大戦終結-あの日を境に。
緑がとても美しかった広大な丘と花々の風景は、
誰かが手に取った剣から、段々と赤く染まっていった。
「むざむざとやられてたまるか」と、
悪意と憎悪、守りたい善意と命が交差して。
悪も善もなにもかも全然と、まったくと言っていい程、
歯止めが効くほどのゆるみはなかった。
「火薬などとうにない。
ならば自分の錆びれた剣で命を潰せ。」
それから30年、
緑の色があったことを誰もが忘れてしまったように、
赤黒く、青々とした香りが一切とない世界となってしまっていた。
誰もがため息を吐いて、
誰もが血と涙を流して。
ただひたすらに目の前の敵の命を、
刈り取る。
突き刺す。
捩じり抉る。
そうして、
疲弊した心はどちらの正義にも、
ある一つの結論を突きつける。
「もうそろそろ、終わってもいいんじゃないかと。」
「そうだな、たくさん死んだんだから。」
「最後はどう、ケジメをつける。」
「わからないが、もう互いに三人ずつしか残っていない。」
【サルス……】
【セッカク……】
【テチチ……】
長かったな。
ああ、長かった。
【イムザ……】
【カラスダ……】
【ミアキス……】
この戦い意味あったのだろうか。
イムザはサルスにクロガネの剣を向けて笑う。
「まさか、人と植物が意志疎通を行ない、最期まで残るとは。」
乾いた笑いは地に吸われ、
「植物が人化するなど、ワタシで最後にしてほしいですね」
サルスは顔を苦く歪めて言う。
カラスダは大きな黒い炭のような翼をひろげて、
セッカクは柔らかな雪の様な翼を広げて、
お互いにくちばしを尖らせて、駆け抜ける。
鳥から人の姿へ、鳥から悪魔の姿へ。
「さようなら、全てを飲み込む黒い者。」
「また後で、全てを包む雪の人」
「もう、みんなは腹決めてるんだなあ。」
「そうだなあ……でも痛いの怖いなあ。」
でも。
どれもこれも必要な事だもんね。
互いの手は互いの頭をゆったりと撫でた後、
首元に顔をすりつけ、笑った。
パシャリと。
水音が響いた。
六人の血が静かに荒野に散った後、
黒雲はゆっくりと晴れて、
世界に久々のひかりが満ちた。
太陽のひかりに反射して、
透明なようで宝石のような、
キラキラとした雨が降り始める。
浸透し、抱擁し、
そして世界は塗り替えられる。
これを後の世界では――To_RAIN【トゥーレイン】
歴史を塗り替えた雨と言う。
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