、古来から培われてきた「ハブられたくない/スキあらばハブいてやる」という緊張感が原因で駆動されてるように見えてくる。

■ 年功序列が横行する日本

 ぶっちゃけ、富の源であるおコメづくりは、難しい。
 ぽっと出の若造が、なにもわからずにタネまいただけで富になるものじゃない。
 イモやソバ、クリなどの他の食料と比べると、コメの収量は、「経験と知識」の有無によって桁違いに左右されてしまう。
 米作の経験者の知恵があれば、高率で、大量の富が得られる。

そう、「年の功」と「豊作」が直結しちゃうんだ。😨

 年寄りが年寄りであることだけで敬われるという年功序列は、「蓄積された知恵」が、集団を維持する資源の保持にべらぼうに重要な場合に限って、成り立つもの。
 「年の功」と「豊作」が直結せず、この世に富は遍在する、と観念されるなら、年功序列なんてそもそも成り立つわけがない。

富の遍在図

 対して、日本の社会では、権力と、富と、お偉い高齢者が、ダンゴのように串刺しになってトップに君臨する。

富の濃集図

 利益集団にしがみつくために、忖度も不正もいとわない人も出てくるわけだけど、現代の、今の日本の、お偉い高齢者は、偉さに見合った「知恵の蓄積」を持ってる人々じゃあなくね? なくなってね? なっちゃってなくね?
▶すでに上にいるものが、偉い
▶能力がなくても、「偉い場所」を占めた者が偉い
▶蹴落とされたくなければ従順にしがみつけ
▶蹴落とされたら富との縁が切れてしまう

日本の困った人界によく重なってくる

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■ だから儒教って年功序列でしょ

 とりあえず、最初に立てた疑問の「なんですぐ 儒教がー で済ませたがるの?」の正体は、コメづくりの亡霊(レガシー)であるらしいと思いましたまる。
 んなもん、とうに誰かが気がついてて、指摘してるんかもしれないけど、自分には新鮮な展開だった。

 付随する疑問のこっち、
▶ なんだかんだ、年功序列だからーとか、「儒教の影響だからー」とかで乙にされちゃってて、「あなたの儒教はどこから」にまで考察が深まらずに停止して見えてるのはなんでなんだろうな。
のほうはまだよくわからないけど。

ちゃんとした検証は、文化心理学や文化進化研究の本職さんでないとダメなんだろうけど、日本には文化心理学を研究する人も比較文化心理学の知見を紹介する人もほとんどいなくなってるので、ずっと、こう雑文が蟠るばかりだった。
読みづらいものになってて申し訳ないです。

 ということで、ここでは「文化進化学」みたいな話として、
「日本が、年功序列忖度三昧の弱者切り捨て上等社会になってるのは「儒教の影響」じゃなくて、コメ文化圏と島嶼化のせいなのかな」
という見做しの提示でいったん幕を閉じます。
 文化進化ってのは、比較文化心理学の集団版みたいな感じなのかな。

-=-=-=-=-=-=-=-= 資料リンク
▶  『コメ作りが忖度文化を生む仕組み:長尺版』
▶ 『中国は人権を日本に学んでしまった、資料置き場』
▶ 『日本民の作法、資料置き場』
▶ 『人権と権利、資料メモ置き場』
▶ 『文化進化(収斂)系の知見、資料メモ置き場』

▶ 『ミニ特集:文化心理学の本』
▶ 『ミニ特集:文化依存症候群を考える本 その1』
▶ 『ミニ特集:文化依存症候群を考える本 その2』
-=-=-=-=-=-=-=-=

次回は 「文化心理学」みたいな話で
【■ 高齢政治家の痛さの原因と、三つ子の夢は百まで効果】
を書くか、その前に
【■若年層の投票率が上がると自民党が勝つ?】
を作るか、はたまた
【文化心理学研究者が日本からいなくなった理由はこれですか 😨 】
とかにするかもしれません。

▶その後、書きました
【文化心理学研究者が日本からいなくなった理由はこれですか 😨 】

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※ 本稿は、省略バージョンです。
資料込みで長々しく書いた稿は、
▶ 『コメ作りが忖度文化を生む仕組み:長尺版』
に置いてあります。
省略版でこんだけ長いんだから、長尺版がどんななってるかは推して知るべし。😅

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