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開運橋をわたって帰京するときは景色が違って見える【岩手県教委の離任】

この度、岩手県教育委員会を離任し、文部科学省に戻ることになりました
2年間という短い間でしたが、お世話になったすべての方々にこの場をお借りして心からお礼を申し上げます。

今から2年前に文部科学省から岩手県教委への出向が決まったとき、かつて岩手県に出向したことのある先輩から話を聞く機会がありました。
その先輩からは「着任のとき、盛岡駅から県庁までの間にある開運橋という橋をわたるのだけれど、行きは雄大な自然と見知らぬ景色に圧倒される。そして、2年が経過し開運橋をわたって帰京するときは景色が違って見える。橋から望む景色が愛おしく、離れがたく感じる。」と背中を押されてきました。

昨日、岩手県教育委員会での最終勤務を終えて、開運橋を通りながら東京に出立したのですが、2年前の言葉のとおり、様々な想いが込み上げてきました。
出向前は岩手県に公私ともに訪れたことがなく、正直なところあまり意識したことさえありませんでしたが、仕事だけでなくプライベートでも岩手県内33市町村を訪問し、四季折々に姿を変える自然豊かな風景や地産地消の山海の美味しい食べ物に触れる中で、岩手県のことが大好きになりました

仕事では、県教委の立場から、主に学校におけるICTの活用(教育のDX)や地域との共創(教育の魅力化)に取り組んできました。
どこまでお役に立てたのかは分かりませんが、多くの人の助けを借りながら、微力なりにも全力で駆け抜けることができたと思っています。

また、出向者として「よそ者」の視点から岩手県の教育の魅力(可能性)を探す2年間でもありました。

岩手県は半世紀も前から「教育振興運動」の名の下に、学校だけでなく地域も子どもの教育について責任を持ち、学校と地域が連携・協働して学力向上や生活習慣の改善に取り組んでいます。33市町村をまわって感じたのは、それが今も子ども達の教育を支える土壌になっているということです。
これは、今日の学校運営協議会(コミュニティ・スクール)にも通じる考え方です。

もう一つ、岩手県の教育の魅力を挙げるとすれば、東日本大震災後に新しい時代の復興の担い手を育成する目的で始まった「復興教育」です。
復興教育では「いきる、かかわる、そなえる」をキーワードとして、生徒が地域で様々な活動を行っています。
復興教育では、想定外の災害にも対応できるようになるという防災の観点に加えて、変化の激しい先の見通せない時代を生き抜く観点から、生徒が自ら考えて行動できるようになるため、生徒の主体性を尊重しながら探究的に学ぶ機会を大切にしています。
これも、来年度から高校で実施される新学習指導要領に通じる考え方です。

来年度から全県立高校でスタートする「いわて高校魅力化」は、岩手県が教育振興運動で培ってきた「学校と地域との共創」の土壌の上に復興教育で取り組んでいる生徒の主体性を尊重した「探究的な学び」の種を植えたものであり、どんな素敵な花が咲くのかをこれからも注目していきたいです。

また、来年度から岩手県教育委員会に新設される「いわて幼児教育センター」にも注目しています。県教育委員会の従来の所掌(仕事の範囲)である公立幼稚園だけでなく、知事部局とも連携しながら私立幼稚園や保育園等も対象に、就学前教育の質の向上に取り組んでいくことになります。
この2年間、「子どものため」を合言葉に縦割り行政の壁を超えて取り組む担当者の姿勢には、大いに学ばさせてもらいました

この他にもたくさん書きたいことがありますが、東京に戻ってからも岩手県教育委員会での2年間を振り返り、得られた学び(出会った言葉)を投稿していきたいと思います

改めて、岡山、島根(海士町)、岩手と旅をし、その度に素敵な人達との出会いに支えられてここまでくることができたと感謝しかありません
同時に、毎回訪れる別れに切なくなりますが、掛けてもらった言葉は残り続けますし、遠く離れてもご縁は繋がり続けると確信しています。
この経験を活かし、文部科学省の立場から少しでも恩返しができるように、これからも一歩一歩前に進んでいこうと思います。

そんなことを想いながら、盛岡の開運橋をわたって帰京の途につきました。
(白河の関を越えて、東京までの道のりの途中で執筆)


タイトルの写真は「©岩手県観光協会」です。

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