K-
悲しくて、悲しくて。
どうしようもなく悲しくて、わたしはその悲しさを抱いたまま、
白く冷たいモノが辺りを覆いつくす中、ゆっくりと歩を進めて、
ひとつの場所を目指している。
【ザクザク】【ザクザク】ひとつ、また一つと。
歩を進める度にそんな音が身体に響いてくる。
ああ、悲しい。
ああ、悲しい。
眼の前が何故だか歪んで、
辺りの白さと同じように白くなっていく気がした。
悲しい――。
――はずなのに。
眼から唇、顎。
悲しさを染めるように熱が流れている。
熱が流れた後に残るのは、不自然な程の悲しさなのに。
なんで身体の奥の熱は褪めないのかな。
鼻がピリリとしみて、何かにつられて前を向いた。
辺り一面が真っ白だったはずなのに。
今、眼の前には透き通った湖がみえている。
ああ。
やっと着いたんだ。
目指していた場所に。
わたしはねきっと、あなたにしみていた。
あいしていたんだと思うの。
身体を伝うこの涙が、
熱くて、まぶしくて、
眼の前に広がる湖といっしょに、
とけてしまいたくなるくらいに。
「すきなの――だからおいていかないで…… 」
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