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遺伝子の旅

「地球上には 数千万種類もの生きものが存在していて非常に多様だけれども、すべてにひとつの共通性がある。それは、必ず『DNA』があるということ。」

これは以前、Zen2.0の講演で、生命誌研究の中村桂子さんがいわれていた興味深い言葉です。

そして、多様な生命が多様に進化をしてきた大きな拠り所であるDNA自体は、世代は変わっても変わらずに続いていく。パソコンやスマートフォンなどは、新モデルが出るたびにOS(オペレーションシステム)を変えていく。そして旧OSは滅んでいく宿命にある。

でも生命は、ひとつのOSであるDNAを共有し続けることで、ここまで生き延びてきた。OSが変わらないことが、あらゆる変化にも対応できる鍵になる。

新しいSNSが出て来るたびに理解できず、何だか気が重くなってしまう自分にとっては、それはまるで光明のようなことに思えました。

新しいものは確かに魅力的だけれど、それによって大きな分断、亀裂のようなものが発生する。そこで拠り所になってくるものは、絶えず変わらない「共通のもの」。多様性が叫ばれる現代社会。その中で本当に必要なものは、そんな「共通のもの」を探していくことなのかもしれないと感じました。違いではなく、逆説的に。

私たち人間は、「DNAが存在していくための乗り物に過ぎない」という考え方もありますが、本当はDNAこそが、人間やあらゆる生命を生かしてく
れている乗り物なのではないのか。それはまるで、全ての人々が救われるまで一緒に乗っていく、大乗仏教の大きな船のように。

おんなじDNAという乗り物を持つ、わが家の小さなメダカを見ながら、そんな思いがふつふつと湧いてくる春です。


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