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自ら学ぶ「動機づけ」の真実~自己決定理論②内発的に近づけるには?

「動機づけ」連載の続きです。
前回、動機づけは「外発的」と「内発的」の二項対立ではなくて、グラデーションでつながっているんだという話や、
最初は外発的でもだんだん内発的になっていくこともあるんだという話をいたしました。

今回はその「だんだん内発的になっていく」ためにはどうすればよいのかという研究をご紹介します。


キーワードは「自律性支援」

最初は外からの強制力でやっていたことについて、その必要性や価値に気づき、納得するようになって完全に自分のものになっていく。

その変化を促していくことを「自律性支援」といいます。

ちなみに「自律性」がある状態とは、
①自分の中に価値観(規準)がしっかりあって
②それに従って自分で行動を選択できる
状態です。
それはまさに「主体的」と言ってよい状態ではないかと思います。

「価値観」と書きましたが、子供たちの中にもすでにその子なりの価値観があるわけで、
教師が指示したこととその価値観とうまく折り合いがつかないと、「いやいや感」「やらされ感」が高まるわけなんですね。

だからその子が持っている価値観をアップデートしたり、合致する形で提供したりすることが「自律性支援」になるというわけです。

早稲田大学の河村茂雄先生は自律性支援の目安として
①まず「同一化的」を目指そう
②①がうまく乗ってきたら、だんだん支援の手を緩めて子供に任せていこう
ということを提唱されています(河村,2019)。

さてさて、この自己決定理論では、自律性を高めていくためには、「3つの欲求を満たす」必要があるとされています。

これを1つずつ解説していきますね~。

1.有能さへの欲求

有能さへの欲求と言うのは、「理解したい」「できるようになりたい」「うまくやりたい」といった能力への欲求ですね。

テストでいい点を取りたい、志望校に合格したいというのもここに入りますし、逆上がりができるようになりたい、授業についていけるようになりたい、なんかもここに入ります。

有能さへの欲求を満たすには、以下の方法があるとされています。

・どうすればできるようになるかを明確に具体的に伝える

・こうやっていればこれくらいできるようになる、という見通しを持たせる

・その子に合った挑戦レベルを提供する

・分かりやすく、スキルを高めるような指導をする

・その場で教師が明確にフィードバックする

最初はとにかく言われてやっていたんだけれども、
「先生とやってるうちにわかった」「できるようになった」という成功体験を味わうことで「おもしろい!」「もっとやりたい!」と内発的な動機づけに近づいていくというイメージですね。

2.自律性への欲求

これはまさに今回のテーマど真ん中で、
人は「自分で選びたい、自分で決めたい、自分でやりたい」という欲求をもっているということであります。

この「自律性への欲求」を満たすような働きかけのことを指して「自律性支援」と呼ぶこともあります。(せまい意味での「自律性支援」とご理解ください。)

この欲求を満たす方法としては、

・その子の言い分、その子がやりたいこと、やりたかったことに耳を傾ける

・その子が自分自身のやり方でふるまうことを許容する

・自分で選んだこと、決めたことは素晴らしいことだと価値づける

・時には「うまくいかない」「もういやだ」などのネガティブな感情を受け止めてあげる

などがあります。

3.関係性への欲求

こちらは「自分の関わる人達とより深く関わりたい」「人の役に立ちたい」という欲求です。
ここに学級集団で学ぶ意味があるのかもしれません。
学習指導であっても、友達とどう関わりながら学んでいくのかをうまくサポートするという意味では、授業と学級経営はやはり一体のものでしょう。

こちらを満たすためには、

・友達が興味を持っていることに自分も関わってみる

・友達を思いやって行動し、感謝される

・友達のことをよく知っていて、日ごろから様子を観察している

・一緒にいることが楽しいと思える経験をする

といったことが挙げられています。

グループ学習などをどう充実させていくかがカギですね。。

参考文献


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